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起:ロボタクシー

「むむむ。早速来てみたはいいが……どこなんだここ」


 未来の世界の話をしていたのだ。きっと未来なんだろう。

 しかし周囲の景色は……思ったほどハイテク感はない。今の日本の田舎とあんまり変わらないぐらいだ。


「そうですね。ここは……恐らく、日本のどこかじゃないかなぁと」

「今回珍しく曖昧だね莉央(りお)ちゃん」

「過去と違って、はっきりした証拠自体ありませんからね。未来の風景って。

 ただひとつ、確実に言える事があります。今はちょうど2050年。この時代はまだ――私たちは生存してますね」


 莉央ちゃんの持ってるスマホが不思議なアラーム音を発する。ん? よく見るとデザインも変わっているような……

 アラーム音が鳴り止むと、いきなり俺たちの目の前に無人の車が現れ、ピタっと停止した。


「うおッ!? なんだこりゃいきなり!?」

「無人ロボタクシーです。私の脳波要請に応じ、手近の空いているタクシーが来てくれたのでしょう」

「はえ~すっごい。流石未来だな……てか莉央ちゃん、めっちゃハイテクな状況なのにリアクション薄くない!?」

「ご存知ないんですか下田さん。私たちの時代でもすでに、ロボタクシーは実用化に向けて動き出していて、5年先には世界のスタンダードになっているだろうという話を」


 ともかく俺と莉央ちゃんはタクシーに乗った。本当に無人で、空調も効いてるし乗り心地も快適だ。

 何よりスゴイのは、道中まったく信号に引っかからない……というか、そもそも信号じたいが見当たらない。


「あ、あれあれ~? 日本の交通道路につき物の、渋滞とか信号とか道路標識は……?」

「全部過去のものですね。ロボタクシーの時点で想像がつくと思いますが、2050年はもう、車の運転は全てAIによって完全管理されています。

 すでに個人で車を所有している人間も存在しない。非効率ですからね」

「なん……だと……マジなの? 未来世界じゃもうみんな、クルマ持ってないの!?」

「下田さん。個人が一日に車をどれぐらい運転すると思います? 仮に通勤時間が往復1時間とすると、それ以外の23時間はずっと車庫や駐車場に入れっぱなしです。

 だったらその空いた時間は、誰か別の、車移動が必要な人間に使わせた方が、断然効率的だと思いませんか?

 それに人間はミスをする生き物です。ですが運転が全てAI管理ならば、交通事故は一切発生しません。つまり自分で運転して歩行者に気を配ってイライラしたり、遅刻を恐れてスピード違反するトラブルも無くなるという訳ですね」


 なるほど、確かにそれはその通りかもしれないな。

 俺が莉央ちゃんの解説に納得している間に、ロボタクシーはどこかの目的地に着いたようだ。


『お待たせ致しました。ご利用料金は100円となります』

「安ッ!? タクシー代なのに缶ジュースより安いし!?」

「人件費もかかっていませんし、電気自動車ですからね。最効率化すれば発生する代金はそんなものかと。

 それに恐らく私たちは、利用料金以上のものを『すでに支払っています』」

「…………? すでに、支払っている……??」

「あ。料金支払いはスマホ決済で」


 俺はタクシーを降りた後、ふと疑問が湧いた。


「莉央ちゃん。今『人件費かかっていない』って話で、気になったんだけど……

 クルマが完全無人化したって事は、もしかして……」

「はい。お察しの通り、タクシー運転手という業種は仕事として淘汰されてしまっています。

 タクシーだけではありません。トラックも、バスも、電車も。ありとあらゆる車両運転する職業は、2050年には存在していません」


 淡々と語る莉央ちゃん。俺は背筋が寒くなった。

 じゃあこの未来世界の人たちって、いったいどうやって働いて生活しているんだろうか?

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