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第21話 才女

【天才ですね・・・・・・】




 あぁ・・・・・・


 まさかこちらの目的と抱えていた課題を両方とも解決する策を持っているとは・・・・・・




【この提案、受けた方が得です。その上で、彼女をこちら側に引き入れましょう。】




 今回、わざわざ俺が出向き、リトア王国にやって来た最大の理由は、リトア王国領にハーンブルク家の軍港を作り、アルバス河における覇権を握りたいと考えたからであった。




 地政学には、『シーパワー』という言葉がある。


 海を征する者が世界を征する、前世でも16世紀はポルトガル、17世紀はオランダ、18、19世紀はイギリス、20世紀はアメリカが、海を支配する事で、世界を征した。


 その際重要になってくるのが、港の位置と数だ。


 それぞれの国は、世界中に港を設置し、自由に航行できる体制を整える事によって、諸外国を一気に突き放す発展を見せた。


 ハーンブルク家が所有する大きな港は現在全部で『テラトスタ』『リバスタ』『ジオルターン』『ハワフシティ』『デュークス』の5つあり、その他の小さな港も合わせれば港の数は20を超える。


 特に、今後のハーンブルク家にとってチョークポイント(戦略的重要地)となり得る『ハワフシティ』と『デュークス島』を味方陣営に引き入れたのは大きい。




 あとは、アルバス河付近に拠点ができれば、大陸西側は完全に支配したと言っても過言ではない状態になる。




 そのためにもまず、リトア王国の南に軍港を設置したいと考えていたのだ。この時点で、俺とアイは彼女の案に賛同する事に決めた。


 例えリトア王国を支配できなくても、労力と資源と軍事拠点さえ確保できれば後は譲歩してもいい、と考えていたからだ。


 そしてその上で、俺たちには新たに欲しい物、いや欲しい存在を発見した。




「ならばこちら側からも1つ条件を出させてもらう。」




「何でしょうか・・・・・・」




「それは、ユリア・フォン・リトア、貴方がハーンブルク家に嫁ぐ事だ。」





 実はもう一つ、リトア王国を支配するにあたって大きな問題が1つあった。




 それは、統治者がいない事だ。


 ハーンブルク家は、代々妻を1人しか持たない風習がある。そのためか、俺の兄弟は4人しかいない。


 また、お父様には姉妹はいるものの、男の兄弟はいない。再従兄弟(はとこ)はいるらしいが既に独立している。




 長女のスワンナは論外、次女のファリアはデュークス家かレーテーン家に嫁ぐ予定、長男の俺がシュヴェリーンを離れるわけにはいかないし、次男のユリウスにはジア連邦共和国を任せてある。つまり、リトア王国領を管理できる人物がいないのだ。




 当初、ジア連邦共和国に一つの州として組み込むという案があがった。しかし、この方法には問題点がある。それは、リトア王国の国民に反発され、内戦が勃発したり、見えない形で嫌がらせを受ける可能性が高い事だ。


 そのため、出来るだけリトア王国の国民が不満を持たずに解決する方法は無いか考えていた。


 もちろん民主主義化も考えたが、これを実行する場合もリーダーは必要だ。しかし、リトア王国内にリーダーになり得る人材はいないと判断したのだ。




 だが目の前に居た。しかも、自分から民主主義化を進める事を提案するほど、先が見えている人物。


 リトア王国を治めるにふさわしいかもしれない人物。




 だから後は・・・・・・




「レオルド様、どういう意味でしょうか。」




 俺の発言に疑問を持ったユリアは、不思議そうに尋ねた。




【マスターが可愛いお嫁さんが欲しいだけでは?】




 いや、違うし。というかアイの意見だろうが。




【ですが、可愛いお嫁さんを増やしたいという欲求がある事は事実では?】




 まぁそこはそうかもしれないけどさ。




「確かに貴方の案は素晴らしいです。私も是非賛同したいと考えています。しかしそれを実行するには、この国をまとめ上げる権力と箔を持つ存在が必要です。」




「私がハーンブルク家に嫁ぐ事によって、私をリトア王国の女王に仕立て上げるという事ですか?」




「そういう事です。」




【ユリア様の考え以外にも、大統領制にして、彼女を大統領にするなどの案があります。】




 ユリアさんが大統領ってちょっと面白いな。




「ですが、お父様やお兄様の方がいいのでは?」




「最低でも3年は、能力のある人間が先頭に立って混乱するであろうこの国をまとめなければなりません。それが出来るのは、この国では貴方しか居ません。」




「なるほど・・・・・・」




 正直、ポラド王国やギャルドラン王国からの誘いをNOと言えない時点で、現国王と王太子に、それほど力が無い事は予想できる。


 むしろこの2国に、いいように使われていた可能性もある。




 しばらく黙っていたユリアさんであったが、覚悟を決めた様子でこちら向いた。




「レオルド様、私をレオルド様の妻にして下さい。」




「覚悟を決めたのですか?」




「はい、この国がそれで救われるならば、私は精一杯頑張ります。」




「ユリア・・・・・・」




 俺とユリアさんの会話を聞いていた王太子は、弱々しい声を出しながら尋ねた。




「お父様、私は自分がこの国の役に立てて嬉しく思います。なのでどうか、笑顔で応援して欲しいです。」




「あ、あぁ・・・・・・」




 娘に言われ、王太子は何とも言えない笑い方をしていた。




「では、我々は行きます。詳しい話はまた明日行いましょう。」




 ある程度の方向性がまとまったと判断した俺は、席を立った。


 そして、周囲にいた部下達に、小声で伝える。




「行くぞ。」




「はっ。」




 おそらく、家族同士で話したい事がたくさんあるだろう。そう判断した俺は、会議室を後にする事にしたのだ。


 俺が扉を潜ろうとした直後、後ろの方から声が聞こえた。




「レオルド様っ!」




 俺は、振り返らずに足を止めた。


 声の主は、振り返らなくても誰なのかわかった。




「どうもありがとうございました。それと、これから夫婦として、よろしくお願いします。」




 声を聞き終えた俺は、左手で軽く手を振ると、会議室を去った。





 ✳︎





 その日の夜




「レオルド様、今よろしいでしょうか。」




「あ、うん。何?」




 俺がアイと一緒にリトア王国の法律の草案を作っていると、夜遅い時間にクレアが訪ねて来た。


 俺はすぐさま彼女を招き入れる。


 すると彼女は、とてつもない事を言った。




「ユリア様が、訪ねて来られました。」




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