結:こいつらマジ鬼畜やん
実はこの「神風」、元軍全部を吹き飛ばした訳ではなかった。別の場所に停泊して難を逃れていた部隊もあったからね。
でもまあ、ここまでの経緯を見れば分かるように――この時点で元軍は崩壊寸前。これ以上の継戦は不可能と判断したようである。
「敵が引きあげていくな……」
「もう音を上げたんですか。こちらはまだまだ余力を残していたというのに」
莉央ちゃんの言葉はハッタリでも何でもない。
実際この時、京都からの増援部隊が博多に向かって進軍中だった。
もっとも元軍が逃げ帰ったせいで、彼らに活躍の機会は訪れなかったのだが。
「しっかし、これだけの大軍や防備を整えるのにも、日本側メッチャ金かけてね?
そこら辺の費用はどっから捻出したんだろうね」
「聞く所によれば、倭寇(註:ざっくり言うと日本の海賊)の一部が死の商人として活躍し、南宋の火薬作りに手を貸して利益を得ていたとか」
「ホント、何でもアリだね……」
余談になるが、鎌倉武士団が捕えた元軍の捕虜について。
っていうか、捕虜いたんだ? てっきり皆殺しかと思ってたよ。
「建築家とか芸術家とか、そういう技術を持ってる連中は助けてやろう!」
「だがそうじゃない奴等は……奴隷として港湾作業の重労働で、死ぬまでこき使ってやるぜェ!」
「おらおら働けェ! 手を休めるなァ!」
「生きていられるだけありがたいと思え虫ケラども!!」
「…………」
「……完全に某世紀末漫画のモヒカンですね」
***
元の皇帝クビライは、これに懲りずに三度目の襲来計画を立てていたらしい。未遂に終わったが。
なお彼の側近は「二度目の敗戦で、我らは海軍の精兵をほぼ全て失った。たとえ再度侵攻できたとしても、勝ち目はなかっただろう」と述懐していた模様。
鎌倉武士団ほんとコワイ!
(第1話 おしまい)