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18.腕相撲バトル

「ごちそうさま」


 今日のお昼は教室で。

 お弁当の日。

 篠宮さんと机をくっつけて向かい合わせにして食べる日。


「満足そうだね。冬木くん」

「まあ、そうかな」


 多すぎず、かと言って少なくもない。

 ちょうどいいくらいの分量。


「ふ~ん、お姉さんの作ってくれたお弁当、そんなに美味しかったんだ」

「う、うん、それなりには」

「ふ~ん」


 篠宮さんの、ジト目……


「悪いけど私、料理なんて出来ない。冬木くんには何も作ってあげられない。ごめんね」


 いや、なにそれ。

 まだ何も言ってないのに。


 いつも思うんだけど、なんで姉さんに対抗心を燃やしてるんだろう。

 たった一度会っただけなのに。

 篠宮さんのそういうところ、良くないと思う。

 っていうかちょっと面倒くさいよ、篠宮さん。


 まあ、いいや。

 女子には色々あるんだろう。

 男の僕が考えてもどうにもならないや。


 そんなことより今大事なのは、食後のおやつ。

 

 鞄をゴソゴソして、発見。


 これは、母さんのお菓子ボックスからこっそりくすねてきた板チョコ。

 僕の好きなミルクチョコレートを、パキッと。


「あ~っ! 冬木くんがお菓子持ってきてる~!」


 バッ!


 ザワザワ、ザワザワザワ


 えっ? それがなに?

 なんでみんなそんなに驚いてるの?

 

 ま、まさか、


「ダメなの?」

「ダメに決まってるよ! 学校にお菓子を持ってくるなんて完全に校則違反だよ!」

「えっ、でもたしかここって、自動販売機とか普通に置いて……」


 炭酸の入ったジュースとか、食堂でプリンとかのデザート類は買える。


「なのになんでお菓子はダメなのさ?」

「そう言われても、そういう決まりだもん。ダメなものはダメなんだよ」


 そうなんだ。

 変な学校。

 とりあえず校内で買えるモノはOKな感じ?


「先生に怒られちゃうよ、見つかる前に早く食べな」

「……分かったよ」


 パキッ


 そっか、お菓子は持ってきちゃダメなのか。

 いや、ホントに知らなかったんだ。

 別にそんな風に言わなくても。

 なんか怒られてるみたいで嫌だ。


 パキッ


 でもたしかに考えたら、学校にお菓子を持って来たらいけないって普通分かるよね。

 小学生、はたまた幼稚園生でも分かる。

 私立にいるとそこら辺の感覚が狂っちゃう。

 だからわざとじゃないよ。私立のせい。


 でも僕は思うんだ。

 チョコレートは例外だって。


 知ってる? 糖分の補給って結構大事なんだ。

 頭の動きが良くなるらしい。

 そのための、午後の過酷な授業を乗り切る、貴重な栄養源。

 多く取っておいて損はない。


 って、甘党の母さんがよく言ってた。

 取り過ぎは良くないと思うけど。


 それにほらっ、板チョコをかじってると、何だか賢くなった気分になるでしょ?

 そう思い込むことで結果的にやる気も出てくるワケだし。

 アレだよ、プラシーボ効果って結構バカにならないと思うんだ。


「篠宮さんも食べる? 全部食べると流石に胃もたれするから、半分くらい食べて欲しいんだけど」


 手伝ってという名目で、篠宮さんと半分個


「いい。いらない」

「いいの? 別に篠宮さんを共犯にさせたいワケじゃ──」

「いらない。私、ホワイトは苦手。普通のしか食べないよ」

「……そう、美味しいのに」


 パキッ


 篠宮さん、ミルクチョコは食べないのか。

 そっか、残念。







 ──食後のお昼休み。


「ねえ、冬木くん」

「なに?」

「腕相撲しようよ」


 えっ、腕相撲? 

 なんでまたいきなり。


「フフフッ、実はこの前、明代ちゃんたちと勝負してね。それで私が一番強かったんだよね」


 仲間内の腕相撲大会で、篠宮さんが優勝したらしい


「友ちゃんはともかく、明代ちゃんにまで。すごくないかな? だって明代ちゃん剣道部だよ? 帰宅部の私が剣道部に勝っちゃったんだよ?」


 なるほど、それでそんなに。


 だけど、果たしてそれでいいのか、篠宮さん。

 近頃、何やらパワー系女子っていうのが流行ってるって耳にはしてるけど、女子なら普通、非力ぶるのが定石だと思う。


 ゲームで例えるなら、力属性。


 なのに篠宮さんは素直に喜んでる。

 ゲーセンの時もそうだけど、このままじゃ怪力キャラになっちゃうよ。


 カツ丼の件は気にするくせに、こういうのは気にしない。

 やっぱり変なところで変わってるよね、篠宮さんって。


「というわけで、やろうよ冬木くん」


 スッ


 左腕を机の上に乗せてきた。


 篠宮さん、やる気だ。

 この構え、女子アピールをするんじゃなくて、本気で倒そうとしてる時の構えだ。

 

 男の僕に勝つ気でいる。

 よほどの自信があるのか、それとも覚悟が決まってるのか。

 ただ単にアホの子なだけかもしれない。


 いずれにせよ、僕の答えは決まってる。

 そうだよ。

 僕は目の前にある勝負を断るほど臆病でもないし、逃げ出すほど弱くもないよ。


「いいよ。その勝負、受けて立つ」

「そう来なくっちゃ。それで、負けた方は何でも言うことを聞くってのはどうかな?」

「別に、僕は構わないよ」

 

 言ったね。

 その言葉、10秒で後悔させてあげるよ。


 左腕をリングの上へ、いざ


 ギュッ!


「フフフッ……冬木くんの手、柔らかくて温かいね。これでどうやって私に勝つのかな?」

「篠宮さんこそ。こんなひんやりとした綺麗な手で、この僕を止められるとでも?」


 いくよ、篠宮さん。

 僕の全オーラをこの左手に込める。

 後悔のないように全力を尽くすだけだ。


 ギュッ!


 ……おっと、言い忘れてた。

 実は僕って、普段は右利きで、いつも右手で色々やってるんだけど。

 でも本当は違うんだ。

 本当は……そう、この左の方が強かったりするんだ!


「じゃあ、スタート!」


 グッ!


 ッ⁉ ググッ、グググググ……


 うぎぎぎ……お、思ったより、動かないっ!

 お互いの腕が真ん中で競り合って、プルプルと揺れるだけ。

 篠宮さん、強いっていうのは本当だったんだ……

 たしかに優勝しただけのことある。


 ま、全くの互角。

 まさか、篠宮さんも左が……

 右利きと偽って、僕と同じタイプ⁉


 そんな、事前に左手を出すことで、利き手勝負に持ち込もこんだって言うのに、これじゃ……


 グググググ!


 くっ、篠宮さん、まだ余裕のある顔だ。

 たしかに顔は赤くなってる。

 だけど、ギリギリの僕とは違って、うっすら笑みを浮かべてる。


 ち、違う……この顔は、戦いを楽しんでいる。

 そこだ。

 そこが僕とは決定的に違ってる。


 な、なんてことだ……

 完全に相手の器を見誤った。

 パワーは互角だけど、気持ちの部分で押し負けている。


 ヤバいよ……ヤバいよ……

 このままじゃ篠宮さんの言いなりだよ。

 まあでも、それはそれで……


 いや!


 グッ!


 ダメだ。

 男が負けるなんて何があってもダメだ。

 そこだけはしっかりしないと。


 女の子に、それも好きな子に負けるなんて、カッコが悪すぎる!

 ここで負けたら……いいや、負けられない。

 そうだ!

 この勝負、僕が勝たないとダメなんだ!


「くっ……うっ、うぎぎぎぎ」


 グググググ……


 ちょっとずつ動いて、


 グググググ


 も、もう少し、


 グッ、クワッ!


 ついた!


「はあ……はあ……か、勝った、僕の勝ちだね、篠宮さん」


 やった。

 何とか篠宮さんをねじ伏せた。

 やったよ、僕の勝ちだ。


「あーあ、負けちゃった。流石に勝てないか」


 つ、疲れた。

 まさかここまでギリギリだなんて。

 でもこれで、僕の威厳は守られた。


「はあ、良かった……」


 そして、これから篠宮さんは、僕の言いな──


「──じゃ、次が本番だね」


 スッ


 えっ……?


「冬木くんとなら良い勝負ができそうだよ。フフフッ……」


 こ、この余裕は……


 ゴゴゴゴゴ……



 まさか、右利き⁉

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