1の1話
初投稿なので温かい目で見ていただけると幸いです。エタらないように頑張ります。
中学で大敗を喫してからというもの、恋愛というものが分からなくなった。負け惜しみで間違いない。
腹痛と闘っている時は頭がゴチャゴチャして変なことを考えてしまう。語り口調で俺は自伝でも書くのかと自嘲していると
「大丈夫か〜?俺宿題やるから先行くで。」
と友人のノック。家で終わらせろよと言いたいのをぐっと堪えて
「あいよ。」と声をかけておいた。腹痛は今に始まったことじゃないが今日のは嫌なタイプだ。家を出る時には痛くないのが憎たらしい。
トイレを流して手を洗ってから時間を見ると時刻は8時28分。7分で駅から学校に行けば間に合うが、汗をかきたくないので潔く遅刻することにした。健康不良の不良児になってしまった。真面目な生徒会役員で通っているハズなんだが。
いざ学校に着くと下駄箱の中で見慣れぬ美人がうろうろしているではないか。明るい髪の色をしているものだから、本物の不良が遅刻してきたのかと思ったが顔を見るとハーフみたいな整った顔立ちをしている。これは地毛か。困っているのだろうか?話しかけるのは得意ではないが無視もアレだ。
「なんか困ってたりしますか?」
急に声をかけられて面食らったのだろう。「えっあっえっハイ。」
と美人の返事。しかしホッとした。
「別に大丈夫です。」と断られるのが一番堪えるからだ。そんなこと言われた日には過ぎた真似だったと一日中自分の行動を後悔することになるだろう。
「あー…今日から転校してきたんですけど、買った上履きを忘れて…」
達者な日本語で美人が答える。
「生徒会室の前に貸しスリッパあるからそれ使います?」
「いいですか?ありがとうございます。」
「はーい。取ってきます。」
物腰も柔らか。ぱっちりした目にすらっとした鼻。微かに光るように見える茶髪はつい手を伸ばしたくなるような魔性の魅力を持っているようにさえ見える。直視した男を校舎裏で爆死させてしまいそうだ。あまり関わりたくないファムファタール的女性である。
「ここに名前とクラスと、日付を書いてくれる?んで返す時はここにチェックして」
長い爪のついた指が名簿とペンを受け取る。
上野エリース望美 2-8
ミドルネーム…本当にあるんだ。しかもエリースとは。まさに舞姫ではないか。幸いにも豊太郎くんはこの学校にはいないので可哀想な事にはならないだろう。
「上野…さん?スリッパはともかくなんでこんな時間に?」
「あー…電車に慣れてなくて。あとエリースか望美でいいですよ」
「ややこしいですもんね。それは仕方ない。」
数秒の沈黙
「教室の案内もお願いできますか…?」
と上野さん
「勿論。」
彼女を案内することで遅刻の罪が減刑されることを期待できる。願ってもない頼みだ。
「何組だっけ………あ、俺と同じクラスだ。」
「本当ですか?手間にならなくていいですね。」
「…………そうっすね。」
彼女と残り半年ほどを同じクラスで過ごすことを考えて少し恐ろしくなってしまった。どうしたものか。今日以降あまり関わらないようにしようと固く心に誓った。
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血が要る。普段なら大丈夫なハズなのに。新しい環境で知らず知らずのうちにストレスが溜まっているからかも。今我慢できても学校で形を保てなくなると良くない。適当な人から吸うしかないかも。電車が止まる。飛び降りた。トイレが一番都合がいいので一目散に探す。あ。手提げを車内に忘れた。上履きが入っていたのに。初日から失敗ばかりだなぁ。駄目だイライラする。爪が伸びはじめてる。急がないと。
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