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27.また来たよ

「いただきます」


 パン


 今日のお昼はサンドイッチ。

 卵サンド、チーズハム、ブルベーリージャムとか色々バラエティーに富んでる。

 ありがとう姉さん、ありがたく頂くよ。


 それで僕はいま外にいるんだけど、これが意外と悪くない。


 校庭の芝生、レジャーシートっていうの?

 それを地面に敷いて食べてる。

 角度がちょっとナナめってるから、そこだけは滑らないように要注意。


 周りの景色を見ながらサンドを頬張る。


 秋の心地よい風。

 辺り一帯広がる緑地、目とかに良さそう。


 芝生の独特な匂い。

 天気も良くて、お日様の下で食べるご飯は、なんだか新鮮で良い気分転換になる。


 あと他の生徒がいないからさ。

 心に安らぎをもたらしてくれる。

 ついここが学校だってことを忘れるくらい、ってのは少し大げさだけど、とにかく落ち着いた空間。


 学校にこんな良いポイントがあったなんて知らなかったよ。


 今度篠宮さんも誘ってみようかな。

 ここなら誰もいないし、周りを気にしなくていい。

 景色もなんか風情があってそれっぽいし。


 きっと篠宮さんも気に入ってくれると思うんだ。

 なにより2人っきりになれる。そう、篠宮さんと。

 教室や食堂と違って誰にも見られない。


 だからさ、ちょっとくらいイチャついても──


「──みーつっけた」


 うっ、この嫌に透き通った声は……


「探したよ、冬木君」


 綾瀬先輩だ。 〰 


「どうしてこんなところに? 金曜日は私と食べるって約束してたのに」


 そっちが一方的に、ね。


 そんなの決まってる。


 先輩、キミがやってくるからだよ。

 先輩が来るから教室にはいられない。

 だからこうやって外に避難してるって言うのに、先輩ときたら……


「よっと」


 また勝手に僕の隣に。

 スカートを手で抑えてそれっぽく座る。

 ふん、別にそれくらい、篠宮さんでもやってるよ。


「へ~、冬木君。今日はサンドイッチか。美味しそう」


 そういう先輩は、購買のパン。

 片手には紙パックのジュース。

 焼きそばパンとか色々ビニールに入ってる。


「私も頂きますっと」


 チラッ


 邪魔な髪を後ろに流して、お上品にパンをかじってる。

 一口が僕よりも小さい。


 もどかしい。

 篠宮さんならもっと思いっきり、ガブッ!っていくのに。

 それはもう幸せ〜って感じで頬張るのに。


 先輩はアレだね、可愛げが足りないね。


 それに、最近はよく食べる系女子が僕の中で流行りなんだ。

 それを知らないのか。

 ふん、どうやら流行には疎いようだね、綾瀬先輩。


「ん、良いところだね、ここ。今度からここにする?」


 いや、なに勝手に提案してるのさ。

 今度からって、なんでまた一緒に食べる前提なのさ

 

 ここは篠宮さんとデートスポットにしようと思ってたのに。

 それをなんで先輩なんかと……

 勝手に決めないでよ。


 ジ~ッ


 み、見られてる。下の方。

 僕じゃなくて、僕のサンドイッチ。

 どうしよう、僕のサンドイッチ、先輩に狙われてる


「そのハムが入ってるの、美味しそう。そうだ、私のあんぱんとそれ、交換しない?」


 狙いはやっぱりそれか。

 僕のチーズハムは渡さないよ。

 好物だから最後に食べるんだ。


 美味しいモノは案外先に食べた方が良いって、篠宮さんが教えてくれた。

 でもね、篠宮さん。

 例え誰になんと言われようと、僕は最後に食べる派なんだ。

 そこだけは譲れない。


 それに、せっかく姉さんが早起きして作ってくれたんだ。

 誰があんぱんなんかと交換してやるもんか。


 フイッ


「あら、避けられちゃった。フフッ、嫌だった?」


 サンドイッチを僕の方に寄せる。

 避難避難っと。


「そう、それじゃあ……これっ!」


 サッ


「あっ」


 ブルーベリーが⁉

 一番端っこにある僕のジャムサンドが⁉

 隙を見せたところを先輩にパクられた!


「か、返して……」


 って、


「ほら、冬木君、あーん」

「なにしてるんですか……」


 なんで僕の口に持って行こうとしてるのさ。


「なにって見ての通り。冬木君にあーんってしてる」

「いや、そういうことじゃなくて……」


 人の食べ物を勝手に横取りして、それが人のやること?

 そんなこと、流石に篠宮さんでもやらないよ。


「恥ずかしいの? ここにはいま誰もいないけど? それとも、やっぱり照れてる?」


 綾瀬先輩……


「ふ~ん、あの子とはよくやってたけど、私とは嫌?」


 ……うん、やっぱりダメだ。

 この人は関わっちゃダメな人。

 僕の口からハッキリ言わないと。

 

「……あの、綾瀬先輩」

「んー、なーに?」

「こういうの、もうやめてください」


 僕が先輩に興味ないってことをハッキリと伝えないと。

 篠宮さんのためにも、僕自身のためにも。


「えっ? ごめん冬木君。今なんて?」

「その、僕と先輩ってそういう関係じゃない。こういうことするのって、正直言っておかしいと思うんです」

「そう?」

「それに先輩といると、他の人から変に思われるし」

「んー? 私は別に気にならないけど?」


 っ……コイツ


「そっ、周りのことなんて気にしなくていいのに。あんなのただの色彩、建物の一部だと思えばいいよ」


 いや、中途半端じゃダメだ。

 頭のネジが軽く飛んでるこの人には、普通に言ってもダメなんだ。

 ちゃんと言うんだ、僕。

 

「迷惑なんだ。先輩が僕のところに来るのは」


 先輩とはそういう関係にはなるつもりないし、面倒ごとは嫌だから、正直関わりたくない。

 そもそも苦手なんだ、先輩のこと。

 だから付き合うとか絶対にあり得ない。


「それに、篠宮さんとはまだ……」

「へっ? 君たちって付き合ってないの?」


 先輩、目を大きく見開いてる。

 口の形も普通になってる。

 まるで予想外って反応で、これが一番効果あるって感じ。


「そ、そうですけど……」


 たしかに、これが僕の用意した切り札ではあるんだけど。

 事実、篠宮さんとはまだ友だち関係なワケだし。

 でも、うぅ、なんか複雑……


「そっか、お友だちなんだ。よく一緒にお昼食べてるからてっきりそうだと思ってた」


 そうだよ。

 全部先輩の勘違い、早とちり

 残念、当てが外れたね。


「うーん。お友だちにしては結構仲が良いように見えたんだけど、おかしいな」


 そ、そうだよ。

 僕と篠宮さんはただの友だち。

 そう、仲の良い友だち同士なんだ……


「そっか、まだなのか」


 この先輩は、いわゆる彼女持ちの男しか狙わない。

 人の彼氏を強奪するのが好きな、すごい悪趣味な先輩。


 女の敵は女ってよく言われてるけど、本当だったんだね。


 でもそれは裏を返せば、僕は対象外ってこと。

 今後、篠宮さんとどうなるか分からない。

 だけど、とりあえず今はこれで、僕への興味が萎えてくれるといいんだけど。


「じゃっ、私にもまだチャンスはあるってことか」


 っ⁉ な、なんでそうなるの⁉

 僕は年齢=彼女無しの、超陰気な男子中学生。

 見るからに冴えないのになんでさ。

 もういい加減諦めてよ。


「はい、そういうことだから、冬木君、あーんして? ほらっ、あーん」


 くっ……


 プイッ


「あっ、無視された。ひどい」


 ダメだった。

 万策尽きた。

 この人、強すぎる、頭が強すぎるよ。


 篠宮さん、僕はどうすれば……


「いいよ、ならこれは私が貰うから」

「えっ」


 っ⁉ ぼ、僕のジャムサンドが⁉

 それは!

 姉さんが僕のタメに作ってくれた、僕の……


「あーん……」

「ま、まって──」


 パクッ


 ……あっ


「んっ、美味しいね、これ」


 モグモグ



 ……うん、絶対許さないよ。

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