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莉央ちゃんとタイムスリップ!【短編シリーズ】  作者: LED
第7話 ハイチとドミニカ編
32/56

プロローグ:いつもの

※今回、作中の登場人物がやや過激な発言を行いますが、特定の国家を貶める意図はございません。


* 今回のあらすじ *


 俺は歴史好きの高校生、下田しもだ一郎いちろう

 現代の中国についての話をクールな幼馴染・莉央りおちゃんとしていたのに、今回のタイムスリップ先は中国ではなかった。


「えーと……ここどこ?」

「イスパニョーラ島です。中南米はカリブ海――現在ではハイチとドミニカと呼ばれる国ですね」


 一体なんだってまた、中南米の島なんかに!?


「多分、環境汚染がどうとか話していたせいじゃないですか?

 西のハイチはとっても貧しい国で、クソ野郎の独裁者に支配されていました。逆に東のドミニカは経済発展しましたね」

「へー。そうなんか……じゃあドミニカはきっと、民主的で自由な経済を推し進めていったんだな?」

「……いいえ。ドミニカの支配者も、まごうことなきクソ野郎の独裁者でした」

「マジでどういう事だってばよ!?」


 意味が分からねえ。同じクソ野郎の独裁者が支配してたのに、どうしてここまで差がついちまったんだ!?

 いまいちマイナー感のあるドミニカ共和国だが、その歴史を知れば環境問題の何たるかが理解できる、とは莉央ちゃん談。果たして……?


※参考文献:「文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの」 ジャレド・ダイアモンド/著 楡井浩一/訳(草思社)

 俺は近頃のニュースを聞き、一人憤っていた。


「最近の中国サマはどーも、調子に乗りすぎじゃねえか? アジア諸国にインフラ担保に金を貸しまくってるっていうし。

 んで、借金を返せないとたちまち、担保にしてた港を差し押さえて自分のモノにしちまうんだぜ!」


 俺の言葉にも、幼馴染の莉央(りお)ちゃんはきわめて冷静だった。


「まあ、それはお互い合意の上で、そういう契約を結んだ訳ですし。

 かつてアメリカがインディアンと土地契約をした時のようなアコギな話じゃあないですよ」

「何だよ莉央ちゃん。まさか日本人なのに中国サマの肩を持つのか? あいつら日本にもちょっかい出してるぜ!

 北海道の土地を買い占めて、日本の水資源を奪ってるって聞いた事あるし!」

「下田さん、落ち着いてください。確かに中国の行い全てが褒められたものではない、とはわたしも思いますが。

 少なくとも北海道の土地は、別にモヒカン野盗を送り込んで『ヒャッハー水だー!』とか強奪した訳じゃないんですよ?

 ちゃんとお金を払って土地を買っています。つまり売った日本人の地主がいて、取引成立している訳で。

 どうしても取り戻したいのでしたら、同じだけお金を積んで買い戻すのがスジだと思うのですが」

「うぐッ……でも今の日本って不景気だからなぁ。許すまじはチャイナマネーって事か!」


 なんだかミもフタもないが、いつの世も貧乏はツライという事なのだろうか。


「ウイグルやチベットを武力で併合したのも、その鉱山資源や水資源を得るためです。彼らとしては実益が伴っている訳で。

 人道的な観点からいくら非難しても、向こうが『悪い事だからやめよう』なんて言い出すハズもないんですよ。

 もし本当にこれらの問題を解決したいのなら、抽象論や精神論ではなく、もっと現実的な方策を練る必要があるでしょう」

「むむむ……そうは言っても、中国って今ものすごい勢いで森林伐採したり、川を汚染したりしてるんだろ?

 地球環境問題って今、真剣に取り沙汰されてるじゃねえか。放っておいていい話じゃねえと思うんだが……」


「環境汚染問題……確かに深刻ではありますが、それはかつて日本も高度成長期に通った道ですから」

「へ? そーなの? そーいや昔、社会の授業で日本の公害病とか習ったな……」


「はい。今の中国で森林伐採や大気・土壌の汚染がなぜ、進んでいるのか?

 その理由は中国にある工場が旧式で、最新型より遥かに燃費が悪く、水も火もガンガン使うからですね。

 実は日本から水を買っているのも、それが理由でして。要は工業用水が不足しているんです」

「マジかよ……意外とみみっちい理由だったんだな……」


 相変わらず、数々の疑問を秒速で論破されてしまう。莉央ちゃんの完璧超人ぶりは健在だった。


「で、でもさぁ。中国って一党独裁政権で国民を弾圧してるのはマズイだろ? 一刻も早く民主化すべきなんじゃ……」


 俺の口から「民主化」という単語が出た途端――莉央ちゃんの顔色が変わった。


「下田さん。いつから民主化すれば(・・・・・・)中国が良くなる(・・・・・・・)と錯覚していた?」

「なん……だと……」


 え? 民主化だめなの? 俺的に、今世紀で聞いた一番ビックリな話なんだが……


「もちろん強権的な独裁を全肯定したい訳ではありません。ありませんが……

 むしろ中国は、政府が強力に統制しているから、()()()()()済んでいるんですよ。

 もし万が一、中国全土が民主化したら……その時がまさしく、世界の終わりの始まりといった所でしょうね」

「へ? 何だよソレ。なんで中国が民主主義になると、世界が終わるんだ?」

「それはですね――」


 と、ここでいつものタイムスリップモード発動。周りの景色が輝いた。

 今までの話からして、今度のタイムスリップ先は中国か? と思いきや……全然違った。


「えーと……ここどこ?」

「地形から察するに、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島、でしょうね。

 現在では西にハイチ、東にドミニカという国がある所です」


 俺と莉央ちゃんは、エメラルドグリーンのカリブ海が眩しく輝く、イスパニョーラ島にいたのである。

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