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仮題『蛇蝎』/『心中』
蛇だって空を夢見たんだ。
『蛇蝎』
仄明るい道を行く
往路は逆立ち 蛇の背か
尾から頭に抜ける生臭さが
幾重にも串を打ってゆく
あれは彼の墓標だという
彼を弔うのは 彼だけだった
今はだらしなく垂らした舌が
ただ しゃくりあげるばかりだ
『心中』
鳥の頭を喰らったのは
緑内障の瞳が おれを見つめていたから
その苦しみすらも胃液に溶かして
二度と会えなければよかったのだ
大切だとすら知らなければ
地獄への道も易かったのだ
いま おれの足は根を張って
凌遅の罰を受けているのだ
きみが大切だったんだ。