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仮題『林檎』/『祝福』
終わる頃にまた教えてよ。
『林檎』
寒暖を林檎に例えた
それが色を指しているのだと
知ったのは葬儀の後だった
地球の自転と太陽のように
或いは 熱された白身のように
人は漸次 終わってゆく
赤みの差したその道行きが
せめて 安らかにあらんことを
『祝福』
それは瑪瑙の詰まった袋でした
腸壁の厚みを感じたのです
繊毛が蠢く感触だけが
ただ 私の目を醒ましていたのです
それを命と呼ぶには
あまりに言語化不能な『未満』で
ただ 浅ましき娼婦の泣き声を
堊筆でなぞるばかりであったのです
いつか上げるであろう産声を
ただ 喘ぎ 窒息させていたのです
お誕生日おめでとう。