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第11話 side イレーナ

「北にお前と同じぐらいの歳なのに凄い奴がいる。」


 お父様から突然このセリフを聞かされた時、私は大いに驚いた。


 お父様が、他人の事を褒めるのは稀だ。


 優秀な政策を行った人、決断力の優れた軍略家、時代の流れを大きく変えた人など、これまで色々な人の成功した話や失敗した話を聞かされたが、サーマルディア王国内でお父様が褒めた事がある人物の人数は10人にも満たない。


 王国随一の頭脳を持つと世間で噂されるお父様に私と同じぐらいの年齢なのにもかかわらず認められるという事がどれほど凄いか。


 私は思わずその名前も知らない子に、嫉妬してしまった。




「どのような事をなさった方なのですか?」




「あの忌々しき狂信者どもを一掃する事ができるかもしれない方法を編み出したのだ。」




 実現できたなら、どれほど王国に利益をもたらすかわからないほどの方法を考えついたその頭脳は確か賞賛に値する。


 私も、徴兵と噂を使って教会を完全に孤立させた手腕は素晴らしいと思った。




 私の家は少し特殊で、貴族というわけではないが、その職業上数多くの密偵を抱えている。


 そのため、父の言葉に偽りはない。という事は、父の語る時代の流れを大きく変える可能性を持った人物である事は間違いないという事だ。




「それは、是非とも会ってみたいです。」




「ふふふ、私もだ。是非とも今後の国の方針について、忌憚のない意見を聞きたい。」




「お父様は、才能のある子に目がないですね。」




 父の趣味でもある紅茶を淹れて渡しながら、次なる情報を引き出す。


 私としても、どのような人物なのか気になるからだ。




「あぁ、当たり前だとも。報告を聞くかぎりじゃ、彼ならもっと凄い事に成し遂げるんじゃないかとも予想している。いや、間違いなく表の舞台に出てくるだろうな。」




「そんなにですか。」




「あぁ、お前の事も期待しているが、現時点では彼の方が数段上だろう。今度会った時はエリナ殿にどのように育てたらこんな化け物が仕上がるのか聞いてみたいところだ。」




 そう語る父の言葉は重い。


 私よりも数段上というのは少し悔しいが、それ以上にどれほどすごい人なのかの方が気になる。




「その方の名前は何というのですか?」




「ほぉ、やはりお前も気になるか。」




「はい、同じぐらいの年齢という事は将来一緒に働くかもしれませんので。」




「確かにそうだな。その者の名は、レオルド・フォン・ハーンブルク。あのエリナ殿のご子息だそうだ。」




「エリナ様の・・・・・・」




 エリナ・フォン・ハーンブルク、この王国に住む者なら誰でも知っている女傑だ。


 男優先のこの貴族社会の中で、唯一堂々と他の貴族達と渡り合える女性である。女性であるのにも関わらず1人で領地経営を行なっているという点も評価すべきの点である。


 そして、私が目標にしているお方でもあり、尊敬しているお方でもある。




「それと、来月に王都に訪れる事になっている。私も気になったから、パーティーに招待しておいたのだ。」




「それは・・・・・楽しくなりそうですわ。」




 お父様のこの言い方からすると、詳細を聞き出すために招待したといった感じでしょうか。


 私は、自分の分の紅茶を飲みながら、脳裏にレオルドという名前を刻んだ。





 ✳︎





 パーティー当日




 日が沈み始め、普段なら夕食を取ろうかというところで、私はお父様、お母様の3人と家を出た。私の家は別に貴族というわけではないが、王都ではそれなりに有名な家なので護衛に囲まれながら登城した。




 早速パーティー会場に入ると、既に多くの貴族や権力者達が集まっており、パーティーが始まっていた。


 日が沈み始めた頃に来るように、というルールだったので、私たちが遅れたわけではもちろんない。


 王都の貴族というのは、基本的に暇な人間が多くこういうパーティーには、真っ先に参加するという貴族が多いのだ。


 そして・・・・・・




「こんばんは、宰相殿」


「宰相殿、お久しぶりです。」


「宰相殿、例の噂について、あなたはどうお考えで?」




 あっという間に、お父様は貴族達に囲まれてしまった。こうなると、私は自由になる。


 そして、早速エリナ様を探す事にした。


 ・・・・・・いた!




 王国では珍しい紫色の長い髪をお持ちになられている美しい人で、隣にはその息子と思われる少年が立っていた。


 確かに小さい。


 その少年は、自分と同じぐらいの背の高さだった。外見は、その特徴的な髪色以外に変わった所はなく、別に普通だ。


 本当に、ただの一般人なんじゃないかなとさえ思ってしまう。




「イレーナ、君も気になるかい?」




「っ!はい・・・・・・」




 私が話しかけようか迷っていると、あの包囲網を突破したお父様がいつの間にか隣に立っていた。


 少し面食らったが、落ち着いて答える。




「そうか、ならついてくるといい。」




「お供いたします。」




 そういうとお父様は、エリナ様の方へと歩いていった。私はその後を追う。


 そして、エリナ様に話しかけた。




「お久しぶりです、エリナ殿。相変わらずお元気そうですね。」




「こんにちは、宰相様。元気なのは確かですが、あなたが流した妙な噂に苦しめられているのも確かです。」




「それはそれは、何の事かわからないですね。」




 どうやら最近王都で噂されているハーンブルク領が急激に発展しているという噂を流しているのはお父様のようだ。


 そして、口論は続いた。

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