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第13話 会議

「ふふふ、それぐらいでいいですよ、レオルド。」




「お母様・・・・・・」




 残念、どうやら俺の出番はここまでのようだ。まぁ俺の中での結果は上々、この話の流れであればどちらの方向にも進める。




「宰相様、あなたが必要以上に鉄の武器が欲しいのは十分わかります。近々トリアス教国と戦争になるのでは、という噂ですからね。ですが、一番困る事は我々の製鉄技術が他国に渡ってしまう事です。これが渡ってしまえば、大打撃を受ける事になります。」




「つまり利益が欲しいというわけですか。」




 技術に対して利益を得るというのは当然の事である。そして、製鉄技術というのは一種の技術革命のような物だ。




「利益も欲しいですが、それ以上に技術を盗まれないための対策をちゃんとしていただきたいのです。」




「警備に関しては心配いりません。むしろ利益の方が気になります。率直にお聞きしますが、具体的には何が欲しいのですか?」




「鉱山資源と港です。」




 この条件は、俺とアイが考えたものだ。最初から、ハーンブルク家の方針としては技術を少し譲る変わりに利権を得ようというスタンスであった。


 鉄鉱石を輸入して鉄の剣を輸出してお金を稼ぐというやり方では、近いうちに限界が来る。


 そこで、糸をメインの輸出品にする事にした。蒸気機関に関しては、ハーンブルク領の中で一番厳重な警備がされており、その存在を知っている人間は俺を含めて10人ほどしかいない。また、作る事ができるのは俺だけだ。


 蒸気機関の技術を盗み取られる可能性はほぼゼロに等しいだろう。




 そして、貿易を行う上で一番大切なのはやっぱり港である。輸出する時に、港があるかないかでは、大きく違うのだ。


 早速、サーマルディア王国で一番大きな港を要求する。




「なるほど・・・・・・いいでしょう。南にある軍港を渡すわけにはいかないので、西にある港とその周辺を無償で譲渡します。」




 よし!この宰相、港の重要性に気づいていない。


 と、心の中でガッツポーズをする。


 そもそも王国には、3つしか港がないのだ。その内の2つをものにしたと言う事になる。後は、船を大量に使ってバンバン輸出すれば・・・・・・ぼろ儲けだ。




【後は商人をどうするかですね。エリナ様に自由に使えて信用のできる商人を探してもらいましょう。】




 商人の1人や2人ぐらいその辺に転がっているだろ。まぁ最悪無くても何とかなる。




「わかりました、ではお教えしましょう。鉄は、鉄鉱石と木炭を混ぜて同時に熱する事で、出来ます。」




「木炭ですか?」




「はい、まずは製鉄所を作っていただき、そこに木炭と鉄鉱石を同時にいれて高温で熱するのです。」




「そんな方法で・・・・・・」




 俺は、お母様に変わって嘘の製鉄の方法を考えた。製鉄技術が流出した時の対策も考えてあった。本来なら石炭から作る事ができるコークスを木炭からと偽り、コークスを特別な処置を施した木炭、と説明した。


 これで、ハーンブルク領にあるコークスを作るための工場の利益も上がる。




「ですがこの木炭は非常に精密なもので、普通の木炭でも鉄を作る事は可能ですが、純度が落ちてしまいます。ハーンブルク領にいる腕のいい職人が作った木炭の方がいい物ができます。私はよくわからないのですが、良い木炭を作るにはコツがいるらしいので、当分の間は我が領地で作った木炭を輸出させて頂きます。」




「なるほど、そのための港だったんですね。わかりました、その方向で行きましょう。よろしくお願いします。」




「はい、今後とも良い関係を築いていきましょう。」




 お母様は、笑みを浮かべながら差し出された右手を握り返す。




「・・・・・・エリナ殿、この件とは別に一つ提案があるのですが、よろしいでしょうか。」




 無事に交渉がまとまり、ホッと一息入れようとすると、何かを決心した宰相さんがお母様に話しかけた。




「なんでしょうか。」




「私の娘をハーンブルク領で預かっていただけませんか?」


「お父様っ!」




 宰相さんの提案に、俺たちよりも先に、今まで黙っていた娘の方が驚く。どうやら知らなかったようだ。


 今気づいたけど、この子結構可愛いな。




【そんなに呑気にしていていいのですか?おそらく求婚だと思いますよ?】




 あ、まじ?そーゆー事なの?


 いや、それは・・・・・・


 嫁はじっくりと選びたいというか・・・・・・いやダメじゃないんだよ、でもいきなり過ぎない?




「それは、レオルドと婚約したいという事ですか?」




「婚約して頂けるならそれでも構いませんが、この子にはもっと色々な世界を知ってほしいと考えています。そこで、レオルド君の側にいる事がこの子の成長にも繋がると判断したのです。」




「そういう事ですか・・・・・・まぁいいでしょう、婚約はひとまず置いといて、預かる事については了承します。」




 おいーお母様ー!何勝手に了承してんの!


 蒸気機関の存在がバレたらどうするんだよー




【よかったですね、マスター。2人目の戦闘メイド?獲得です。】




 そっち?


 見た感じ戦闘とかは出来ないんじゃね?




【魔力を保有している事を確認したので、最低限戦えると推測します。】




 なるほど・・・・・・


 たしかに2人目の戦闘メイド、ありかもしれないな。





「お父様・・・」




 っと娘さんは、不安な眼差しで宰相さんを見つめる。


 無理もないだろう、7歳の女の子がいきなり親元を離れて留学して来いと言われたようなものだ。俺だったら無理だろう。




「今のお前に足りない事は、彼なら持っているはずだ、存分に学んでくるがいい。」




「っ!わかり・・・ました。」




 断れっと、念じたが意味を成さず、少女は頷いた。


 そして、こちらの方を振り向く。




「イレーナ=イルフェルンと申します、どうぞよろしくお願いします、エリナ様、レオルド様。」




 とその少女、イレーナは丁寧に挨拶をした。




「では、パーティー会場へ戻りましょうか、もうすぐ陛下がご到着なされます。」




「わかりました、戻りましょう。」




「はい。」




 そして俺たち4人は、何事も無かったかのようにパーティー会場へと戻るのであった。




 この宰相強引にすぎるだろ、っと俺は静かに思うのであった。

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