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第12話 構想

「本当に、放棄するのですか?」




「はい、ハーンブルク家の目的は、ジオルターンの防衛と所属国であるサーマルディア王国の防衛のみです。今のところ、領土を増すという予定はありません。」




 確認するかのように尋ねたエラリア国王に対して、俺はキッパリと言い切った。


 もし仮にラトシア王国の領地の一部がハーンブルク領となったとしても、その領地を管理するのは正直面倒すぎる。ジオルターンのように、海が近くにあればまだ何とかなったかもしれないが、あそこは付近に河は流れているものの内陸部だ。


 また、この世界で最速の移動手段である『レインシリーズ』を使ってもあらゆる情報伝達に数ヶ月かかる。




 それなら、エラリア王国とグニルタ公国に条件付きでプレゼントとして、その見返りを求めた方がだいぶ得をすると判断した。


 もちろんこれはお母様とも共有済みだ。




「ではその条件というのは?」




「それは、ジオルターンの対岸とその周辺の税を大幅に安くしてほしいと考えております。」




「どういう事ですか?」




「税金を軽くし、人を集め、ジオルターンと同等かそれ以上の都市を造ってほしいと考えております」




 つまりこれは、経済特区を作ろうという計画だ。大陸の西の端に位置するサーマルディア王国ハーンブルク領から大陸の東側と貿易を行いたいと思ったら、どこかに中継地点を作る必要がある。その第一候補としてジオルターンが考えられていた。


 しかし、ジオルターンの周囲には大消費地が無いためハーンブルク領内の商会の多くが進出を躊躇っていた。そのため他の都市に比べてあまり発展しておらず、レオルドとしてはどうにかしてジオルターンをリバスタやテラトスタ級の大都市にしたいと考えていた。


 そこで思いついたのが、今回の作戦だ。




【ジオルターンの一極集中を狙うのではなく、ジオルターンを中心とした大都市圏を作る方向でいきましょう。】




 え?どういう事?




【ジオルターンに莫大な金額を投資して無理やり大きくするのではなく、他国を説得させてジオルターン周辺に都市を作らせ、その中心地としてジオルターンを発展させましょう。】




 なるほど、何となく言いたいことは理解できた。でもそう簡単に都市ってできるの?




【税金が極端に安い経済特区を作ってもらい、そこにヒトとモノとカネの流れを集中させます。今回の戦争によって、貧しくなった者は少なく無いはずです。彼らに食べ物と仕事を提供し、移住してもらうという作戦も同時に並行して行います。】




 という事はアレもやっちゃう?




【はい、同時にサッカーの普及も行います。将来的には周辺の都市を巻き込んでプロリーグを作れたら面白いかもしれませんね。】




 やっぱり領地経営はこれが無いと始まんないよな。




【・・・・・・そうですね。】





 本音を全て話すわけにはもちろんいかないが、俺はいくつか構想を説明した。エラリア王国の全面協力があった方がやりやすいと考えたからだ。




「なるほど、大都市圏構想ですか・・・・・」




「儂は正直これが良いものなのか悪いものなのか判断がつかん。ジャイアントよ、どう思う?」




「こちらの損になる話では無いと思います。都市と都市の距離を縮めて経済交流を活発化させようというレオルド様の案は、我が国に十分な恩恵を与えてくれると思われます。」




 終始黙って俺の話を聞いていたジャイアント将軍は、俺の大都市圏構想をそのように判断した。




「そのわけを聞こうか。」




「はっ。まず、ハーンブルク領の進んだ技術を我が国もある程度利用する事ができるという点です。ハーンブルク領で作られた道具や食べ物が我が国に大量に輸入される事になるので、必然的に我が国の生活レベルは向上します。」




「どういう事だ?」




「農業が良い例です。我が国では、農業に鉄や石の鍬を使っておりますが、ハーンブルク領では金属同士を混ぜ合わせて特殊な金属を作る技術が発達しており、その特殊な金属で作った鍬を我々も使う事ができるようになるという事です。」




「なるほど。」




 これは農業だけでなく、漁業や食生活についても同じだ。流石に軍事物資の輸出は一切行わないが、お菓子などの嗜好品は外国でも人気が出るだろう。


 ちなみに、料金に関してはしっかりと支払っていただく事にしている。




「次に、我が国の特産品がたくさん売れるようになります。レオルド様の提唱する大都市圏構想では、都市同士の交流が盛んになります。そうなると、我が国の特産品が海外に向けて容易に輸出する事ができるようになります。」




「なるほど・・・・・・」




 ジャイアント将軍の言葉に、エラリア国王は頷いた。


 正直言って、エラリア国王は今の話を理解しているとは思えない。だが、ジャイアント将軍は丁寧に説明をしていた。多少間違っているところもあったが、ジャイアント将軍としてはこのように認識していた。


 というか、頭良さそうな部下も含めてマッスルマンが1番理解しているのは面白いな。




【マスター偏見は良く無いですよ。】




 まぁ確かに・・・・・・




【ですが、私も予想外の出来事に驚いております。】




 おい。





「レオルド様、この話既にグニルタ公国の方には共有したのですか?」




「はい、戦争が始まる前から、既に決まっておりました。」




 ジャイアント将軍の問いに、俺は答えた。秘密同盟を結ぶ条件として、同じような事をグニルタ公国に約束させたのだ。


 もちろん、既に連邦議会にも承認済みである。




 すると、エラリア国王は俺の方も見ながら言った。




「ではこの話、我が国も乗らせていただきます。」

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