10/205
仮題『無言』/『無言-2』/『諦めない』
あなたも無口な道化なの。
そんなはずじゃなかったんだよ。
『無言』
見慣れた顔の亡い世界は
ずっと息がしやすかった
囁きも声も死んでしまって
肺に水が溜まっていたから
白む空に罅が入り
いつか 血の色が掠れるまでに
言葉を取り戻せたのなら
人魚姫は 海に還るでしょう
『無言-2』
それは柔らかく 冷たかった
胸は穏やかな上下を止め
瞳は天を睨み からりと渇いた
だらりと投げ出した手足と
ぽかんと 丸く開いた口
滴る色は 黒く変わり初め
次にあなたが覚醒めたら
ランドリーまで 行けるように
『諦めない』
それは呪いだった
いつまで逃げても肩を叩かれる
希釈された影法師のように
私の背を撫でるのだ
焦がすように 愛でるように
冷やすように 刳り抜くように
やがて彼岸に渡るまで
いつまでも縛り続けるのだ
もう、辞めちゃいなよ?