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第3話 評価

諸事情により、以下の事を変更させていただきます。




連邦共和国の諜報機関『TKSET』について、ベルダルス直属からユリウス直属に変更しました。


「お断りします。」




 俺は、真剣な表情でこちらを見つめるクルトの目を見ながら答えた。


 俺がサーマルディア王国軍に援軍を派遣しない事を決めたのはSHSからサーマルディア王国とギャルドラン王国の戦争が、予想通り膠着したという情報を得た時だ。


 頭の中でそろばんを弾き、どうするのが1番賢い選択かを考えた時に、今ハーンブルク陸軍を援軍として送るのはナンセンスだと判断したのだ。




 少し悪い事したかもな、と思ったが後悔も反省もしていない。俺の判断1つで、ハーンブルク領に住む300万人以上の人々の生活に影響を及ぼすのだ。


 その決断には、それだけの重みがあるのだ。




「理由を教えてくれないか?」




「ハーンブルク軍が軍事介入した場合、話がややこしくなるからです。」




「どういう意味だ?」




「王国の宰相さんとの取り決めでは、ハーンブルク家と連邦共和国がギャルドラン王国以外の5カ国を相手にする代わりに、両軍とも軍事介入しないというルールがあります。そのため、宰相さんがハーンブルク家に軍事支援要請を出さない限りハーンブルク家が動く事はありません。」




「なるほど、僕ではダメという事か・・・・・・」




「そうなります。」




 本当の事を言うと、そのような約束をしているわけではない。しかし、宰相さんもしくは国王が軍事支援要請をしない限り、後々の講和会議で面倒な事になりかねない。


 確かに次期王太子候補という肩書きは凄いのかもしれないが、彼にそのような権限は無いと考えている。


 ハーンブルク家の領地が攻められたわけでは無い以上、戦争の口実が無いのだ。




 もちろん綺麗事だ、綺麗事ではあるが、このような手順をしっかり踏んで戦争の正当性を保たないと、今後の外交が面倒になるのだ。




「ならば、宰相殿か国王陛下がハーンブルク家にお願いをしない限り、話は平行線のままという事か・・・・・・」




「ご期待に添えず、すみません。」




「いや、いい。ただでさえハーンブルク家には軍事物資の支援をしてもらっているのだ。それが途切れないだけでも十分ありがたい。」




「そうですか・・・・・・」




 クルトが援軍の要請を諦めたと判断した俺は、いつもの口調に戻す。




「休戦をしようという動きは無いのか?」




「あったにはあったんだけど、両軍とも賠償金の支払いを求めて交渉は決裂したよ。」




「そうか・・・・・・」




 何というか、第一次世界大戦みたいだな。




【一緒にしてはいけないと思いますが、似ている所もありますね。】




 まぁ比べちゃダメか・・・・・・


 あっちとは規模が全然違うからな・・・・・




「と、いうわけだ。さっさと家に帰れ。」




「え〜ひどいな〜軍事要請の件はおまけであって本命は君と触れ合う事なんだよ?」




「嘘つけ。」




 こいつは何度か嘘をついていた。


 俺の相棒であり、ハーンブルク家のスーパーコンピュータである『アイ』が嘘を見抜けないわけがない。




「大方、あんたの一言でハーンブルク家が動くと証明できれば、あんたが王太子に成れる可能性がグッと上がると考えたんだろ。」




「ギクッ」




「王太子候補争いは実質、血の繋がった実の妹がハーンブルク家の次期当主に嫁いだあんたと、ハーンブルク家長女を正妻にもらったサルラックの一騎打ちだからな。」




「うっ・・・・・・」




「図星かよ。」




「そんな理由が・・・・・・」




 俺が思わず漏らした言葉に、隣に座ったヘレナは驚いた顔をした。心の優しいヘレナには、まさか自分と血が繋がった兄が、このような目的でハーンブルクを訪れたなどとは思わないだろう。




「はぁ・・・・・・仕方ないから街を案内してあげるよ。」




「おぉ、それは是非頼む。」




 何だか申し訳ない気持ちになった俺は、観光ぐらいならいいか、と判断した。


 調子に乗らない程度に上手くこいつを手駒に入れる方法を考える。




「私はレオルド様と2人きりでデートがしたかったのですが・・・・・・」




「なら僕も自分の婚約者を呼ぼう。ダブルデートと行こうじゃないか。」




 ダメだ、上手く手駒にする手段が思いつかん・・・・・・


 それと、強化された耳のせいで聴こえてしまったヘレナの呟きが痛い・・・・・・




「いや、何でお前が仕切るんだよ、まぁいいけどさ。」




「それじゃあレッツゴー」





 ✳︎





 4本に増え、複々線となったハーンブルク鉄道を使って、一気に西に進む。


 シュヴェリーンとテラトスタを結ぶハーンブルク鉄道には、7つの駅が存在する。


 俺たちは、シュヴェリーンを出発してから6つ目の駅で降りる。




「ここはもしかしてあそこかい?」




「あぁ、ここが、美食の街『サンセバス』だ。」




「おぉ〜」


「ここがあの噂のっ!あぁ〜感激ですっ!」




 途中で合流したクルトの婚約者、エラ・フォン・シードラさんを連れて美食の街を訪れた。


 ちょうど全員昼ごはんがまだだったのでちょうど良いと考えたのだ。




 変装をするのが面倒だったので、全員普段通りの格好で、俺達の周りにはSP(SHS)がついた。


 俺と腕を組みながら反対側の手に日傘を持ったヘレナと共に、道の中央を歩く。


 領民からたくさんの視線を向けられたが、最近ではだいぶ慣れてきた。




「どうする?何食べたい?」




「あ、あの・・・・・・ラーメンが食べてみたいです。」




 少し恥ずかしかったのか、ヘレナは耳元で呟いた。


 どうやら少し恥ずかしいようだ。




「わかった、じゃあおすすめのところに行くか。」




「はいっ!」

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