04 告白
街道から少し外れた原っぱで、夜営の準備。
周辺警戒の方は『アンチ』の結界にお任せでも大丈夫とのことで、
男ふたりは、わやわやしながら夕食作り。
「ゴメンね、いっつも作ってもらう側だったんで、料理の腕前はこんな感じなの」
「そういうのもひっくるめて、ひとり旅の修行中なんだよね」
いえいえ俺の方こそ、ずっとソロ冒険者やってるのに、こんな感じで。
「まあ、発展途上の男飯ってことで」
「俺たちの闘いはこれからだっ、てヤツだよね」
ですよね、今がコレなら、この先は良くなる一方ですから。
「だよね、前向きがイチバン!」
「それじゃ、いただきましょ」
はい、いただきます。
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よく"本当に美味いもんを食うと、人は無口になる"、なんて言うけどさ、
アレなもん食った時だって無口になりますから。
ちょっと微妙な空気の中、後片付けを終えて焚き火の前で食後のお茶を一服していると、
ご主人がしんみり話し始めた。
「さっきも言ったけど、俺って子供の頃からメイドさんとふたりで旅暮らしの行商人してたのね」
「それでさ、最近ようやく一人前っぽくなれたし、そろそろ腰を落ち着けようかな、なんて思ったわけ」
「たださ、今までずっと頼りっきりだったの、旅の護衛も生活全般も」
「うちのメイドさんってスッゴいの、ハンパ無く強いし、めっちゃ綺麗だし、すげえ優しいし、何だって完璧に出来ちゃう」
「ホントは俺なんかとじゃ釣り合わないんだけどさ、惚れちゃったらしょうがないじゃん」
「あー、さっきは嫁とか言っちゃったけど、ホントはプロポーズもまだなの、見栄を張ったみたいでみっともないんだけど」
「でさ、今は『アンチ』のおかげで護衛の心配が無くなったんで、ひとり旅の修行中」
「これで一人前の旅商人としてやっていけることが証明出来たら、プロポーズしちゃおうかなって」
……頑張ってください、プロポーズ。
「ありがと、ノアルさん」
「それでさ、気が早いかもしんないけど、子供のためにも落ち着いて暮らせる場所が必要かなって、王都で家を借りたの」
「子供が旅暮らしで引っ張り回される苦労は、誰よりも身に染みてるからね」
生まれる前から子煩悩、良いパパさんになれそうですね。
「よしてよ、パパどころか、まだ旦那でもないんだから」
「形から入るみたいで申し訳ないんだけど、まずは一家のあるじしちゃおうかなってことで」
「倉庫のおまけに住む所がくっ付いてますみたいなアレな物件なんだけど、場所だけはそこそこ良いところなんだよね」
「王都噴水広場から歩いてすぐなんで、あの辺の商店街のおばちゃんとかに聞けば教えてくれるから」
王都に立ち寄った際は、よろしくです。
その時はきっと、らぶらぶな新婚さん、ですね。
「そうなれるよう頑張っちゃうよ」
ゴーレムの件も、旅先で何か分かったら速達鳥で連絡しますね。
「ありがとね、でもそのために無茶な冒険だけはしないでね」
はい、いつも通り安全第一で行きますから。
でも、ゴーレムの素体ですか。
"核"無しの身体だけって、完動美品はいくらぐらいするのかな。
「王都の魔導具屋で探してもらったんだけど、なんかゴーレム界の最近のトレンドは小型化らしくて、『アンチ』が入れるような大型ボディは今はあまり出回ってないんだって」
「相場が上がってるから、ぼったくられないよう注意しろ、って言われちゃったよ」
「まあ、新品でも中古でも、『アンチ』が納得できるボディが見つかればいいんだけどさ」
そういう大型ゴーレムって、所有の際に国の許可が必要になりそうですよね。
「軍で魔導工兵が使ってるような武装可能なゴツいのは許可が降りないけど、民間の土木工事用なら許可取るのは難しく無いって聞いたよ」
本体の入手と許可の取得、何よりも『アンチ』さんに気に入ってもらえるボディであること、ですね。
「最近造られたのじゃなくても、その辺のダンジョンで放置されてるような古いのでもいいんだけどさ」
「ホントは『アンチ』と相談しながら、腕自慢のゴーレム職人にカッコいいのをオーダーメイドしたいんだけどね」
えーと、話しをまとめると、候補はみっつ、かな。
土木工事用の大型ゴーレム、
ダンジョンとかに落ちてる所有者不明の素体、
後は、ゴーレム職人のオーダーメイド。
なるほど、なんだかなんとかなりそうな気がしてきました。
男ふたり、焚き火を囲んでのよもやま話し。
ひとり旅も気楽でいいけど、こんな感じで気の合う仲間とのぶらり旅っていうのも、いいかもね。




