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第9話 抜穴

「なるほど、デュークス島の防衛ですか・・・・・・」




「現状、デュークス男爵家には常備軍は無く、数名の護衛と家臣が持つ私兵によってデュークス島の治安維持を行っています、しかし、昨今の情勢から考えると我々も何かしらの常備軍を持っておくべきだと判断しました。そこで、ハーンブルク家には軍艦を売って欲しいと考えております。」




 常備軍と警備兵の明確な違いは、攻撃能力があるかどうかだと思う。武器を使って敵と戦う点は同じだが、常備軍があれば敵地を攻撃できる。


 その分、領の財政が圧迫されるが、戦力を持てばその分外交なので有利に交渉を進められる。


 この話題があがる事は、ある程度予想していた。ギャルドラン王国の脅威が迫っている今、このような提案があってもおかしくないと思った。




 だが、この展開はまったくの予想外であった。




「さらに言えば、私はこの島の重要性に気付いております。もちろん、レオルド殿含め、ハーンブルク家がこの島に興味を抱いている理由も・・・・・・」




「・・・・・・」




 才能がある者は、どこにでもいるという事か・・・・・・




【この閉じた時代で、周りに目を向ける事ができる人物がいたとは驚きですね。開けた時代でも内側にしか目が向けられない人が多くいるというのに・・・・・・】




 どうする?プラン変更か?




【いえ、そのままいきましょう。】




 おっけー




「わかりました、ではまず陸軍について、トリアス教国戦の際にハーンブルク家がサーマルディア王国への軍事支援として売ったものを販売させていただきます。価格は安くしておきますが、軍事物資は単価が高いので、よく考えてから判断して下さい。」




 俺の言葉を、デュークス家の代表であるアルビーナは真剣に聞いていた。


 ハーンブルク家と同盟を結んだとしても、ハーンブルク家から軍隊を送るのに数週間はかかる。つまり、それまでの間自力でこの地を守る必要があるのだ。


 俺が今回、ユリウスに艦隊を持たせた理由もこれだ。最低限の防衛力を持たせ、救援が有ればハーンブルク軍本隊が駆け付けるという寸法をとった。




 しかし、後者に関してはできない相談であった。




「それと残念ですが、軍艦の販売は行なっておりません。ハーンブルク領の経済発展にも関わる事なので、他国や他領への提供は行なっていません。」




「例外は無いのですか?」




「ありません。ハーンブルク家の定めた法律で、ハーンブルク家の人間以外は軍艦以上の戦力を所持できないという定めになっています。」




「そうですか・・・・・・」




 ハーンブルク家の正式な軍艦である『レインシリーズ』と『マウントシリーズ』には、ハーンブルク家が誇るあらゆる分野の最先端技術が詰まっている。


 全てでは無いが、他国や他領が喉から手が出るほど欲しい物が詰まっており、簡単に手放せる物ではない。


 そのため、ハーンブルク家の軍艦には自壊用の緊急破壊装置が付いている。




 また、政治面の対策として機密保護法というのを数年前に制定したほどだ。




「また、武器についても制限を設けさせていただきます。ハーンブルク家の機密情報を他国や他領に漏洩させるわけにはいきませんから。」




 嘘や誤魔化しをやめて、俺は真実だけを淡々と述べた。


 俺の言葉を聞いて、アルビーナの顔が僅かに曇ったのがわかった。


 もちろん、デュークス領にはまともな産業はなく、ハーンブルク家レベルの軍艦が造れるわけがない。




「そうですか・・・・・・」




「だけど・・・・・・」




 俺は、いつもの口調に戻して言った。




「抜け道が無い事はない。」




「え?」




 だけど、抜け道は確かに存在する。


 そう、それは・・・・・・





「ハーンブルク家から嫁を貰えば、例え個人でも軍艦級の戦力を持つ事ができます。」




 イレーナが軍艦を持つ事は許されたように、その逆も可能なのだ。


 つまり・・・・・・





「まさかっ!ハーンブルク家が当家の嫡男との婚約を勧めていた理由はこれですかっ!」




「さらに言えば、俺の姉であるファリアがそちらの嫡男と友好を深めた理由もこれです。もっとも、途中からは私が指示しなくても自分から彼との関係を深めたそうですが・・・・・・」




「そんなに前から・・・・・・」




 布石は、ずっと前から予め打っておいたのだ。


 俺とアイは、常に未来を考えて行動していた。




「ご存じの通り、ハーンブルク家としてはここデュークス島に新たな軍事拠点を作りたいと考えていました。しかし、機密保持の関係で、それはできない。そんな時発見したのがこの抜け道です。」




 まぁ自分で作った法律の抜け道を探すってのも変な話だがな。




【私は以前から想定できていましたよ。】




 ・・・・・・流石だな。




「というわけで、私の姉であるファリアとデュークス家の御嫡男との婚約を改めて提案いたします。そして、了承していただいたあかつきには、ハーンブルク家がデュークス家を全力でサポートする事をお約束しましょう。」





 ✳︎





「まさか、嫁入り道具に軍艦を送るとは、全部計算通りだったのね・・・・・・」




「あぁ、全て最初からな。」




 数日後、ほぼ完成に近い状態となったデュークス島にできた新たな軍港で、俺たちは海を眺めていた。


『サキナ軍港』と名付けられたこの新たな軍港も段々と形になって来た。




「ほんと、とんでもないわね、あんたは。」




「ふふふ、自慢の旦那様ですね。」




 俺は現在、ヘレナの膝の上を堪能中であった。




「いや〜久しぶりに疲れたな。」




 議論は数時間にまで及び、俺は久しぶりに疲れてしまった。


 今回の会議で決まったのは2つ、


 ファリアの婚約と全面的な軍事支援。




 文字に写すと短いが、色々な事が決まった。


 今日決まった事を頭の中で思い返しながらヘレナの膝を堪能した。


 なんかイレーナから変な目で見られている気がするが、気のせいだろう。




「あ〜いいな〜ここ・・・・・・」





 しかしそんな和やかな雰囲気をぶち壊す、あるとんでもないニュースが飛んで来た。




「レオルド様、大変です。この島に、2方向から軍艦が近付いて来ています。」

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