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第11話 誘導

「あの旗は・・・・・・間違いないっ!ギャルドラン王国軍だっ!今すぐレオルド様に報告しろっ!」




「了解。」




 向こう側は知らないが、敵の船は既にこちら側の射程圏内に入っており、油断は一切できない状態であった。


 艦内には、『第一種戦闘配備』が発令され、緊張が高まっていた。


 就任から3年近く経過しているこの艦は、このままいけばこれが2回目の海戦となる。




「艦種特定っ!形状から、報告にあったギャルドラン王国の大型船だと推測されます。数は20ですっ!」




「奴ら、保有する全兵力をぶつけて来たか。」




『春雨』のリーダーであるアコール艦長は、部下からの報告をそのように判断した。


 既に、SHSによる調査で、敵の主力艦の情報は得ている。また、海軍の一定以上の階級の者はもちろん頭に叩き込んである。


 そして、彼の記憶ではギャルドラン王国が所有する大型船は全部で20隻、つまり所有する全てを投入して来たという事だ。同時に、敵の船速もある程度特定できる。




「報告によれば、敵の最大船速は時速10kmだそうだ。それと帆船だから、風と同じ方向にしか進めない。この意味を考えながら動け。」




「「「了解。」」」




 アコール艦長は、すぐさま情報を艦橋内で共有する。もちろん、確認も含めてだ。




「レオルド様から返信が来ました!」




「読み上げろっ!」




「"『秋雨』を全力で向かわせた、合流後全力で敵船団を攻撃し、これを殲滅せよ。全艦撃沈が望ましいが、『春雨』と『秋雨』を失う事は絶対に避けよ。"との事ですっ!」




「了解した。では諸君、反転の後、微速前進だっ!敵に軍艦ではなく商船と思わせて、誘い出すぞっ!」




 レオルドからの命令を受け取ると、はっきりとした声で全体に命令した。




「急速旋回っ!」




「「「了解っ!!!」」」




 アコール艦長の指示で、『春雨』は急速旋回を始める。おそらく肉眼では、こちら側の船の速度などは測れないだろう。船体を傾け、一気に反転を行った。


 そして・・・・・・




「付近を警戒しつつ、微速前進っ!」




「「「了解っ!」」」




 アコール艦長は、計画通りに艦をゆっくりと進めた。





 ✳︎





「国籍不明船を正面に発見しましたっ!」




「そんな馬鹿なっ!いったいどこの船だ。」




「わかりませんが、船速から考えるとサーマルディア王国の商船のようです。この船から逃げるように西へ向かっております。」




 部下の1人が、今回の遠征部隊のリーダーを任された男に告げた。


 ここまで航海は順調、多少のトラブルはあったものの嵐に見舞われる事なく一隻とも欠ける事なく目的地へと向かっていた。




 計算では、後1日〜2日後にデュークス島に到着するということで、最後の踏ん張りを行っていた。


 20隻のギャルドラン王国海軍は、互いに距離を開けて付近を警戒しつつ、味方隻同士の衝突を避けながら進んでいた。




 そんな中、部下の1人が所属不明な船を見つける。こんなところにギャルドラン王国の船がいるはずがないので、おそらく外国の船だ。


 ここで1つ、問題があった。




「船種の特定を急げっ!ガラシオル帝国の船だったとしたら報復を受けるぞっ!」




「「「了解っ!」」」




 それは、目の前の船がいったいどこの船なのかわからなかったからだ。自国やサーマルディア王国の船であればまだ良い。


 だが、ガラシオル帝国の船だったとしたら最悪だ。既にサーマルディア王国という大国と戦争をしているのに、ガラシオル帝国とも戦争する事になれば、ギャルドラン王国の滅亡は免れないからだ。




 出港の際も、色々な方向から警告された。


 ガラシオル帝国とは特別仲が良いわけではないが、一応友好国ではある。また、国力や戦力、特に陸軍に大きな差があり、絶対に相手にしたくない国の1つであった。




「とりあえず、進路そのままっ!船速から商船と見なされる事からおそらく大砲は積んでないだろう、敵に接近するぞ!」




「「「了解っ!」」」




 旗信号を用いて20隻全てに方針を伝えると、了解の返答が返って来たため、そのまま作戦を続行した。





 ✳︎





 追いかけっこを始めてから1時間後、ついに逆走する『春雨』の前に一隻の艦影が現れた。


 もちろん、すぐに艦種を特定できた。




 そして、『秋雨』でももちろん『春雨』を発見していた。




「クレア艦長、春雨を視認しましたっ!西に向けて微速前進を行なっていますっ!」




「おそらく敵を引きつけて、挟撃する作戦でしょう。こちらものります、左舷に30度回頭っ!」




「了解っ!左舷、30度回頭っ!」




「「「了解っ!」」」




 行きは、揚陸演習の指揮のために『春雨』に乗っていたクレアだったが、自分自身が艦長を任された『秋雨』に移動し、今回の海戦に参加した。


 ちなみに、クレアはハーンブルク海軍の『レインシリーズ』の艦長の中で、唯一実戦を経験している。


 また、シェリングの本職はSHSのリーダーなので、臨時で艦長を任される事はあっても、現在は努めていない。




 クレアは、次なる指示を飛ばす。




「『春雨』の向こう側に、敵船団が見えると思われます。『第一種戦闘配備』を発令して下さい。」




「了解っ!『第一種戦闘配備』発令、観測員は付近の警戒レベルを最大限に引き上げ、砲手は所定の位置について下さい。」




「「「了解っ!」」」




 直後、クレアの思惑を受け取ったアコール艦長は、『春雨』をまたもや急速旋回する。


『春雨』と『秋雨』で挟撃を行うために、2隻は互いに見える距離で、別々の方に進み始めた。




 そして・・・・・・





「敵船団、射程圏に入りましたっ!」




「砲撃開始っ!」




「うち〜かた〜始めっ!」

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