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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2022――
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32/205

仮題『1回』/『仮初』

ほら、やってみるといいよ。

仮題『1回』


欲しかったのは 覗き込めないもの

数字ですらない はじまりを

在るものに変えてしまうような

生々しく ざらついた手触り


際限のない 不可の壁に

何度も手を着いては 力を込め

一念が穿(うが)つ 孔の向こうに

憧憬を探して 翻る



仮題『仮初』


確かに 手を取ったはずだったの

触れた肌の滑らかさも

パレットの上の体温も

細胞のひとつひとつに刻んでいたのに


(まぶた)の外の世界は ひどく吝嗇(りんしょく)

水晶の欠片さえも許してくれなくて

風が吹き溜まるキッチンの中

涙の痕だけが あなたを覚えている

それじゃ、おやすみ。

また夢で、ね。

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