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第15話 王家

「はい、お初にお目にかかります。ダンタリオ侯爵家当主のジャスタルと申します。」




 ギャルドラン王国の代表を名語る男は、そのように名乗った。一応爵位的にはハーンブルク家は伯爵家なので、向こうの方が上だったりする。


 しかし、現在の立場は、圧倒的に俺の方が上であった。とりあえず俺も、自分の名前を告げる。




「どうも、ハーンブルク家総大将のレオルド・フォン・ハーンブルクです。」


「イレーナ・フォン・ハーンブルクです。」


「妻のヘレナです。」




 何か1人、ここに居ないはずの人が混じっていたような・・・・・・


 俺とイレーナは声があった方へ顔を横に向けた。




「え?ヘレナいつの間に?」


「何でここにいるのよ、ヘレナ」




「ふふふ、船の上での生活が暇でしたので来てしまいました。」




「「・・・・・・」」




 オッドアイの少女は、愉快そうに微笑んだ。俺とイレーナは、言葉を失う。




 そうだった・・・・・・


 ヘレナはこういう人間だった・・・・・・




 思い出すのは、ヘレナが急にリバスタに来る事になった時の事。


 挨拶に来たのかな〜って思っていたら、まさかのハーンブルク領に来る事になり、そのまま一緒に暮らす事になった。


 城内でパーティーが行われた時でさえ部屋に引き篭もっていたほどの引きこもり少女だったのに、いつの間にか何処かの誰かによって好奇心旺盛、行動力高め美少女になってしまっていた。




 今ヘレナを責めても仕方がない。とりあえずヘレナの件は保留にする事に決めた俺は、再び正面に視線を戻す。




「それで?今日は講和会議をするという事でよろしいですか?」




「はい、そうです。我々ギャルドラン王国は、自国の軍隊が王都に到着するまでマルカト城を防衛するのは不可能だと判断し、条件次第では降伏しようと思い、参上しました。」




「なるほど、それで?その条件といのは?」




 無条件降伏になると思っていたが、何と条件があるらしい。


 正直、ここで条件を主張したところで、もう詰みなんだからどうしようもない気がするが、一応聞いてあげる事にする。




「はい、それは王家の助命、サーマルディア王国軍を含む全ての戦闘行為の即時停止、国民の安全確保の3つです。」




 話を聞いた瞬間、俺は嫌な予感がした。王家の助命はまだわからなくはない。


 おそらくだが、降伏するのに反対な国王を説得するために、王家の助命という飴を与えたのだろう。


 だか、後ろの2つに関しては話が変わってくる。




「その、国民の安全確保というのは具体的にどのような意味なんですか?」




「それは、武力攻撃を行わない事と、拷問や奴隷化、強姦、不当な捕縛などを行わない事です。今回の戦争に参加した者に関しては、ハーンブルク家に捕縛権がありますが、それ以外の無関係な一般市民に被害を出さないでしてほしい、というわけです。」




「では、街の修復や食料の供給などはしなくても良いという事だな。」




「はい、この戦争、どこからどう見てもこちら側の敗北です。ハーンブルク家側の責任は、いっさいありません。」




 交渉に来たダンタリオ侯爵が話のわかる人間で良かった。脳みそサルラックレベルだったらどうしようかと、身構えていたが、割と話の通じる奴なのかもしれない。




【まだ20代なのにも関わらず、ギャルドラン王国内でも相当な地位であろう侯爵家の当主なだけはありますね。】




 全く同感だ。こうしてまともな交渉ができる事がどれだけ素晴らしいか・・・・・・


 あんまり語りたくはないが、まだヘレナとの結婚が決まる前にやってきたサーマルディア王国に属する侯爵や公爵の態度は、とんでもなく酷かった。


 何かしらのいちゃもんをつけ、論破されれば、すぐに喚く。


 面倒ったらありゃしない。


 あ〜思い出しただけでイライラする。




【ですが、だとしたら1つ疑問が残ります。3つ目の条件、これはどういう扱いになるのでしょうか。】




 あ、確かにな・・・・・・




 ハーンブルク領は、一応サーマルディア王国の一部という事になっている。最近では、兵役も納税もしていないが、一応所属はしている。そしてもちろん、ハーンブルク家の当主であるお母様にも、サーマルディア王国軍への命令権なんて無い。


 この場にサーマルディア王国の代表が居たら話は違うかもしれないが・・・・・・


 ん?


 待てよ・・・・・・




「いたぁぁー!!!」




「え?え?いきなりどうしたんですか?レオルド様」




「そうだよっ!そういえばヘレナには特別に、王族としてサーマルディア王国軍に命令できる権利が残っているんだったっ!」




「はい、それ以外にも、他国との交渉権や反逆者への捕縛権なんかも持ってますけど・・・・・・」




「流石ヘレナ、大好き、愛してる。」




「なんだかよくわかりませんが、ありがとうございます。」




 そういえば俺の嫁は元王族で、ハーンブルク軍に嫁いでくる時に特別措置として王族としての権限を一部持ったまま嫁いで来たんだった。確か、色々と条件があった気がするが、停戦命令はヘレナの名前を使って行う事ができたはずだ。




【はい、期限のある条約のみですが、ヘレナ様がサーマルディア王国にとって有益と判断されれば可能です。】




 つまり、この場にはハーンブルク軍、ジア連邦共和国軍、サーマルディア王国軍の3つの軍への命令権を持つものが揃っている事になる。


 これなら・・・・・・




「わかった、ではその3つの条件を飲む代わりに、ギャルドラン王国には戦闘行為の即時停止と軍部の解体を命じる。それと、1ヶ月後に講和会議の調印式を開くので、それに国王同伴させた上で出席してもらおう。場所は、ギャルドラン王国領の湾岸都市『トモタカ』だ。では、具体的な講和内容について話し合おうか。」





 そして、俺たちとダンタリオ侯爵は、交渉を始めた。


 両国間の、平和を願って。

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