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仮題『愛』/『星空』
それを伝えられなかったのです。
『愛』
与えられずに受け取るのは
どうにも受け入れられなかったのです
等価交換でなければならぬと
ただただ 信じていたのです
あなたに手を握られるたび
呵責の茨が 内腑を締め上げたのです
溢れた血のぬくもりこそを
私の情と 呼んでほしかったのです
『星空』
空を海に例えたのは 誰なのだろうか
或いは 地球すらも宙船であるのなら
深い深い藍の海を泳ぐ鯨は
いつか ほんとうのことを知るだろう
上天のさらに先 レグルスの先端
きみが縫い付けられた 隕鉄の星
体中の血液が冷えるのを感じながら
ただ 今日も結ぶのだ
星を結んで、物語ろうよ。