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第2話 家臣

「ここ『トモタカ』を、我々ハーンブルク家が統治する事になった事は既に知っていると思いますが、今回は前領主であったあなたの今後について伝えようと思い、ここを訪れました。」




 俺は、一才包み隠さずに真実を告げた。湾岸都市『トモタカ』は、文字通りアルバス河の玄関口であり、軍事的にも経済的にも重要な場所であった。


 そのため、俺が真っ先に要求した場所がここだった。


 それともう一つ、『トモタカ』の重要性を理解しているかどうかは怪しいが、能力がある人物がここを統治していると聞いて、是非とも会ってみたいと思ったのだった。




 それが、今俺の目の前に座る人物、デリマシア伯爵だ。彼は、ぱっと見は40代か50代のただおじいさんだが、領民からの評判が良く、昔からギャルドラン王国に仕える立場でありながら、今回の戦争に反対した人物だった。


 後から聞いた話ではあるが、彼は早い段階からギャルドラン王国の敗北を予想し、出来るだけ戦争を避けるように動いたが、ギャルドラン王国上層部は考えを変えず、戦争が勃発したそうだ。




「我々が、どうしてここの割譲を要求したかわかりますか?」




「い、いえ・・・・・・」




「あなたがいたからです。あなたならば、この都市をギャルドラン共和国の中心へと発展させられると考えたからです。」




「そのような事が・・・・・・」




「ハーンブルク家は、ギャルドラン王国に対して3つの要求を行いました。1つ目は、『ユトラ半島』と『トモタカ』の割譲、2つ目は政治顧問としてハーンブルク家の人間を派遣する事、そして最後の1つというのがあなたの引き抜きです。」




 前半の2つは、ギャルドラン共和国が2度とハーンブルク家に反抗できなくするための手段で、最後の1つは『トモタカ』を統治する人が欲しかったからだ。


 領民からの評判が良いので、おそらく文句はできないだろう。




 デリマシア伯爵、いや元伯爵は、俺を見定めるように覗き込んできた。


 さて、こんないきなりの事であったが、彼は俺のことを認めてくれるか・・・・・・




「わかりました、このデリマシア、レオルド様に忠誠を誓います。」




「え?」




 あまりにも早い決断に、俺は思わず驚いてしまった。




「ははは、意外でしたか?」




「あぁ・・・・・・」




「私もレオルド様の素晴らしいお噂は何度も聞いております。そして、私はそれらの噂が真実であると判断しました。あなた様は、仕えるならばこれ以上にないお方です。是非、この私を家臣団の一員にお加え下さい。」




「あぁ・・・・・・よろしく頼む。」




 いったいどのような噂が流れているのか気になったが、今はそんな事を聞いている場合じゃない。




 いや、ちょっと待って、やっぱり気になる。




【マスター・・・・・・】




 いや、ほらアレだよ。人間って他人からの評価をよく気にするじゃん?ほら、エゴサとか。


 俺も人間の1人として・・・・・・




【マスターは人間を卒業しているので、それには当てはまりません。】




 おいおい・・・・・・


 気を取り直した俺は、アイとの会話を辞め、再びデリマシアさんの方を向いた。




「ありがとうございます。」




「それじゃあ改めて、今後の事について話し合おうか。」





 俺とデリマシアさんとユリアの3人は、今後に起きるであろう大規模な発展を考えながら、都市開発について話し合った。


 元領主であるデリマシアさんの意見もさることながら、2つの国を立て直した経験を持つユリアの意見も素晴らしかった。


 途中、アイも唸るような提案をするほど、ユリアは素晴らしい意見を出していた、と思われる。


 何で断言できないかって?


 いやだってほら、俺政治なんて全然わからないし。というか、途中何て言っているかわかんなかったし・・・・・・


 科学の知識なら結構あるんだけど、細かな政治の話となると俺は置いてきぼりになる。


 過去の歴史から、大まかな事は活用できるかもしれないが、細部は彼と彼女らに任せた方が早い。




 そしてとりあえず、『トモタカ』における新たな法律や都市計画についてがほとんど決まった。


 さて、俺はもうここに用はないので、さっさと家に帰る事にした。ちなみに、デリマシアさんは今日からしばらく大忙しとなる。理由はもちろん、仕事が山積みだからだ。町の整備も必要だが、港の整備や警備体制の構築など、やらなきゃいけない事が多すぎる。


 幸い、ここは戦場になっていないが、戦争から帰ってきた兵士達の対処もしなければならない。




「じゃあとりあえず俺は帰るよ。」




「わかりました、留守はお任せ下さいませ。」




 デリマシアさんには悪いが、俺は今、早く帰りたくてしょうがない。シュヴェリーンには、ご飯が、風呂が、サッカーが俺を待っている。


 後で、ハーンブルク家から文官や技術者を送るつもりだ。





 これで、やっと家に帰れる。






 そう思っていたのだが・・・・・・





【マスター、調印式があるので、マスターだけはまだ帰れませんよ。】




 あっ!

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