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習作の1  作者: おみう
2/2

1の2話

タイトルが思いつきません。


「ここが2-8。俺が先入るわ。」

「本当に何から何までありがとうございます。」

「いやいやホントに何もしてないよ。あ、スリッパは自分の持って来れるまで使ってくれたらいいよ。」


 遅刻は遅刻だった。ただまぁそれ以上にまずかったのは上野さんを侍らせて教室に入ったことだった。1限目が終わった瞬間、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

「どういう関係?」

「早速手を出すとかすごいな。てかそういうキャラだったんかお前。」

「二人仲良く遅刻してきたんか?」

一度ネタになると暫く擦られるので少し憂鬱になった。断じていじめでは無いが、これが男子のコミュニケーション。

 一方女子のコミュニケーション。上野さんが後ろの方の席で女子に囲まれている。あっちはあっちで質問攻めで大変そうだ。女子は付き合いが全てだからなぁ。


その後上野さんと特別何かあるわけでもなく、2、3日が過ぎた。


 ある日の化学基礎。待ちに待った実験だ。冷めた奴らが教室の大半を占めている中で俺は一人心躍らせていた。周りのテーブルはどんなもんだろうと見渡していると上野さんと目があった。こっちを見ているのか?と振り返ったがクラスメイトの背中しかなかった。顔を戻すとまだこっちを見ていた。耐えられず目を逸らした。上野さんはまだこっちを見ている気がした。何か変なことでもあるだろうか。こっそりズボンのチャックを見たがちゃんと閉じていたし、寝癖もなかった。

 

 次の日のお昼の時間、パンを持ってきたので飲み物を買いに行く。フルーツ牛乳とレモンティーで迷っているとばったり上野さんに会った。太陽を集めた髪の毛がきらきら眩しかった。

「あれ、(あきら)さんじゃないですか。」

もう名前を覚えていてくれたのか。下の名前で呼ばれることもすくないので、少し嬉しくなった。それと同時にドキッとした。思い上がりだと笑われてもいいが単なるクラスメイトの以上の関係になってしまうことが怖い。気さくな友人関係にしては、おかしなスピードで関係が深まっているのではないか。不安になった。妙にテンパってその後のことはあまり覚えていないが教室に戻る頃にはレモンティーがもう半分も残っていなかった。


 終業チャイムが鳴った。各々が文化祭の準備に取り掛かる。荷物をまとめて生徒会室へ向かう。この時期は生徒会の仕事も多く、クラスの手伝いと重複したりと疲れるので足取りが自然と重くなる。「ツナ、これ提出しろって言うてたプリント。」朝の友人。

「OK。ありがとう。」

他愛のないやりとりを終えて生徒会室のドアの開ける。この学校の生徒会は部活扱いなので基本誰でも入ることができる。はずなのだが人数は7人ほどしかいないし俺はヒラだ。     

 今日の仕事を確認してパソコンの電源を入れる。


 作業を始めて2時間ほど経っただろうか。外は夜の帳が降り始めていた。今日はこの辺にしておくかと伸びをした。ドアが勢いよく開く音を聞いてそっちを向くと、別室で作業していた2年生の紅一点かつ副会長の大槻が立っていた。

「ツナ!!」

「何じゃい。」

「なんか外におるらしい!野球部が慌ててた。」

「いや、なんかって何?」

イチローでも来たのだろうか。レーザービームを投げられると世界が終わってしまうぞ。

「なんか…部室の方に何か凄いスピードで動く何かがおったって…。見た子は怪物言うてマッハで逃げてきたみたい。」

「まぁ田舎やしイノシシなりなんなりを見間違えたんじゃないか?」

「にしても、怖いやん?だからさ、アレを倉庫に入れてきて欲しいんよ…」

そう言って大槻は材木を指差した。俺だって怖いのは嫌いだしイノシシにも勝てない。ただデスクワークの後に体を動かすついで、それとごま塩程度の怖いもの見たさで行ってもてもいいかなとは思った。

「まぁ…いいよ。」

「助かるわ〜流石ツナ。」

 もしも地獄があるのならば、それは生徒会倉庫にある。トゲが刺さる材木が乱雑に置かれており、通気性の悪いプレハブに立て付けの悪いドア割れたガラスと作業には最悪の環境である。おまけに部室棟に近いので噂のイノシシが来たらお陀仏だ。死んだらどうしようか、こんな板のような材木で太刀打ちできるのか。適当なことを考えながら倉庫の前へたどり着いた。

 ドアを開けようとした刹那、アスファルトに接吻した。直後化け物と接吻した。

 厳密に言うならば足を掴まれて叩きつけられた。その後物陰に引きずり込まれた挙句乗り掛かられ、針のような触手を体の周りに突き立てられて完全に身動きが取れなくなった。事態を理解できた頃には動けなくなってしまっていたというわけだ。噛み付くように口を覆われて舌が這い回る。優しいのがフレンチキスならこっちはロシアンキスと形容すべきだろう。舌で舌を締め上げられ呼吸もうまくできない。

 血と涙でグチャグチャになった視界には恐怖と理解を超えた生き物が映る。口内、唇、そして木片が刺さった腕。その内部全てを蹂躙されている感覚。今がいつでここがどこかも考えられなくなり、もう殺して欲しいとさえ思った。一つ分かるのは怪物の声が明らかに苦しそうになっていることだった。怪物の体が少しずつ滲んで消えていく。その中から現れたのは俺の上で固まる上野さんの姿だった。

「ええぇ…。」呂律を回さずに最低限で今の気持ちを表現する。

「どうして戻って……これは、その…」

「あいじょうぶ(だいじょうぶ)…?」

「えっ…うん。」

沈黙する上野さん

「手当てもするし説明もするから、家に来て欲しいんだけど…」

黙ってうなずく。あんな目に遭ったんだ拒否しようという気も起きなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 十明(つなしあきら)彼の名前。覚えやすい名前だなと思った。助けてもらった興味から彼がどう言う人か見ていたが、不器用で優しい。彼の人柄はそれに尽きる。何せ出会ったことのないタイプだったしもっと彼のことが知りたくなった。今日眺めているのでは飽き足らずに飲み物買いに行くのをつけてしまった。最初にあった日よりも会話が辿々しくて笑いそうになった。

 帰ろうか迷ったけど文化祭の準備をすることにした。遅くなって血不足が起こる心配はあるけれど、ここ2日間先に帰ってしまっているのでクラスに溶け込む為にも参加すべきだと思った。明くんはいない。生徒会に行っているらしい。話すいい機会だと思ったのに。

 私は馬鹿だ。こんな時間になるならお昼のうちに少しでも血を貰っておくべきだった。教室にはいられないと思い、一目散に教室を飛び出した。形が崩れていくのが分かる。意識があるうちに遠くへ行こう。そう思って駆け出す。あれ、あっこにいるの明くんだ。

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