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第18話 sideクレア5

 それはまるで、時の流れがゆっくりになったかのような出来事であった。




 何かが破損した音が響き渡る。


 何が破損したのかは理解できた。そして、私は全てを理解した。




「動くなっ。」




 レオルド様の背後にいた私は誰よりも早く動いた。


 私は、自分から出たとは思えないほどどす黒く突き刺さるような声を発した。


 そしてすぐさま距離を詰め、レオルド様の横に立つとレオルド様が作ってくれた特別製の銃口をリトア王国の王太子に向けた。




 呆気を取られ、その場にいた全員が思わず動きを止めた。


 少女に合わせて、背後に立っていたハーンブルク側の護衛達も銃を構えた。


 続いて私は銃口を、扉の隣に立っていた衛兵に向ける。




 パンッ!




「これを淹れた者を呼んで来い。」




 そして、私は衛兵の正面を通過するように引き金を引いた。こういう時は、威嚇射撃をしておいた方が良い。


 自分の武器をしっかりとアピールした上で、敵が反抗しないようにするためだ。




「は、はい。ただいま。」




 扉の近くに立っていた衛兵は、慌てて部屋から出ていった。


 そこで初めて、私は一旦冷静になった。


 レオルド様の首筋に触る。よかった、まだ息はあるようだ。




 私の銃は『M-4』、他の兵士が持つ『M-3』と違って6発までなら連射が可能なリボルバー式が採用された銃で、今見せている一丁の他にスカートの中にあと2丁隠してある。1人での制圧はおそらく可能、だがレオルド様を守りながらだと少しきつい。


 万が一暗器(暗殺に特化した武器)を持った敵がいると、無傷で守りきるのは難しい。




 こっちは10名、向こうは武器を持った戦士が25人、非戦闘員が5名だ。


 私の銃の銃口は常に敵の国王に向いているので、おそらく変な事はしてこないだろう。もちろん油断はできないが、ひとまずは安心だ。


 私は次の手を必死に考える。




 緊張が一気に高まり、室温が急激に上がったような気がした。






 その直後、均衡が一気に破れた。






「さて、これがどういう事か説明してもらおうか。」





 私は思わず、ビクッとして振り返った。


 すると、レオルド様はゆっくりと顔をあげた。




「レオルド様、ご無事で・・・・・・」




「前に言ったでしょ?俺に毒物はいっさい効かないって。」




「心配だったんですよ?」




「ははは〜ごめんごめん。」




 私が本気で心配したというのに、レオルド様はまるで何事も無かったかのように笑った。


 それと同時に、私はこんな話を昔聞いたのを思い出した。レオルド様は、昔から一才病気にかかった事がない。


 それどころか、船に酔った事もないし、毒物なんかも平気だと自慢していたのを思い出した。




「一時はどうなるかと思いました・・・・・・」




「お、おい、泣くなって。」




「うぅ〜泣いてません〜」




 レオルド様に騙されたというのに、私は自然と涙が出ていた。


 自分でもびっくりしている。




 私は、思わずレオルド様に抱きついた。優しくて甘い香りが、私の鼻腔をくすぐる。


 しばらくして私が落ち着くと、彼は真剣な表情になってこう言った。




「さて、これがどういう事か説明していただけますか?ドウグスさん。」







 ✳︎





 話は、少し前に遡る。




「・・・・・・」




 俺は、渡されたカップを眺めた。


 一見、何も普通の紅茶だ。もちろん、俺が見た感じ何処にもおかしなところはない。




「レオルド様、毒味を行いますか?」




「要らない。」




「わかりました。」




 俺に言われて、クレアは再び俺の背後に戻った。


 用意されたカップを手に取り、中身をしっかりと覗いた俺の脳内に、『アイ』が警告を発した。




【毒物が検出されました。毒物の解析及び、対策プログラムを構築が完了しました。】




 いや、実際には警告ではない。


 既に対策が終わったという報告であった。


 俺は、会議が始まるよりも前から、会議中に何らかの方法で毒殺を企んでいる人物がいる事を知った。


 知らせてくれたのは、ユリアさんであった。


 先ほどの偶然を装った一瞬の接触、その際彼女は俺の胸ポケットに1枚の紙を忍ばせた。




 書かれていた内容は2つ。


 俺の命が狙われている事と、計画を実行しようとしている男の名前だった。




 もらった時はまだ半信半疑であったが、俺は出された紅茶を見て、事実である事を確信した。




 さて、どうするべきか・・・・・・




 俺は視線を少し横にずらした。先ほどの少女と目が合う。


 彼女は、青ざめた顔をしながら首を左右に振っていた。




 おそらく、俺の反応から彼女は気付いたのだろう。




「よし・・・・・・」




 俺は、小声で小さく覚悟を決めると、毒が入っていると知りながら、紅茶を飲み込んだ。




 飲んでから数秒後、俺の体内は悲鳴を上げていた。


 そして、アイから待ち侘びていた報告が届いた。




【中和が完了しました。】




 その報告を聞き届けた俺は、そのまま倒れた。


 俺を心配したクレアが、すぐさま俺の隣に駆けつけた。






 しばらく時間が計画し、タイミングを見計らってから、俺は顔を上げた。




 心配してくれたクレアを宥めつつ、俺はおそらく犯人であろう人物を指差した。




「さて、これがどういう事か説明していただけますか?ドウグスさん。」




 レオルドは、先ほど休憩を薦めた男を指差して言った。


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