あなたの気づいていない『ブロック』の意味
あるなろう作者さんのエッセイで、嫌いなユーザーをミュート&ブロックしたものの、どうやらそのことで自分が苦しんでおられるような内容のものを読んだ。
それは酔っ払っている時に書いたものらしく、お酒の勢いでなければ書けなかったのだろうと推察する。
しかし私はその方のエッセイを読んで、気になるところがあった。
その方は、嫌いなユーザーとの関わり方は、交流するか、ブロック&ミュートするかの二択しかないと思われているようなのである。
好きになれないものはスルーしろとはよく言われることである。
好きになれない、嫌い、あるいはうざいと思うものには関わらず、スルーするのが正しい、と。
掲示板などでも『荒らしはスルーしましょう』とはよく言われることだ。関わると場が荒れるので、放置すべきである、と。
前述の作者さんの選択にはそれがないと思ったのである。
私なら、たとえば荒らしレベルの感想を作品にいただいたら、スルーする。返信しない。あるいは「はいはい」とか「毎度お疲れさん」とか適当にあしらい、受け流すことだろう。
件の作者さんは心がとても優しい方なのだろうと私は思った。きっと優しすぎるから、自力でスルーすることができないのだ、と。荒らしから感想をもらってしまっても、きっと丁寧に返信してしまう方なのだ。それでへとへとに疲れてしまう。もちろんあくまで私の想像だが。
そんなところに、なろうのシステムが変わり、ブロック&ミュートが面倒な手順を踏む必要なくボタン一発でできるようになった。これを幸いに思い、それを便利な『自動スルー装置』のように使われているのではないか。
つまり、ブロック&ミュートすることで、スルーしているつもりでおられるのではないか。
スルーとは何か?
『受け流す』ことである。
相手を好きにさせながらも、相手にしないこと、見てやらないこと、返事もしないこと、ではないだろうか?
それならばミュートは間違いなくそれである。ミュート機能を使うとは、自分の労力を使うことなく、嫌な相手の書き込みを受け流すことだ。ミュート=スルーであることに異論のある方はおそらくいないであろう。
では、ブロックは?
ブロック=スルーであろうか?
これは明らかに『否』である、と言える。
なぜならばブロックとは防御のことであり、受け流すことなく、相手と闘ってしまっているからだ。
ここで『受け流す形の防御もあるだろ』と言われるかもしれないので、喩え話をしよう。
魔法に喩えれば、ミュートは相手を消してしまう魔法である。自分で「はいはい」「お疲れさん」とかなどとあしらう場合も、相手にしないことでかわしているのだ。闘わなくてもいいように、相手を消してしまい、闘いを回避するのだ。
同じく魔法に喩えれば、ブロックとは、相手に何も出来なくさせてしまう魔法である。相手はこの魔法にかかると動きを封じられ、何も言わせてすらもらえない状態にされる。前述のミュートが闘わないための魔法なら、こちらは防御魔法あるいは補助魔法であり、それは闘うための魔法なのである。
ミュートの意味は『おまえが嫌い』『うざい』『見たくない』といったところであろうか。そしてミュートの場合、その声は相手には聞こえない。ゆえに闘いは起こらない。元々闘う気などないのだから当たり前だ。嫌いなものとわざわざ争いを起こしたくないために、好きになれないものはスルーするのだから。
感想欄などでもし「あなたのことが嫌いなのでミュートさせていただきます」と言ってる人を見たら、その人はおかしい。そんな宣告をした時点でスルーできていないということになるからだ。トンチンカンである。
ブロックの意味は色々あるだろう。
しかし、これだけは言えることとして、「あなたのことが嫌いなのでブロックさせていただきます」と宣告することは何らおかしくない。なぜか? それはブロックとはミュートと違って、防御であるとともに拒絶の意思の表明、敵意表明であるからだ。
本来的な使い方としては、嫌いな相手にはミュートをするものであろう。好きになれないものは基本的に関わらないほうがいい、スルーすべきなのだから。
ブロックは本来的には悪質ユーザーから身を守るためのものではないだろうか。あるいはストーカーなど実害あるものを壁のむこうに追いやって何もできなくしてやるためのものであろう。
中には特定のなろう作者のことが好きすぎて、その人からメッセージなんて貰っちゃったらあまりの嬉しさに失神してしまうからブロックしている女の子なんかももしかしたらいるかもしれない。話しかけないでほしい、それでミュートではその作者のことが見えなくなっちゃうからという理由でブロック機能を使ってるんだよぉ~と言いたいかもしれないが、ブロックされた相手からはそんな理由などわかりようもなく、同じようにとられるだけである。
ブロックされた側が、ブロックされていることに気づいた時に思うのは、その理由に関わらず次のようなものであろう。
『拒絶されている!』
『敵意を表明されてしまった』
『悪質ユーザーとして見られているようだ』
『なぜ!?』
ほんとうに、嫌い程度じゃ済まないぐらいに、拒絶している意思を伝えたいのなら、闘いたいのなら、ブロックするのは間違いではないと思う。相手も悪質ユーザー扱いされて黙ってはいないだろうから。
しかし、嫌い程度のものならば、ミュートだけにしておくべきだろう。嫌いなものはやはりスルーするのが正しいのであり、嫌いなものにわざわざ敵意表明をして、無駄なトラブルの元にする必要はない。
とにかく『ブロック=スルー』のような間違った認識がされているように感じたので、このようなエッセイを書いてみた。ブロックは敵意表明であり、スルーしたいのならミュートだけを使うべきである。でなければこの二つが分かれてある意味がない。
本文中に「あなたのことが嫌いなのでブロックさせていただきます」と宣告することは何らおかしくない。と書いたが、これは『攻撃しているつもりなのならおかしくない』という意味である。スルーしているつもりでそんなことを言うのなら、やはりおかしい。