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仮題『一つずつ』/『君の隣で』/『恋情』
正直者が馬鹿を見るんだよ。
はあ、いつから待ってたの?
仮題『一つずつ』
確かな実感が この手にはあった
取り巻く声も 通帳の額も
羨みや僻みの視線だって
飽きるほどには 増えていたのに
たった一度で失うなんて
築いた城が 砂山になるなんて
誰も教えてはくれなかった
そう言って 彼の首は落とされた
仮題『君の隣で』
一緒にある公だなんて確かな実感が この手にはあった
取り巻く声も 通帳の額も
羨みや僻みの視線だって
飽きるほどには 増えていたのに
たった一度で失うなんて
築いた城が 砂山になるなんて
誰も教えてはくれなかった
そう言って 彼の首は落とされた
仮題『君の隣で』
一緒に歩こうだなんて 思わない
まだらの空から 鉄の雨が降り
縛られた傘は 一つしかないから
わたしは 手放してくれて構わない
それでも どうか 指の骨ひとつ
それだけでもいいから
哀れに死にゆくわたしの欠片を
あなたのそばに 置いてください
仮題『恋情』
羊の鳴き声が聞こえていた
葬列に並んだわたしはずっと
緩慢に死に続けていたのだと
白黒の世界を悔いていた
渇いたネオンテトラの目玉を
愛おしげに見つめるあなたの
輪郭に色彩がまとわりつくのを
寂しいままで 眺めていた
名前をつけよう、アルビレオ。




