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第7話 入港

「お帰りなさい、レオルド」




「ただいま、お母様」




 ハーンブルク領最大の港『テラトスタ』上陸した俺を、お母様が真っ先に抱きしめた。少し照れ臭いが、とても心地良かった。




『春雨』に搭載されている無線通信機を使って、現在の位置情報を定期的に連絡していたので、もしかしたらとは思ったが、やっぱりお母様は出迎えてくれた。


 もちろんお母様だけでは無い。お母様の護衛や使用人、帰還の噂を聞きつけた今回の遠征に参加した兵士の家族なんかが揃っていた。


 俺たちの姿を見て、歓声が上がっている。運悪く駐留組になってしまった者たちは残念ながら帰宅できていないが、今回の作戦における死者数は0なので全員が家族と再会できるはずだ。


 まぁ家族がいれば、だが・・・・・・





 しばらくすると、俺を抱きしめたまま、ある事に気がついたお母様はそのまま変な事を言った。




「ふふふ、そんなところで羨ましそうにしているぐらいだったら、あなた達も混ざっていいですよ。」




 お母様とくっついていたので、一体誰に向けて言っているのかすぐにはわからなかったが、声を聞いたらすぐにわかった。




「わ、私は別に・・・・・・」


「わ、私も必要ないわ。」




 ユリアとイレーナは、すぐにお母様の提案を遠慮した。そしてもちろん、この場にいるのがこの2人だけという事は無い。


 少し遅れて、ヘレナの声も聞こえた。




「では私は、レオルド様を独り占めしますね。」




「えっ!」


「ちょ、ヘレナっ!」




「ふふふ、2人とも譲っていただきありがとうございます。」




「あ、ちょっとっ!ヘレナっ!」


「ヘレナさん・・・・・・」




 ユリアとイレーナの言葉をスルーして、ヘレナは後ろから抱きついてきた。


 一瞬、お母様とくっつきたかったのかな〜と思ったが、全然そんな事なかった。




「こうしてレオルド様の体温を感じていると、心が落ち着きますね。」




「ふふふ、私もそう思います。」




 何か、締め付けが強くなった気がする。


 俺は、前後からお母様の素晴らしいモノと、ヘレナの美しいモノに挟まれる形となる。


 ・・・・・・悪くないな。




「ちょ、ちょっとっ!離れなさいよレオルドっ!」




 声だけでわかる、イレーナは少しお怒りのようだ。だが、何で怒られているか全然わからないので、スルーする事にした。




「ふふふ、イレーナさん、強がっていないでこちらに来てもいいんですよ。」




「うっ・・・・・・し、仕方ないわね。」




「ユリアさんも早くっ。」




「は、はいっ!」




 口では嫌そうな事を言いながら、全然そんな事無い事が顔に出ているイレーナが俺の右側、少し遠慮しながらも、チャンスはしっかりと掴むタイプのユリアが左側から抱きついた。




 う〜む四方八方が塞がれた。


 もちろん動けない。


 ちなみに、先程から船から荷物を下ろす作業をしている軍人達の視線が痛いが、気にしない事にした。俺の正面、つまりお母様の後ろにはお母様の護衛やSHSメンバー、それとお父様もいる。


 俺は見なかった事にして目を瞑った。


 こういうのは考えたら負けだ。





 結局、5分ぐらいその場で留まる事になり、お母様以外の全員が何か少し気まずい雰囲気になりながらシュヴェリーンへハーンブルク鉄道を使って帰る事になった。





 ✳︎





「どうしてこうなった・・・・・・」




 心を無にして、全力で心地よさを味わおうと頑張っているが、俺の作った防御壁は簡単に突破されつつあった。


 というか、突破されていた。


 以前作ったシャワーの出る音が止まると、先程までそこで身体を洗っていた人物がこちらに向かってくる音が聞こえた。




「入りますね、レオルド」




「は、はい!」




「ふふふ、どうしたんですか?緊張しているんですか?」




「は、はい・・・・・・」




 お母様の突然の思いつきによって、久しぶりの我が家であるバビロン宮殿にある巨大な風呂にお母様と一緒に入る事になってしまった。


 先に身体を洗い終わり、さっさと湯船に浸かったところで、お母様が入って来た。


 一応見ないように、反対側を向いていたが、先に洗い終わったお母様は、俺のすぐ隣に座った。




「色々とご苦労様です、レオルド。今日は旅の疲れをしっかりと癒やしてください。」




「は、はいっ。」




 うん、平静を装うとしたけど無理でした。


 すると、俺が緊張している事に気がついたのか、お母様が俺との距離をさらに縮めてきた。




「肩に力が入ってますよ、レオルド。お風呂では肩の力を抜いてリラックスするのが良いと、言っていたのに、自分ができていないですよ。」




「久しぶりのお母様とのお風呂で少し緊張してしまって・・・・・・」




「ふふふ、レオルドは何歳になっても可愛いままですね。」




 どうしてこーなったーっ!!!




【マスターが家族の、特にお母様の頼みを断れない事が原因では?】




 うっ・・・・・・




【どうしてマスターは、ただ単に血が繋がっているというだけの関係である家族を、これほどまでに大切にするのですか?】




 何でだろうな・・・・・・


 何というか、大切にしなきゃいけない気がするんだよな・・・・・・


 前世がどうだったかは覚えていないが、そんな気がする。




【・・・・・・そうですか。】




 何というか、お母様と一緒にいるのも安心するが、アイと風呂の中で会話をするのも安心する。昔は、よく風呂の中で作戦会議をしていたからだ。


 よし、アイと話していれば、この状況を突破できると確信したとき、無駄に強化された俺の耳は、更なる厄災の到来を告げる音をキャッチした。




「入るわよ、レオルド。それと、こっちみたら殺す。」


「は、入りますね、レオルド様。」


「うぅ〜お、お邪魔します。」


「失礼します。」




 後ろを振り返らなくても、俺は誰が来たのかわかってしまった。

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