第九章(その夜)
その夜、予を偏頭痛が襲った。
うむ、痛い!いた、た、た、た。
昼間、強烈なものを見すぎて、身体が衝撃を受けてるみたいだのう。
なにせ、予はまだ8歳じゃもの。
と、とにかくこの痛みを止めんと。
いたい、いたい〜。
「ともえ、ともえ」
「はい、お拾い様、何でございましょう」
「予は頭が割れるように痛い。なんとかせい!」
「ああ、それは御可哀そう。直ちに」
そういうと、ともえちゃんは去っていった。
は、早くしてくれ〜。
予はもだえながら耐えておった。
ともえが戻ってきた、た、助かった〜
頭痛薬をくれるかと思いきや、彼女、予の頭に紫の鉢巻を巻きおった。
な、なんじゃこりゃ?予は問うた。
「頭痛薬はどうした?この鉢巻はなんじゃ?」
「お薬は、今どくだみを用意しておりますので、お待ちください。
この紫の鉢巻は邪気をはらい、痛みをやわらげまする」
だめだこりゃ。どくだみなんか飲みたくないぞ!
この時代に痛み止めの代わりになるのはないもんか?
うーむ、どんどん痛みが増してきたぞ。
考えろ、考えろ……
そうじゃ、確か、サルチル酸が柳の皮に含まれていると聞いたことがあるぞ。
サルチル酸といえば頭痛薬のアスピリンの主成分、これだ!
「ともえ、柳の皮じゃ」
「え?」
「柳の皮じゃ、何処にある?大量に、直ちに持ってこい!」
「柳なら、お城の堀のそばに生えておりますが?」
ともえは困惑しとるが、ええもう、辛抱たまらん!
「ただちに持ってこい!侍女たち全員でいけ!早く持ってきたものには、ほうびをやるぞ!」
「は、はい」
ともえはあわてて下がっていった。
予はもだえとる、もだえとる。
いつも、痛みには直ちに鎮痛薬を飲んでいた為、特に弱いのう、とほほほ。
いく時待ったであろうか、ガサガサと言う音と共に、天女の声、ともえじゃ!
「お拾い様、遅くなりました。柳の皮にございます」
差し出された柳の皮の束をむんずとつかみ、小刀を使って、皮の内側を切り取り、チューインガムの如く噛む、噛む。
延々と噛む。まずいが、味がしなくなったら再び新しいのと取替え、噛む。
すると、奇跡か、痛みが止まった……
良かった!
予は安堵と、疲労でそのまま眠りに落ちていった……