17 秘密
えーと、なんだろね、このカオスな状況。
メタボ亭は犯罪者の巣窟でしたよ。
俺の広範囲『鑑定』に引っかかったのは、客室を覗ける隠し部屋に潜んでいたメタボなおっさんと、やたらと偉そうな方々たち。
それを伝えた途端、激怒したマーリエラさんが連中を実力行使で制圧、捕縛。
すぐに司法省に通報、『転送』魔法ですっ飛んできた大部隊による大捕物 (?)の末、宿の従業員も一網打尽。
ってか、宿ぐるみの犯罪者集団だったのね。
「今回の件は、潜入捜査による現行犯逮捕です」
「決して不道徳な行動からの偶然の産物ではないのです」
はい、お手柄でしたね。
それはそれとして、マーリエラさんが正気に戻って良かったです。
戻ったらいろいろ思い出して、諸々恥ずかしくなっちゃったみたいですが。
ですよね、流石にさっきまでのマーリエラさんは、アレ過ぎましたよね。
「いじわる……」
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あの覗き魔のメタボなおっさんこそが、この宿のオーナーにして犯罪者集団の元締め。
ってか、ドロップアウトした召喚者でしたよ。
俺と同じように勇者候補として召喚されたけど、固有スキル『消臭』は間違い無く戦闘向きじゃないので、すぐに戦力外通告されて追放されたそうで。
最初は俺みたいに日銭を稼ぐ地道な暮らしをしていたそうだけど、あっちの世界でのラブホ勤めの経験を活かして宿で住み込みの仕事を始めたら、当時のオーナーからえらく気に入られちゃったらしくて。
いろいろ相談されて宿の改装を繰り返してるうちに、ソッチ方面でイケてる宿だって評判になっちゃったそうで。
コリショーさんが旅商人から聞いた評判の宿っていう噂も、その頃のことなんだろうね。
そこまでは真面目にラブホもどきの経営をしていたみたいだけど、メタボ召喚者さんが前オーナーから宿を引き継いでから、残念ながら道を踏み外しちゃったようで。
ソッチ方面で大盛況なことを、もっと金儲けに活かせないかってアレなお貴族さまからそそのかされたんだって。
結局、始めたのは、趣味を同じくする同好の士を集めた会員制の秘密クラブ。
ちなみに、会員の皆さまの共通したご趣味は"覗き"
ラブホちっくに大盛況な宿の隠し部屋で、思う存分に性癖を開放しましょう、だってさ。
いかにこっちの世界とはいえ流石にバレたら人生終了なので、秘密を守れるよう、メンバーは地位や財力で厳選された方々のみ。
会員であること自体が口止め効果抜群の足かせになるので、皆さん命懸けで秘密厳守。
「かなり地位の高い方々もいらしたようですね」
「今回の捕縛部隊の指揮をとった直属の上司が頭を抱えていました」
あー、ヤバいね、それ。
地位の高さイコール権力の強さ。
俺、かなり危険かも。
「私の全てを懸けて、全力でお守りします」
えーと、確かに俺はヨワヨワだけど、マーリエラさんの陰に隠れてのほほんしてられるほどへなちょこじゃないですよ。
「つまりこれからは、一蓮托生で生涯離れられない、命を預け合う間柄、ですね」
あー、調子が戻ってきたみたいで何よりです。
"恥じらい"を忘れない程度に頑張ってください。
「いじわる……」




