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06 滞在


「少し前にケルミシュの村長が代替わりした」

「新しい村長は、金勘定しか興味が無いバカ息子だ」

「この味のままの乾麺のそばを作って冒険者に売りさばけ、なんて阿呆なこと言ってきたから叩き出したら、干された」


 あー、阿呆極まれりですね、自分で調理したことなんて無い、まさに箸より重いものは持ったことのないバカ息子なんだろうな。


 このそばは、親父さんの腕前と地元の旬の食材、どちらが欠けてもダメでしょ。



「村のみんなも心配してくれてるんだがな」

「村長の権限が強いことが裏目に出た」


 権限?



「"魔灸の森"と共に暮らすってことは、生半可じゃねえ」

「村をまとめ上げて団結させるには、リーダーに強い権限が必要だった」

「前の村長は上手いことやってくれてたんだがな」

「上に立つ者としての勉強をさせるってんで、息子を王都の学校に行かせたんだよ」

「村のためにそこまで頑張ってくれたってみんな喜んでたんだが、肝心の息子は帰ってきたらあのザマだ」

「都会かぶれの頭でっかち、いっちょ上がりだったよ」

「お利口さんなインテリ坊っちゃんは、俺らの言うことなんざ聞きもしねえ」


 前の村長さん、いや、父親は何も出来なかったのですか。



「あっちの学校で書類いじりだけはしっかり勉強してきたんだろうな」

「あっという間に親父を引退させて入れ替わったよ」

「違法性の無い正式な手続きとやらで、今さらどうにも出来ん」

「それからは、やりたい放題だ」

「ご丁寧に、村の積み立て金まで使って身辺警護の用心棒先生を雇ったよ」

「悪知恵だけは一人前の強権村長が腕っこきの用心棒に守られてるんだ、もう手がつけらんねえよ」


 巡回司法官に訴えてみては?



「アレの言い分は、数字の上では間違っちゃいねえ」

「お役人が来ても、山盛りの書類を見せられて終わりだろうな」

「でもな、村人の所得増だけが村の利益じゃねえだろ」

「狩人や農家、もちろん飯屋にだってベテランの矜持ってもんがある」

「実際に動いてきたヤツらにしか分からない、汗水垂らして経験してきた財産がな」

「あのバカ息子は、自分の頭では理解出来ないことがあるってことを理解出来ねえ」

「まさに、お話しにならねえってこった」


 八方塞がり……



「そもそも今のところは俺が干されてるだけなんで、巡回司法官に泣きつくわけにもいかねえっての」

「ここを離れてイチからやり直しってのもアレだし、意地だけは張らせてもらうぜ」


 俺にも、なにか出来ないですかね。

 


「いいって、俺のそばを美味そうに食ってくれるだけで満足だよ」

「この村にいる間だけでも、味わってくれればいい」


 ありがとうございます。


 こんな時に恐縮ですが、いい感じの宿とかを紹介してもらえると嬉しいです。



「なんならうちに泊まるか?」

「3食そばになるけどな」


 それって贅沢すぎますよ。


 冒険者のノアルです。


 しばらくお世話になります。


 腕っぷしはからっきしだけど採取はそこそこ出来ますので、おみやげ期待してください。



「おう、よろしくな」

「コリショーっていう、冒険者上がりのそば屋の親父だ」

「ここは元々宿屋だったんで部屋だけは余ってるから、2階の空いてる部屋を好きに使え」

「トイレも風呂も部屋についてるし、鍛錬したかったら裏庭で素振りでもしてくれ」

「まだ日は高いが、今日はこれから出かけるのか」


 ちょっとギルドを覗いてきます。


 暗くなるまでには戻りますね。



「例のバカ息子は、やたらと強そうな用心棒がべったりだからすぐに分かる」

「近づくんじゃねえぞ」



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