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第17話 sideイレーナ5

 ある日の朝




「ん・・・・・・もう朝?」




 眩しい朝日に照らされて、私は目が覚めた。


 レオルドの統一計画を聞いたお父様は、レオルドの考えに賛同した上で、王宮を説得すると言い残して王都サーマルへと戻っていった。


 久しぶりに、お父様とお茶を楽しみたかったが、残念ながらそのような時間は無く、話がまとまるとすぐに出港していった。




 その日のうちに、レオルドはレオルドのお母様、エリナ様への説明文を作成して、送っていた。


 レオルドの話では、エリナ様からの返事が来るまで出撃はできないので、要請を出しておいた第二艦隊の到着を待ちつつ、平凡な日々を過ごしていた。


 昨日は私、レオルド、ヘレナ、クレアの4人で狩りを行い、まあまあ楽しんだのち、とった獲物をみんなで食べた。


 夜もみんなで一緒に寝たはずだったんだけど・・・・・・




「あれ?どこ行っちゃったんだろう。」




 隣で寝ていたはずのヘレナとクレア、隣のベッドで寝ていたはずのレオルドの姿が見えない。


 とりあえず私は、メイドさんか執事さんを呼ぶために、ベルを鳴らした。普段なら、誰かしらがやって来てくれるのだけど・・・・・・




「あれ?反応が無いわね。何かあったのかしら・・・・・・まぁいいわ。」




 着替えぐらいなら1人でもできるので、私はパジャマから私用の軍服に着替え始めた。念のため、部屋の鍵をかけておこうか迷ったが、面倒なので後回しにしておいた。




 無事、着替えを終えた私は、洗顔をしつつ食堂へと向かった。水道は無いが、井戸ならある。




 その時、妙な違和感があった気がしたが、何か分からずそのまま冷たい廊下を歩いた。




「あれ?ここにもいない。」




 てっきりみんなで朝食を食べているのかと思った私は、どこに行ったのだろうと、さらに頭を悩ませた。


 それどころか・・・・・・




「ご飯が、無い?」




 ハーンブルク海軍では、誰かが何かを食べたくなったとしてもすぐに対応できるように、食堂に行けば何人かの料理人が常に待機しており、いつでもご飯が提供される事になっている。


 その時私は、朝からずっと感じていた違和感の正体に気づいた。




「嘘、誰もいない?」




 そういえばそうなのだ。私は今日、朝起きてから今まで、誰一人として人間に会っていない。


 レオルドやヘレナはもちろんのこと、執事やメイド、軍人にすら会っていない。見ると、皿はおろか調理器具すら出ていない。まるで、ここには最初から誰も居なかったかのように。


 流石におかしいと思った私は、食堂を飛び出した。




 先日ほぼ完成した、ここサキナ基地内を走り回ったが、誰一人として姿が見えない。


 そんなはずはないと思いながら、私は誰もいない展望台へ登り、恐る恐る祈るような気持ちで海を眺めた。


 そこに、いつもの軍艦達がいると信じて・・・・・・




「嘘っ!昨日までは確かにあそこに・・・・・・」




 戦艦である『レインシリーズ』ならわかるが、輸送艦である『マウントシリーズ』がいないのは流石におかしい。


 まだ近くにいる事を期待して、通信室へと走った。




「嫌よ嫌よ嫌よ、嫌よっ!」




 普段なら厳重な警備が行われているはずの通信室には、誰も警備していなかった。そのまま通信機の前に座る。


 使い方はうろ覚えだが、私は無我夢中でダイヤルを回した。


 もちろん反応は無い。




「ダメか・・・・・・」




 その時、背後に人の影がある事に気がついた。


 反射的に振り返った私の瞳には、確かに人影が写った。急いで立ち上がると、その人影を追いかける。


 きっと、レオルドのいたずらに違いない、そう思っていたのに・・・・・・




「あれ、いない・・・・・・」




 確かに通信室の外にいたはずであったのに、気配すら感じない。


 誰もいない廊下であたりを見回していると、視界の隅にまた先程と同じ人影がいた。


 私は少し怖くなって、無言で追いかける。




「え?行き止まり?でも確かにあの人は・・・・・・」




 曲がり角を曲がった先は、何もない壁であった。窓があればそこから逃げたのだと言い訳ができたが、本当に何もない。




 えっ?


 えっ?


 えっ?




 私は少し怖くなって辺りを見回した。もちろん誰もいない。




 そんな時、私は昔誰かから聴いた童話を思い出した。




 1年に1度、この世界と神様を祭るための世界が繋がり、稀に人の子供がそこに紛れ込むらしい。




 詳しくは覚えていないが、主人公はそこで1年間働かせてもらい、何とか現実世界に戻って来れたらしい。




 では私もこの物語の主人公と同じように神の世界に来てしまったのだろうか。




 その場に座り込んだ私の目から、自然と涙が溢れてきた。




 このまま、この世界で私はたった1人で生きて行くのだろうか・・・・・・




 いいや、嫌だ。




 何とかしてこの世界から脱出してやるっ!

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