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第10話 王都

 3ヶ月というものは、思ったよりもあっという間に過ぎていくものである。


 先日俺も1つ歳をとり6歳になった。だからといって何か変わったわけではないが、1つ大人になった事は確かだ。




 ある1つの事を除いて、俺の周りは万々歳であった。鉄の精製に関してはハーンブルク領だけでサーマルディア王国の90%以上を担っているほどハーンブルク領は発展していた。


 各地で掘り起こされた鉄鉱石を輸入して、それを外部に鉄の剣として輸出した。




 圧倒的な成長速度に、他領や王国も新しく画期的な製鉄技術を生み出したのではないか、と噂されているらしいが、知らぬ存ぜぬで通している。


 おそらく、今回のパーティーの本当の目的は、製鉄技術について聞き出す為だろう。




 つい先日まであれだけバチバチやりあっていた例の教会は、お母様の怒りに触れた結果、強制退去命令をくらい、本国に逃げ帰ったそうだ。




 3つの研究部門も結構発展していると聞いた。流石に戦前日本とまではもちろん行かないが、俺が設計した蒸気機関によって様々な産業の効率は倍近くまで発展していた。中でも3ヶ月ほどかけて製作した製糸場が、最近稼働し始めたと聞いた。


 もちろん、蒸気機関も今のところは特秘事項に選定されており、領民すら知らされていない。蒸気機関については、『シュヴェリーン』と『テラトスタ』のちょうど真ん中あたりに建設された工業地区で集中管理されている。警備はもちろん厳重である。


 だが、色々な物が便利になっていく生活に、救世主が現れたのではないか、と領民の間で噂されるようになった。




 そして、当の本人はと言うと・・・・・・




「ダンスやだ、無理、行きたくない・・・・・・」




 馬車の中で不貞腐れていた。


 ここ最近、ずっとダンスのレッスンであった。俺の脱出計画はお母様によってことごとく打ち砕かれ、何の成果も得られなかった。




「しっかりして下さいませレオルド様、もうすぐ王都に着きますよ。」




「はぁ・・・・・・不安しかない。」




 そして今日は、半年ぶりぐらいにお父様と会う日でもある。王国軍の幹部である父親は、基本的に王都に滞在しているので、会うのは久しぶりだ。


 ちなみに、お母様と、ユリウスやフィリアと言った俺の姉弟達も一緒だ。俺たちが不在の間、リヒトさんがハーンブルク家の全権を担う事になっている。彼なら安心というわけだ。


 お母様とユリウス、俺とクレア、フィリアと筋肉の3つの馬車に分かれ王都に向かう事15日ほど、いよいよ王都が見えてきた。




「すげ〜あれが王都か、初めて見るな。」




「私も初めてです。『シュヴェリーン』と『テラトスタ』を足したぐらいの大きさがありますね。」




 確かに大きい、高い塀に囲まれた城塞都市である王都は、周囲にも深い堀があり、防御力に優れた都市といった感じだ。




【サーマルディア王国の王都サーマルは、500年ほど前に建国された当時からずっとこのサーマルディア王国の王都として栄えてきました。人口はおよそ50万人、その内の4万人が兵士として駐留しております。】




『アイ』の解説を聞きながら、城を見渡す。


 西洋風の平城で、結構カッコいい。


 住みたいとは一切思わないが、たまに観光に来るのはいいかもしれない。




【超ー上から目線ですね。】




 うるさいな。




【ダンスの時に手を貸しませんよ。】




 ごめんなさい。




「突然頭を下げて、一体どうしたのですか?レオルド様。」




「いや、何でもないよ。ほんとうに何でもない。」




 そんな軽口を叩いていると、俺たちを乗せた馬車は城門を通り抜けた。お母様の顔を見た瞬間、衛兵が頭を下げながら通してくれた。


 顔パスだ。


 流石有力貴族である、かっけえ。




 街中をしばらく進むと、ハーンブルク家の家紋が入った一軒の屋敷が見えてきた。おそらく、ここが俺の家なのであろう。


 2階建の結構高級感のある屋敷で驚く。


 馬車から降り、地面に足を付けると、あの男が出迎えた。




「久しぶりだな、レオルドよ。元気にしていたか?」




「お久しぶりです、お父様。皆、元気に暮らしております。」




 悪趣味としか言いようがない全身甲冑に身を包み俺を出迎えたのは俺の父親だった。


 護衛の騎士とかはいなかったが、腰に携えてある大剣が目に刺さる。


 いかついな。


 レオルドの父親、ジルバートは国防軍の幹部である。俺が小さい時はずっとハーンブルク領にいたが、最近は半年に一回帰ってくる程度となっていた。




「おうそうか。エリナに、ユリウスに、フィオナに、スワンナも久しぶりだな。」




「お久しぶりです、あなた。みんな元気でいい子に生活していました。」




 遅れて馬車から降りたエリナが、代表して答える。




「エリナ、お前また何か偉業を成し遂げたそうだな、王都の貴族の間で噂になっているぞ。」




 レオルドの父、ジルバートは王都で散々聞かれた事について、その指揮をとっているであろう妻に尋ねる。


 詳しい内容は忘れたが、何か凄い事が起きたんじゃないか、と聞いたからだ。




「ふふふ、それに関しては今のところは秘密にさせて下さい。王宮にもまだ報告していない事ですので。」




「そうかそうか、まぁ好きにやってくれ。お前なら大丈夫だ。」




 ジルバートは、妻であるエリナに絶大な信頼を置いている。それはとてもいい事なのだが、当主が全く領地経営を行わないというのはどういう事なのだろうか。


 まぁ脳筋がトップに君臨するのもそれはそれで良くないのだが・・・・・・




「はい。では私は明日の支度をしますのでユリウスと先に中に入っていますね。」




 このお母様の発言から、何やら暗雲が立ち込めてきた事を感じた。


 まずい、この流れだと・・・・・・




「わかった。俺は息子達の成長具合を確認しとくぞ。」




 ですよね・・・・・・


 隣をみると、さっきまで黙っていた長女のスワンナが、メラメラと闘志を燃やしながら、今か今かと待っていた。


 ここにもいたよ、戦闘狂。




「怪我をしない程度にして下さいね。」




「あぁ、わかっているとも。」




 おいーー


 それ絶対怪我するやつやん。


 やめて!俺は明日のダンスの練習をもう少ししたいんだ、頼む・・・・・・


 という俺の希望は、無残にも消えていった。


 そして、フィオナと俺とクレアの3人でこの戦闘狂二匹にどうしかえしをしようか相談するのであった。




 混ぜるな危険

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