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第3話 平和

 帰る気満々だった俺は、自分で調印式を1ヶ月後と設定した事を完全に忘れていた。


 計算してみると、今日からちょうど1週間後の話だったので、俺が帰る用の『秋雨』と『時雨』を残して、出港の準備を終えていたハーンブルク海軍の軍艦や輸送船を全てテラトスタに向けて出港させた。


 先に帰る組の事は、アコール艦長に全て任せてあるので、おそらく大丈夫だろう。




 ちなみに、俺の嫁さん達は全員残る方を選択し、SHSメンバーも俺の護衛として『トモタカ』に留まる事となった。




 まあ仕方ない、久しぶりにお嫁さんたちとゆっくりとした時間を過ごそうかなと思ったのだが・・・・・・


 こうなった。




「あ〜多い、多すぎる。リヒトさん、本当にこれ全部やるの?」




 俺は、目の前に積まれた、山のような書類の束を見て思わず呟いた。




「申し訳ございません、レオルド様。奥様から、これでもだいぶ少なくした方だと伺っております。」




 ギャルドラン王国が滅亡すると予想したお母様は、ありがたい事に俺用の書類を大量にデュークス島に運んでいた。


 そして、俺が『春雨』の無線通信を使ってお母様に電報送る際、無線通信限界の関係からデュークス島を経由したのだが、その時に俺が『トモタカ』に行く事を聞いたリヒトさんは、俺用の書類とともに『トモタカ』へ向かったそうだ。


 ありがたい事は確かだが・・・・・・




【流石、マスターのお母様ですね。行動が、的確かつ迅速です。】




「俺の休暇はどこにいった・・・・・・」




「はぁ〜手伝ってあげるからさっさと片付けましょ。ユリア、あなたもこのバカを手伝って。」


「は、はいっ!私も力になりますっ!レオルド様っ!」




「おぉ、助かる、ありがとう。」




 どうやら、彼女たちが俺の手伝いをしてくれるそうだ。




「ふ、ふんっ!感謝する事ね。」


「レオルド様の助けになれて嬉しいです。」




 政務をしっかりとこなせるイレーナとユリアは、書類の束から一部を取りながら俺の隣に座った。どうやら彼女らも、政務をさっさと終わらせて、俺と遊びたいそうだ。正直かなり助かる。




「というか君たちいつの間に仲良くなったの?」




 ユリアとイレーナが初めて会ったのは、マルカトでの攻防戦が終わった後のはずだ。まだ数週間しか経っていない。




「イレーナさんには、良くしてもらっているので・・・・・・」


「レオルドが好きになった子に、悪い子はいないわ。それとユリア、私にさん付けはいらないわ。」




「は、はいっ!わかりました、イレーナ」




 ユリアは、少し戸惑いながらも、可愛らしい声でイレーナの名前を呼んだ。




「ふふふ、一緒にこの頼りないバカを支えてあげましょ。」




「はいっ!」




 何かめっちゃ暴言が聞こえるが、おそらく気のせいだろう。彼女たちは、まるで姉妹のように仲が良くなっていた。


 そして、ヘレナはというと・・・・・・




「私ではお力になれないかもしれませんので、全力でレオルド様を癒しますね。」




 俺が、集中しながらペンを走らせていると、急に背後に人の気配を感じた。


 振り向こうと思ったら、その前に身動きが取れなくなった。




「どうですか?レオルド様。気持ちいいですか?」




 後ろから抱きしめられると、耳元でヘレナ様が呟いた。普段よりも少し色っぽい声で・・・・・・


 一体どこで覚えたのだろうか。




「あ、ちょっとヘレナっ!それずるいわよっ!」


「私もっ!」




 するとすぐに、左右に座った少女たちもくっついて来た。


 イレーナはよく嫉妬しているが、まさかユリアが嫉妬するとは思わなかった。彼女とは、リトア王国での暗殺未遂事件で初めて会ったが、かなり仲良くなったと思う。


 お嫁さん同士、仲良くして欲しいと思いつつ、不覚にも嫉妬する姿も可愛いと思ってしまった。




 だけど・・・・・・




「おいっ!それだと仕事が終わらないぞっ!」




 時と場所を考えてほしいと思った。





 ✳︎





 山のように溜まった書類を片付け、お嫁さんたちとイチャイチャしながら『トモタカ』の都市開発をしていると、すぐに1週間が経過した。


 調印式の予定日の2日前には、両国の代表が『トモタカ』に到着し、それぞれと最終確認を行った。




 すでに、ハーンブルク家の案はできていたので、それを両国の代表に提出し、それぞれの要望や質問等の受け答えをした。そしてその内容を踏まえた上で、俺は1人で折衷案を作り、調印式当日に、両国に対して同時に開示した。




 その中にはもちろん、俺が目指していた『統一軍』についても触れてある。他にも、捕虜や賠償金、領土の変更についても俺が決めさせてもらった。


 サーマルディア王国代表のギュスターさんとギャルドラン共和国代表のダンタリオ侯爵は、揃って俺の渡した紙を眺めた。




「我が国としては、この内容で問題ありません。」


「ギャルドラン共和国としても、問題ありません。むしろ、ありがたいぐらいです。」




「わかりました、ではお二方はここにサインをお願いします。」




 元々サーマルディア王国だった土地とアルバス河の分流よりも北側をサーマルディア王国が、『ユトラ半島』と『トモタカ』をハーンブルク家が統治する事で合意。


 代わりに、賠償金は無しで、捕虜は全員無償交換、ギャルドラン王国側の戦争に参加した貴族についてはほとんどが取り潰しとなった。




 そして、統一軍の設立が決定した。


 今のところは、ハーンブルク家、ジア連邦共和国、リトア王国、サーマルディア王国、ギャルドラン共和国、エラリア王国、ポラド共和国、エルフ共和国の8つの国と地域が参加した。


 ハーンブルク家以外の国々は、敵国を攻めるための軍隊の所有が禁じられ、戦力に応じて、兵士を派遣する事で合意した。


 統一軍の本部は、ハーンブルク領サックナ軍港がある所の反対側に置かれる事で合意した。ここは、アルバス河を使って、容易に物資を輸送する事が可能な他、大陸西側の中心に位置しており、全体をカバーする上で最も重要な拠点だからだ。


 ちなみに所在地的には、サーマルディア王国の領土となっている。これは、ハーンブルク家がサーマルディア王国の一部である事を踏まえた結果だ。




 そしてこれは、『トモタカ平和条約』と名付けられた。






 さて、今度こそ、用事は全て片付いた。




 さぁ、懐かしの我が家に帰ろうか。

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