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第9話 業火

「おい、実際のところどうなっているか知ってるか?」




「いいや、お偉いさん達はマルカトから出たら危険だ〜としか言わないから実際分からん。」




「だが実際、敵にここを包囲されているって話じゃねーか。大丈夫なのか?」




 ハーンブルク家によるギャルドラン王国首都マルカト包囲の翌日、マルカト内にある2つの指示が発表された。




 それは、マルカトから出てはいけないという命令と、民兵を募集するというものだ。


 何故マルカトから出てはいけないのかは発表されなかったが、どうやら敵に包囲されたらしいという噂はすぐに広まった。


 そして、その相手がハーンブルク軍である事もすぐに広まった。




「あの独特の軍服はおそらくハーンブルク軍だろうな。」




「あぁ、俺も噂に聞いた事がある。確か、誰一人として鎧を着ていないそうだな。」




 ハーンブルク軍の軍服が特殊な事は、大きな都市に住んでいる者ならば誰でも知っている有名な事だ。


 先ほど、降伏勧告を行ったハーンブルク軍一行を、マルカトに住む国民達は目撃していた。


 そしてもちろん、ハーンブルク軍の強さも・・・・・・




「それで本当に強いのか?」




「あぁ、なんでも、8倍の兵力を持つ敵を圧倒したそうだ。」




「じゃあここもやばいんじゃないのか?」




「かもな。だが例え敵があのハーンブルク軍でも、ここマルカトの防御を突破するのは難しいだろうな。」




 王都マルカトは、南側には海があり、北側には城下町が広がっているため、その堅さには自信があった。


 しかし、海があるはずの北側に、ハーンブルク軍が構えているという事は城に住む者達ならともかく、城下町に住む人々には知られていなかった。




「つまりここは安全って事か?」




「いや、安全かどうかはわからないが、マルカトが落ちる事は無いだろうな・・・・・・」




 男がそう呟いた直後、今まで誰も見た事がない謎の現象が突然起きた。




 ドォゴオオオオン!!!




「え?」


「な、なんだ?」


「うワァァァ!!」


「教会が・・・・・・」


「嘘だろ?」




 大きな音がした方を見ると、城下町のシンボルにもなっている立派な教会が、倒壊していた。同時に、凄まじい衝撃波が辺りを襲う。


 誰も、何が起きたのかすら理解できていなかった。遠くでその様子を見ていた人々は、何が起こったのかそれぞれ話し合う。




「敵襲か?」


「いや、そんなはずはない。敵の仕業だとしたらどこかに敵の姿があるはずだ。」


「雷か?」


「いや、だとしたら空が曇っているはずだ・・・・・・」




 一人の若者が、教会があった場所を眺める。そこだけ、何故かぽっかりと穴が空いており、その中心には小さめの岩のようなものが見えた。


 その謎の物体が目に入った男が叫ぶ。




「な、なんだアレは・・・・・・」




 男の声を聞いて、何が起こったのか興味を持った人々が、その場所にわらわらと集まり始めた。


 そして、全員がその場で顔を見合わせる。一体これは何なのだろうか。


 神聖なはずの教会で、一体何が起きたのだろうか。


 次の瞬間、重なるようにして、さらに不思議な事が起きた。再び、同じような爆音が鳴り響いた。


 同時に、何かが崩れ落ちるかのような音が聞こえた。


 一斉に、全員が音が鳴った方向を向いた。




「お、おいっ!アレを見ろっ!」


「え?」


「城が・・・・・・」




 高くに聳え立つマルカトの中心、マルカト城の一角が、崩れ落ちていた。


 そしてさらに、崩れ落ちた屋根が弾け飛び、二次災害を引き起こす。


 城下町までは飛んで来ないものの、城のすぐ側にある貴族街に城の破片が飛び散った。




「ど、どうなっているんだ・・・・・・」


「神の祟りか?」


「な、なんなんだアレは・・・・・・」




 それは、人々に恐怖と絶望を与える事故だった。いや、正確には事故なのかすらわからない。


 とにかく、誰も何が起きたのかすらわからなかった。


 そして、悪夢は続く。




「お、おいっ!今度は向こう側から謎の爆発音が聞こえたぞっ!」


「今度はこっちだっ!」


「何なんだよおいっ!」




 およそ10秒に1回、マルカト内の様々な所から爆発音が聞こえた。


 そして、爆音は日が沈むまで続いた。





 ✳︎





「アコール艦長、予定通り砲撃を開始しました。また、2発目がマルカト城を直撃したと、先程レオルド様のいるハーンブルク軍参謀本部から通信が届きました。」




「わかった、予定に変更はない。」




 最新型の装備が優先的に装備される事になっている、ハーンブルク海軍の最初の軍艦『春雨』には、最新型の最長15km先を砲撃できる砲門が搭載されている。




 先ほど、わざと岸と反対方向である南側に舵を切った『春雨』の目的は、領域外からの直接攻撃だった。


 何処から攻撃されているのかすら特定できない恐怖を、ギャルドラン王国に


 植え付ける。




 10秒に1発、波によって艦が僅かに揺れるので、ずっと敵の城を狙い続ける事は難しいが、無差別にマルカトに穴を空けていく。




「観測員から通達、第14発目も敵の城に直撃したとの事です。」




「ほぉ、思ったより当たるな。これはひょっとすると、敵の交渉役が居なくなってしまうかもな。」




 ちょうどその時、アコールは僅かに見えるマルカト城のてっぺんが、崩れるのが見えた。




「・・・・・・さて、我々はレオルド様の命令通り、日没まで続けるぞ。」




「「「了解っ!」」」

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