16 ご宿泊
無事にメタボ亭にたどり着けましたよ。
道案内ありがとね、坊や。
「うん、今度会った時は、坊やじゃなくてヴォルって呼んでね」
「それじゃ、串焼きごちそうさまっ、お幸せにっ」
おう、串焼き落っことさないよう気を付けて帰れよっ。
---
うん、なるほど、こりゃ子宝の宿ですわ。
間違い無く企画・設計に携わったのは召喚者だよね、この宿。
あっちの世界のラブホっぽいモチーフがてんこ盛りですよ。
どうします、マーリエラさん。
俺は今すぐ退散したいのですが。
「いろいろと勉強になります……」
そんな隅々までチェックしないでくださいよぅ。
俺としては、この場の雰囲気で流されるままにってのは嫌なのですが。
「つまり?」
ふたりの関係がこの先どうなるかは分かりませんが、俺としては末永くお付き合いしたいと思ってるわけです。
だから、雰囲気とか勢いじゃなくて、もっといろいろと大事に積み重ねていきたいなって。
「分かりました」
「本当の家族になるためのけじめ、ですね」
「でも、せっかくですのであの立派なお風呂だけでも……」
本当に立派ですよね、
豪華なお風呂が、全面ガラス張りのおかげでここからも丸見え……
「覗きというのは隠されている部分をこっそりと覗き見ようとするからこそ覗きなのです」
「つまり、元々ガラス張りで丸見えなのですから、この場合はどんなに見られても覗き見ではありません」
「むしろ堂々と入浴すれば良いのです」
ちょっとマーリエラさん、歳頃の娘さんにとって最も大切な要素をお忘れですよ。
乙女が"恥じらい"を失ってはいけません。
おかしいな、確かにマーリエラさんはそっち方面に積極的でしたが、羞恥心を棚上げしておっぴろげるような娘さんでは無かったはず。
ってか、本当おかしいよ、この部屋に来てから。
マーリエラさんの眼差しが、"ねこにまたたび"
いや、"ざらめ蟹に節目ツタ"だな、これ。
よし、いまさらだけど広範囲『鑑定』を。




