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続き

短いよ、ごめんね。

「飯ぞ、飯~~」

甲板に倒れこむ負傷者や、死者をものともせず、安宅の船内に入り込むおんぶ隊の者ども。

次々に米俵らしき物や、味噌、乾物らしきものを運び出し、孫一なんぞはもう干物らしき物を食うとる。

それを見た予は思う。

「ゴクリ」

そして叫ぶ。

「さっさとこちらにもってこんか!予は腹減っとるんじゃ!」

「ヘイ、ヘイ」

ヘラヘラしながら、食べ物は運び込まれ、わが船の上にて、一部の不運な監視兵を除き、

直ちに、宴会、ただし酒ぬきじゃ、が始まる。

干物、糒、漬物、味噌。

どれも味が濃く、普段なら食せぬもの成れど、うまい。

「う~ん、生き返る様じゃ」

「やはり、濁り酒だけでは生きていけぬの」

「や、拙者は毎回、濁り酒でもよいですぞ」

「ぬかせ、一番に干し魚にかじりついて孫一殿にぶん殴られたくせに」

「あれは非道ござる。しかも取り上げたもんを食ってござるし」

「ワハハ」

楽しそうじゃ、何も言うまい。というか、予も食うのに忙しい。



一刻ほど過ぎたころ、予、孫一、棄丸の三者会合が始まる。

この安宅をどうするかとか、ぶつかった勢いで銅板が緩み、船底で水漏れがしてる

とか。いやそれを言うならわれらの船も船首が壊れて穴が開いてるし、帆は穴だらけで

帆走りは無理であろう。それでは戦利船として持ち帰れぬのか、どこに持っていくんじゃ、

われらは江戸に潜入する秘密部隊じゃぞ。沈めるしかない。それより修理をせねば。

捕虜をどうする。え?捕虜なんか居ったんか、面倒じゃ、みな殺そう。

などなど。


そうこうしておると、突然、あたりが暗くなるはじめ、

「ドーン」「バリバリバリ」

電流が走った。

「雷神様じゃ!海が荒れる!」

「嵐じゃ~~~~」

水夫たちは驚き走り回り、おんぶ隊は茫然自失」

「しまった。見張りの者どもを呼び戻せ」

安宅におったものたちを戻し、とも綱を解き、嵐に備える。

ザザ~という音とともに大雨が落ちてきて横殴りの風が吹き、

波は大波となり、わが帆船はあおられ、もう無茶苦茶に揺れる。

沖へ、沖へと流される。

ふと、安宅を見ると、船首を下に海に突っ込んでいる。

これは沈没だな、明日は我が身か…

いや、死んでたまるかこんなところで。


「みな、何とかせい!予は死にたくないぞ」

「は、は~~」


皆は必死で動き回り、遭難に備える。

予は柱に括り付けられて様子を見守る。

船内はいやじゃ、まだここのほうが気楽である……酔うかも。

大波に乗り大きく上がり、また落ちてくる。

沖へ、沖へ。


これは海流に乗ってしまったか、黒潮…

うわ~太平洋に乗り出しちゃった、どうするんだこれ。



………………………



う~みは広いな大きいな~

本日はいい天気じゃ。

ぐるりを見てもすべて海、な~んもなし。

海鳥さえ居らん。

「遭難じゃのう」

「まことに、まことに」

うなづく、棄と孫の二人組。

「まあ、仕方なし、飯はあるから、当座は何とかなるか。水漏れは止まったか?」

「は、水漏れは止まり申したが、われらの水も止まりでござる」

ん?

「飲む水がないということか?」

「さようさよう。まだ飲み水を積み込んでおりませんでしたもので」

「干物は喉が渇きまする」

「ば、馬鹿もの!水がなければ死んでしまうわ!」


ど、どうしよう。二三人殺して、血と体液を絞り出すとか…

何を考えてるのだ、予は、さすがに無理だ。


……………


そうか、絞り出せばよいのだ、その手があったか!

「皆の者、直ちにとにかく魚を釣れい。それから、しょんべんは捨てる出ない!ためて、飲むのだ」

「くさい?なら死ぬがいい。いやなら、飲めい~~~」

「は!」


皆はどたばたと予に従い、行動する。


待つ間、貯めた自分の小水を飲む。

む、アンモニアくさいのう、だが自分のはかろうじて飲めるか。

「孫一のは飲みたくないのう」

「は?なんでござるか」

「いや、何でもない」


そうこうしているうちに幸運にも大量の魚が集まった。

すり鉢で魚をすりつぶし、きれいな木綿にて包み、力自慢の男たちが圧搾していく。


結構、魚の体液が集まった。

皆で平等に分け、こぼさぬように飲む。

「う、ちょっとさかなくさいのう」

「命あってのものだねでござるよ、小水よりうまいわ」

「それにつけても秀頼様にはありがたし」

「さよう、さよう」


ま、とりあえず危機は逃れたか。


早く島を見つけねばのう。








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