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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
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実録 個人Vtuber界から逃げてきた男 下半身で会話するVtuberの生態

作者: 月林檎

 個人Vtuber界隈とは魑魅魍魎が蔓延る魔界だが、実際にその世界に飛び込んでみると思いのほか楽しかった。


 Vtuberなんてものは設定こそあれ実際にロールプレイの必要なんてほぼない。素の自分のままゲーム配信を垂れ流し、一人でやるのが寂しくなったらTwitterなどで仲間を募ればいい。


 案外簡単にコラボ相手は見つかる。


 少なくともプロフィールに『反ワク』だの『フェミニスト』だのといった意図的に見える起爆剤を埋め込んだりしていなければ大抵友達の一人や二人はできる。


 私も実際にVtuberをはじめてみたが、朝一番にTwitterで『おはようVtuber』なる闇の呪文を唱えれば大抵フォロワーの誰かしらかがいいねないしコメントを残してくれる。


 Vtuber界隈は横のつながりが物凄く強い。


 適当にTwitterをフォローすれば高確率でフォロバされ、毎日のようにバンバンとDMで宣伝メールがくる。チャンネル登録お願いしますといったド直球なものからコラボしませんかといったお誘いまで多種多彩だ。チン凸もあれば何故か自画像らしきものを添えて2次元と3次元の壁を越えようとしてくる猛者もいる。


 そんなこんなで私はVtuberの世界に足を踏み入れた。

 

 いや、正確には私たちだ。

 

 特定を防ぐ為に名前は伏せるが、私はとあるソシャゲグループで仲良くなった人たちと『Vtuberやってスパチャで儲けない?』みたいな物凄く軽いノリでVtuberを始めようとした。

 

 いや本当にそんな感じのその場の勢いだった。

 

 ガワはどうしたのかといえば、全員自分で描いた。

 

 どんな偶然かそのグループの人達は自分も含めて全員がある程度絵に精通していたのだ。

 

 全員が自身のキャラをデザインし、独学でライブ2Dで絵を動かすところまで各々進めた。一番絵が下手だった私はところどころ手伝って貰ったりもしたが最終的にはそれなりにちゃんとしたらデザインの、それこそリアルの自分とは似ても似つかない重力系の呪術でも使いそうなイケメンを完成させることができた。

 

 突然だがメンバーは私以外全員女性だった。

 

 突然だがメンバーの一人は私と男女として深い仲だった。

 

 突然だがメンバーの一人は高校生だった。

 

 どうだろう、ストレッチパワーが、いや不穏な空気がぷんぷん漂ってきただろう。

 

 その予感は概ね正しい。

 

 私は冷静沈着な男だった。冷静沈着な男のはずだったのだがその中の一人の女性と深い関係になってしまい、そのことが高校生の子にバレたおかげでまずその子がメンバーから脱退した。


 別にその子が私に好意を抱いていたとかそういう事ではない。そういう経験のなかった高校生の子には同じグループの男女が自分の素知らぬ場所でそういう関係になっていたのがショックだったのだろう。


 次にもう一人、大学生の女性が脱退した。


 この人に関しては紆余曲折があった。私と大学生の女性との間でVtuberとしての活動方針に方向性の違いを感じ、軽く言い争いみたいな事になったことがあった。しかしそこで自分と深い関係にあった女性(以下深子とする)が私側につき、結果その大学生の女性もグループから脱退することになってしまった。


 私の立ち位置は完膚なきまでにサークルクラッシャーである。

 

 そんなこんなで結果的に残ったのは私と深子だけとなった。

 

 まぁ、仕方ない。

 

 仕方なくはないのだが、時すでに遅しだ。とりあえずVtuberとしてのアカウントもチャンネルも作った事だし、二人でやっていこう。それぞれ好きにコミュニティを作り、好き勝手やってみようという緩い考えの下、私たち二人はVtuverとして闇の世界に足を踏み入れる事となった。

 

 まず深子がチン凸百裂拳をお見舞いされた。

 

 まぁ、仕方ない。

 

 仕方なくはないのだが、どこの世界にも性欲に支配された闇の住人達は存在する。更に言うと私と深子は別に付き合っている訳ではなかった。今考えてみると、深い関係だったのに付き合っている訳ではないというよこしま100%な部分が先刻登場した高校生の子の逆鱗に触れたのかもしれない。

 

 そんなこんなで深子は雨にも風にもチン凸の嵐にも負けることなくVtuberとして少しずつ活動の幅を広げていった。

 

 私も自分なりにコミュニティを広げ、今度は異性関係でトラブルにならないよう男のVtuberにチン凸、いや普通に絡んで友達の輪を広げていった。

 

 しかしどんな因果律が働いたのか、気づけば私は他のVtuberと付き合う流れとなった。

 

 そして深子にも気づいたら他のVtuberの彼氏ができていた。

 

 すべてのVtuberの名誉の為に言わせていただくがVtuberとは決して下半身で会話する如何わしいコミュニティツールではない。

 

 だが、ソシャゲ、アニメ漫画、イラスト、コスプレと様々なオタク界隈を渡り歩いてきた私から見てもVtuber界は出会いがとても多く感じる。

 

 これは配信を通じて仲良くなったり、コラボという低の良いお誘い文句のおかげで男女間の壁をとっぱらいやすいという理由があるのだろう。実際コラボ配信の前と後に大抵そのままディスコードでくっちゃべってる事も多い。

 

 深子は半年のうちに5人の男Vに告られたと言っていたが、全Vtuberの名誉の為に言う事は特に何もない。

 

 男はそういう生き物だ。

 

 一度でも話せば勝手に好きになる男、

 

 一度でもコラボすれば勝手に好きになる男、

 

 一度でも相互フォロワーになれば好きになる男、

 

 一度でも視界に入れば好きになる男、

 

 そんな性属性に特化したバカチンが世の中にはたくさんいる。

 

 深子が彼氏を作った理由も、ほかの男Vにストーカーされ、どしたん話聞こうか?としゃしゃり出た男と通話してる内に気づいたら彼氏になっていたとの事である。

 

 しかし、話を聞いてみたところ、どうやらそのどしたん話聞こうか系男子もやばいメンヘラストーカーだったらしい。毎日の通話拘束は当たり前。過去に付き合った男の人数と名前を何故か執拗に聞きだし、挙句の果てには『そいつら全員殺してやりたい』とタイムトラベラーになってはいけない人物日本代表みたいなことまでほざきだす。

 

 Vtuber界の男は私も含めてどれだけの特級呪霊が潜んでいるのだろう。

 

 そして審判の日がやってくる。

 

 深子は彼氏に私の事は話していないと言っていたが、その彼氏からある日突然Twitterへフォローの通知がきた。

 

 そして私からのフォロバを待たず、その彼氏からDMの通知が来た。

 

 私は血の気が引いた。

 

 記憶の玉手箱をひっくり返す。深子は彼氏に私のことは話していないと言っていた。ならばこのDMはなんなのだろう。誤爆だろうか。宗教の勧誘だろうか。それともまさかチン凸なのだろうか。

 

 DMを開くか開かないか迷ったが、とりあえず深子に確認する事にした。 

 

 『ごめん、ちょっと喋っちゃった……』

 

 ごめんちょっと喋っちゃった。

 

 このちょっとというのは九分九厘の確率でほぼ全ての事を指すのだろう。全知全能の私にはわかる。全知全能でなくともわかる。

 

 私は恐る恐るDMを開いた。

 

 『少し話がしたいです』

 

 私はアカウントを消すことにした。

 

 別にVtuberに執着していた訳ではない。それなりに楽しかったし友人や彼女もできた。チャンネル登録者数は500前後をうろうろしていたが収益化可能な1000人まではまだまだ遠い。

 

 そろそろ潮時なのだろう。

 

 私はVtuberのアカウントを削除し、深子に許可を貰いその経緯を小説家になろうへ投稿する事にした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] Vtuberならではのキチガイが出てくるのかと思ったら 昔からあるニコ生とかで100じゃ聞かないレベルによくある程度の話だった。 [一言] 事実は小説よりも奇ちがいなりみたいな内容の狂…
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