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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2022――
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66/205

仮題『鬱』/『別世界』/『お先に』

きぃ、きぃ、わう、わう。

今、何見てるの?

仮題『鬱』


踊れ 踊れ 閑古鳥が鳴く前に

寂しい声を押し殺して 知られぬよう

仮面の下には 爛れた素顔

カボチャを刳り貫いて 知られぬよう


誰にも愛してもらわなくてもいいや

どうせ 枯れてゆくばかり

首まで沈んだ 沼の心地に

絞められた首 息が止まる



仮題『別世界』


6.1インチの窓の向こうに

並んだ令色の待機列を眺めて

下卑た唾液を垂れ流すことしか

哀れなあなたには できないのです


それを秩序と呼ぶのであれば

もはや殴打と切創だけが交流で

鈍痛を与えることでしか

わたしたちは わかり合えないのです



仮題『お先に』


弔いの言葉は もう結構です

紫色の道行きは 暖かに染まっていて

二度も三度も 環を描く小鳥が

息絶えるまで 寂しくはないのです


あなたが朝を忘れたのなら

わたしの記憶とともに 陽を刻んで

夜明けを共に見られるようにと

次の舞台に向かいましょう


生まれ変わったら、また死のう。

次の死を尊ぶために、また次を精一杯に生きよう、ね。

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