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第4話 進歩

「これが?」




「はい、こちらが現段階で実用可能レベルとなった中で最長のものでございます、レオルド様」




 ヘレナとのラーメンデートの翌日、とても凄い物ができたという報告が、ハーンブルク領研究所から届いた。


 ちなみに、何ができたのかは着いてからのお楽しみらしい。


 俺はドキドキしながら『アイン』の下を訪れた。




「どんぐらいまで実用可能になったんだ?」




「地形にもよりますが、先月行われた、テラトスタ-ハワフシティ間の通信実験に成功しました。」




 嘘だろ。


 おいおいちょっと待て。


 テラトスタ-ハワフシティ間って確か1000km弱はあったぞ。




【正確には、978kmですね。驚異的な記録です。】




 今までの技術革新は『アイ』がいたからできたものであり、俺の実力ではない。


 人が何故『機械』を使うか、様々な理由が考えられるが、俺は『人の手』ではあらゆる面で限界があるからだと考える。


 例えばスマートフォン、詳しくは知らないが、おそらく1000分の1ミリ単位での調整が必要で、その調整は『人の手』には不可能なはずだ。


 だから人間は、全く同じ動作を何度も行う事ができる『機械』を作り、機械がそのような調整を行う。




 もちろん、俺が技術革新を始めた頃は、全く同じ物を作り続ける『機械』なんてこの世界には無かった。




 しかし、『アイ』ならばそれができる。身体の主導権を『アイ』に預けた上でならば、それが可能なのだ。


『アイ』の具現化が可能になってからは、彼女をシュヴェリーンにあるハーンブルク研究所に送り、アインや他の研究員達と共に研究に没頭するようになった。


 サラージア王国戦で使った『MK-V2』やハーンブルク鉄道の重要な部分、武器の製作装置などは全て『アイ』が作った作品だ。


 特に弾丸を大量生産する装置などは『アイ』が頑張ってくれたかんじだ。




 つまり何が言いたいかというと、基本的にハーンブルク領の技術の進歩には『アイ』が関わってあるという事だ。




 だというのに・・・・・・




「製作時間はおよそ2年半、ついに念願の長距離無線通信器が完成いたしました。」




「期待以上だ・・・・・・」




 ある程度の基礎的な理論の説明はしたとはいえ、『アイン』は人類の限界の壁を越えた。


 978kmこれがどう言う数字か、陸路なら2週間、海路でも2日はかかる距離だ。


 それを一瞬で・・・・・・




「あ、ありがとうございますっ!レオル様っ!」




「これは本当に凄いぞ。いや、凄すぎる。」




「お褒めいただき光栄でございます、レオルド様。」




 アインはそう言うと、小さくお辞儀した。


 当の本人は、この発明の凄さよりも俺に褒められてたことを、涙を流しながら喜んだ。


 アインに続いて、周りにいた研究員達も涙を流し始めた。


 真の科学者は、実利よりも科学の発展を優先する。しかし真の科学者も、自分の努力や頑張りが認められるのは嬉しい事だ。ましてや、俺のような雲の上の存在が相手なら尚更だ。




「ところでこれ、今どこで使える?」




「は、はい。今のところは『シュヴェリーン』、『テラトスタ』、『ハワフシティ』の3地点でございます。」




「1個作るのにかかる時間は?」




「はい、今まではおよそ1ヶ月ほどでしたが、レオルド様が開発に加わって下さればおそらく倍のスピードで製作できると思います。」




「なるほど・・・・・・」




「いかがいたしますか?」




 これ何個ぐらい必要かな。




【そうですね、作れるだけ作りたいと言うのが本音です。それぞれの主要都市に設置するのはもちろんのこと、戦艦に装備させても面白いかもしれません。】




 うわっ!確かにそれは必要かもな。




【海上では、陸地と連絡を取り合う手段が少ないですからね。大いに活用できると思われます。】




 ふむふむ。


 電車とかにも乗せたいけど流石に無理っぽいよな〜


 後はSHSの基地に置くのもいいかもな。




【情報を扱う彼らには必要かもしれませんね。】




 俺の呟きに対して、『アイ』は現実的な話を続けた。この偉大な発明品は確かに凄いが、使い方を間違えば、一気にその価値は崩れ落ちる。


 どこまで妥協し、どこまで揃えるかはアイの采配にかかっているのだ。




「とりあえずこの『アイン式無線通信器1号』を使って、こっちの方でネットワークを構築する事にする。君たちは、更なる長距離化と、音声の研究を行なってくれ。」




「長距離化は分かりますけど、音声というのは?」




「遠く離れた相手と会話できるようになったら凄くカッコいいと思わないか?」




「た、確かに、それはすごいですね。」




「モールス電信と同じように、まずは有線、次に無線って感じで開発を進めてほしいと考えている。」




「は、はいっ!レオルド様っ!」




 そう答えたアインの目は、キラキラと輝いていた。




「まぁとりあえず、君たちにはボーナスとして150万ベルを支給するよ。これからも頑張ってくれっ!」




「「「あ、ありがとうございますっ!」」」




 ハーンブルク領研究所、特にアインも所属する最先端研究部は、おそらく世界で最も労働条件が良い。


 まず最先端部に所属する研究員の給料は基本月収120万1000ベル+文書通信交通滞在費100万ベルの手当てが与えられており、それ以外にもハーンブルク鉄道の年間パスポートやホテルなどの宿泊施設における優先権などが与えられている。


 最先端部は200名前後、研究所全体だと10000名前後の研究員が日々研究に励んでいる。


 さらに、これらの研究員は上司から調査を命令されていない限り基本的に自由出所であり、一週間まるまる休んで家族と旅行に行く研究員もちらほらいる。


 また、入所の条件はハーンブルク領の学校を卒業した事と、各部署のリーダーに気に入られる事のみだ。




 さらに研究部の予算はほぼ無限で、俺が面白いと思ったものは例え1兆ベルでも出すと宣言してある。





 ちなみに研究員はほぼ全員勤勉かつ研究好きで、休めや帰れと命令しない限りいつまでも研究所に溜まり続ける困った者が多いのが最近の悩みの種だ。

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