11 お約束
街道を少し外れた場所にある原っぱで休憩中。
『鑑定』のおかげで不用意に灯りをつけなくても平気。
月明かりの下での夜食、乙なもんですな。
それでは、いただきます、コリショーさん。
塩おにぎり、うめぇ!
なんすか、この絶妙な塩加減。
ざらめ蟹の佃煮との相性抜群ですよっ。
濃いめのお茶で口をスッキリさせたら、
もみじわさびの茎の浅漬けで箸休め。
うひょっ、贅沢すぎるでしょ、これ。
いいお婿さんになれますよ、コリショーさん。
……おっと、幸せに浸ってる場合じゃないね、
どうやらお客さんですよ。
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あー、アイツだよ、例のバカ息子の用心棒。
俺の広範囲『鑑定』にも気付かれずに尾行してきた気配の消し方、相当の手練れだね、あの人。
「どうやって気付いた?」
殺意とかは鍛錬で抑え込めるみたいだけど、
もっと本能に根ざした感情は隠せないみたいだね、空腹感とか。
おにぎり、めっちゃ美味そうだったでしょ。
「やはり只者じゃなかったな」
いえいえ、ただのおっさん冒険者ですから。
荒事に巻き込まれないように探知能力を磨いてきただけですから。
「確実に、との雇い主からの厳命だから悪く思うな」
確実にナニすんだよ。
おっと、短槍ですか。
突いて良し、斬って良し、投げて良し、
三拍子揃った厄介な武装ですよね、それ。
「徒手格闘、か」
えーと、確かに徒手だけど、格闘大好きってわけじゃないですよ。
むしろ、危なくて武器なんか持てないからやむを得ず、って感じで。
「それでは、参る」
問答無用ですか、参ったね、こりゃ。
久々に"スイッチ"、入れますか。




