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プロローグ:いつもの

* 今回のあらすじ *


 俺は歴史好きの高校生・下田しもだ一郎いちろう

 クールな幼馴染・莉央りおちゃんと共に、16世紀後半の日本――みんな大好き戦国時代にタイムスリップしていたぜ!


「ちょうど武田・徳川による今川攻めが始まる直前ですね。

 下田さんが抱いている武田信玄への最強イメージが、木端微塵になるかもしれません」


 戦国最強大名・武田信玄の戦ぶりが見れる! とワクワクしていた俺に、めちゃくちゃ不吉な事を言い出す莉央ちゃん。

 でもおかしくね? 三方ヶ原の戦いであの徳川家康を相手に、圧倒的な力の差を見せつけた武田信玄だよ!?


 果たして「通説」と違う、信玄の実像とはいったい、どんなものなのか……!?


※参考文献:「徳川家康と武田氏」 本多隆成/著(吉川弘文館)

 ここのところ、莉央(りお)ちゃんは上機嫌だ。

 普段はクールで無表情なメガネ美人……といった雰囲気なのだが、学校で顔を合わすたびに、口元がほころんでいる。不覚にもちょっと可愛いとか思ってしまった。


「莉央ちゃん、嬉しそうに何を見てるんだ?」

「最近は、ネットの動画で色んなジャンルの歴史解説動画がお手軽に閲覧できる――いい時代になったものです」


 莉央ちゃんのスマホ履歴を覗き込むと、様々な動画が載っている……だがよく見ると、閲覧履歴は歴史系だけではなかった。なんか猫とかカピバラのもあるな。


「意外とかわいい動物も好きなんだな、莉央ちゃんや」

「……いえ、そこら辺を見て欲しいのではなくてですね」

「でもこれなんか、織田信長の動画か。超有名どころじゃん。今更解説動画なんか見る必要あんの?」

「もちろんありますよ! たとえ戦国時代といえども、同じ事件や人物でも、通説以外の新説が出たり、評価が改まったりしていて面白いんですから」


 莉央ちゃんは鼻息荒く力説する。

 そういや俺も聞いた事がある。近年、戦国時代で「通説」とされていた話は覆る事が多くなり――従来の革新的な信長像や、今川義元の上洛説、室町幕府の権威など……これまで常識とされてきた説は次々と改められてきているらしい。


「へー。戦国ね。戦国時代っつったら……俺、戦国大名じゃ武田信玄が一番好きなんだよ。風林火山の旗印に、武田騎馬軍団!

 何より天下取りをもくろむ織田信長に立ちはだかる、最強のラスボスって雰囲気がカッコいいしな!」


 俺も興奮気味に、自分の推し武将を語る事にしたが……嬉しそうだった莉央ちゃんの笑顔の質が変わった。

 あ、コレ知ってる。何度も見た奴だ。ちょっと冷笑入ってるカンジ。いつもの莉央ちゃんのクールスマイルだ。


「下田さん。武田信玄に関しては……旧来とは大分イメージが変化してきているんです」

「へ? そーなのか? イメージ変化も何も……天下を狙う最強・甲斐の虎! って大筋は変わんねえだろ?

 三方ヶ原の戦いで徳川家康を散々に打ち破ってた訳だし、家康さんビビりすぎてウンコ漏らすほどだったって――」


 莉央ちゃんから表情が消えた。空気が冷えたが、何故か安心感を覚えたりする俺は変態なのだろうか?

 彼女がこのモードに突入すると、決まって起こる事がある。それはもちろん――


「……あー。タイムスリップしちゃいましたね。来るんじゃないかと思ってましたが」

「流石にこんだけ繰り返されると、俺ももう何の感慨も湧かねえな。どうせ戦国時代だろ?」


 いつもの。何度も体験すると、どんなに突拍子もない非科学的な事象でも、当たり前の事として受け入れてしまうんだなぁ。

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