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03 よもやま


 今は、エルサニア王国南端の国境の街、オーバンを目指してる。


 エルサニアの南端に接するキルヴァニア王国は獣人の国。


 獣人といえばご存知、ケモミミケモしっぽ。


 エルサニア王都でも獣人さんたちには会えたけど、残念ながらモフらせてくれるほど親しくはなれなかった。


 ならば、可能性を求めて本場目指してまっしぐら。


 それこそが正しいのんき人生の在り方、だよね。



 ---



 エルサニア王都からケルミシュ村までの馬車を確保。


 そこからなら、国境にあるオーバンの街まで徒歩で数日の距離。



 屋台の飲み屋で一緒に飲んだ気のいいお兄さんが幌馬車持ちの旅商人で、


 南に用事があるのでついでだから乗ってく? って誘ってくれた。


 護衛無しのひとり旅と聞いて、正直ちょっと迷ったけど、


 なんて言いますか、信用が心配を上回った、かな。



 人間関係でごく稀にある、初対面なのにすごくしっくりくるあの感じ。


 やっぱり、あっちの世界もこっちの世界も関係無いよね、


 一期一会な出会い。


 

 ---



 というわけで、御者してるお兄さんの隣で、よもやま話ししながらの幌馬車旅。


 今のところとても順調で、申し訳ないくらいに快適。


 何より、お兄さんとのおしゃべりがとても楽しい。




「ノアルさんの気持ち、スゴく良く分かっちゃうね」

「いいよね、ケモミミ」


 ですよね、ご主人。


 人族の男性は抗えないですよね、ケモミミの魅力。


 ご主人は経験済みですか、ケモミミモフモフ。



「俺は嫁さんひと筋だから」

「どんなにイカしたケモミミよりも、うちの嫁さんの可愛らしいお耳」

「これは絶対に譲れないね」


 素晴らしいです、愛妻一途。


 羨ましい限りです。



「うん、我ながらベタ惚れ」

「仕事柄、あちこちの国でいろんな美人さんに会えるけど、うちの嫁さんが最強」

「いや、ホントマジで」


 三国一の奥様と、護衛無しで行商出来る凄腕商人、お似合いです。



「えーと、悪いけど凄腕じゃないの、俺」

「腕っぷしはからっきしだけど、たまたま凄い魔導具を持ってるってだけでさ」

「まあ、おかげで護衛要らずでも大丈夫なんで、幌馬車旅の方は安心して」


 ありがとうございます。


 ケルミシュ村まで安全に馬車の旅が出来るなんて、本当にありがたいです。



「普通は高いよね、まともな護衛を雇ってる馬車」

「まあ、そこをケチると命をアレしちゃうんだけどさ」

「ちなみに、うちの警備魔導具は、アレ」


 そこに置いてある、そこそこ立派なスイカくらいの、銀色の球、ですね。



「俺の親父も旅商人でさ、あちこち旅しながら変なモンを売ったり買ったりしてたわけ」

「親父と、子供の俺と、メイドさんでの三人旅」

「そしたら、ダメ親父が旅先でコロッと逝っちゃったのね、俺たちふたりを残して」

「それからは親父が残したモンを売りながらの行商人修行の旅暮らしだったけど、商売人としてのまともな引き継ぎなんて無かったからえらい目にあったよ」

「親父が残した商品倉庫用のデカいマジックバッグの中身は、しょうもないガラクタだったり、とんでもないお宝だったり」

「今も使い道すらわからんブツがゴロゴロあるんだけど、最近見つけたのが、その銀の球」

「知り合いにスゴい『鑑定』が出来る人がいるんだけど、その人がいろいろ教えてくれたのね」

「『アンチ』っていうの、その球」

「簡単に言うと、めっちゃ芸達者な結界、かな」

「『アンチ』にご主人様って認めてもらえると、がっつり守護してくれるのね」


 えーと、ご主人様?



「元々はデッカいゴーレムの"核"だったそうなの」

「で、いろいろあって"核"だけになっちゃったのね」

「長いことヒマしてるうちに、本来は身体を動かすのに使ってた魔力で、いろんなことが出来るようになったんだって」

「で、今は結界を張ってもらってるのね、ご主人様を害する者は近付けさせない、みたいな」


 なんだか凄く重要なことを聞いちゃった気がしますけど、


 俺なんかにそこまで話して大丈夫なんですか。



「うん全然平気、もしノアルさんが悪いこと考えてたら、とっくに結界から弾かれてるし」

「旅先で商談するときも重宝してるの、なんせ誰であろうと、ちょっとでも悪だくみした途端に結界の外にスポンって吹っ飛ばされちゃうから」

「ホントいい子だから、早く身体を見つけてあげないとね」


 身体って、もしかしてゴーレム本体ですか。



「そう、それが『アンチ』との約束」

「ってことで、いい感じのゴーレムの素体を探してるんで、ノアルさんも旅先でなんか情報を手に入れたら教えてね」


 分かりました、ご自宅はエルサニア王都ですよね。



「あー、自宅っていうか、まだ倉庫みたいなもんなんだけどね」


 ?



「えーと、ちょっとアレな話しなんだけど、後で聞いてくれる?」


 はい。



「おっと、話し込んでたらもうこんな時間だよ」

「そろそろ今日の夜営の準備、始めなきゃね」


 楽しい時間はあっという間ですね。




 そんな感じの、幌馬車ふたり旅。


 類は友を呼ぶのかな、なんだか凄くのんき旅ですよ。



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