レーマン家の思い
レーマン公爵家視点
私はライナ・レーマン うちは王族に次ぐ爵位で公爵家でも上位である。お父様ローマンとお母様マーリア、すでに儀式を行っているお兄様クロー、お姉様マシカ。
まだ儀式をしていない弟のコウは家で待っている。
「ライナ、もう少しで着くぞ」
「うん、やっと5歳になったんだもん。お父様やお母様たちよりも強い魔物を呼び出すんだ!」
そう、ライナは先日5歳の誕生日を迎え、今日いよいよ儀式を受ける時がくるのだ。お父様はなんとAランクの魔物を呼び出しその上危険度32の上位の魔物を呼び出すことに成功した。お母様もAランク危険度27で2人とも王国騎士になっている。2人とも若く、まだ26歳だ。。(成人は15歳から)
お姉様とお兄様もBランク危険度20と比較的強い魔物を出している。お兄様はスカイ・オークでお姉様はファイア・ゴーレム
である。
スカイオーク
危険度20
属性:風属性70% 無(結界)属性28% 水属性2%
名前の通り空を飛べるオークで比較的珍しい魔物。空を飛べるが巨大なせいもあって5メートルぐらいしか浮かべない。しかし持ち前の力で危険度は普通よりも高い
ファイアゴーレム
危険度20
属性:火属性70% 無(錬金)属性30%
水に弱いゴーレム。水に当たるとすぐに壊れてしまう。だが水以外の魔法は通じない。壊れても5時間以内に治る
人間には鑑定することが出来ないため、余計に、魔力が大事になる。お兄様は無属性 お姉様は火属性が使うことができる。%が多いほど使える確率が上がる。それでもまだ一回しか見たことがなく滅多に従魔を出すことがない。まあ食事も与えなくても指輪でエネルギーを取り出せるし死んだらそれっきりだからね。ちなみにお姉様は倒れてもすぐ復活するから良いけどゴーレムはいつも火で燃えているから危ないのだ。
ちなみにお父様とお母様の魔物は見たことがないがお父様はドラゴンクリスタル お母様はストロンナイトという魔物だ
ドラゴンクリスタル
危険度32
属性:火属性10% 光属性23% 無(防御)属性67%
防御がドラゴンの中で2番目に硬い。スピードは遅いが光で相手の目を潰したりすることができるし火魔法も使えるのでなかなか倒せない魔物
ストロンナイト
危険度27
属性:火属性20% 水属性:20% 無(錬金)属性40% 土属性20%
弱点がない魔物。色々な属性の武器を瞬時に作り出し1人では倒すことは難しい(5人以上なら倒しやすい)
お父様が光属性 お母様が無属性を扱うことが出来る。私的には一緒に遊び回れる子が良いけどそうなると自然とランクが落ちる。Bランク以上は取らないと私自身の立場が怪しくなる。5歳と言っても平民と違い幼い頃から色々なことを習わされてきた。
平民の子は97%がEランク 3%がDランクだったらしい。Sランクは出なかったがそれが普通である。呼んだら呼んだで生活が難しくなるだけ。そんなことを考えていると、
「ライナ、安心しなさい。ここ10年コンピエンス貴族は出てきていない。」
そう。コンピエンス貴族は滅多に出ない。出たとしても1人や2人。それも下級貴族のみである。ちなみにコンピエンス貴族と言うのは魔力が家系に似合わず少ないことである。つまり無能貴族とも言う。
「はい、お父様。公爵家の名に恥じないようにします」
その答えにみんなはにっこりと微笑む。
ようやく、儀式が始まった。儀式は城にある教会ですることになっている。そして下の爵位の人から順番に行なっていく。今回も前年度と同じように、悪いと言うこともなく、良いと言うこともなく、スムーズに進んでいく。すると早くも自分の番になっていた。お父様の方を向くと、笑顔で頷き手を差し出してくれた。私もそれに応えるように手を繋ぎ、魔道具の方に近づく。
魔道具の方に到着すると、お父様と手を離し、ゆっくりと離れていく 私もゆっくりと魔道具に近づいていき優しく手で触れる。すると、魔道具が火と緑色
つまり、火魔法と風魔法が使えることが分かった。それを見た瞬間誰もが目を見開き感嘆の声を上げた。
普通は、一つの属性しか手に入らないのだが何故か私には2つの魔法が使えるようだ。それに目を輝かせながらゆっくりと後ろに下がる。数秒して完全に光が消えると、そこにいる魔物に私は目を点にした。
それは私だけではないはずだ。他のみんなも同じように点にしている。そこにいるのは毛を銀色に輝かせながら眠る子狼。どう見ても強そうに見えない。大きい魔道具に不釣り合いなほどの小ささ。そして、ステータスがだんだんと浮かんできた。
ウルフ[変異種]
危険度4
属性:火魔法50% 風魔法50%
銀色の毛が特徴の子狼。
としか書かれていなかった。雑な説明に危険度4...Dランクという信じたくない現実。数秒は頭が回らなかった。だが、
「ふっ、あはははは!」
1人がそう笑い出した。そのきみの悪い笑い声は私たちと敵対している同じ公爵家であるローズ公爵家。
ひとりが笑うと周りも笑い出す。蔑んだ目、その目が私と子狼に向けられる。体が震える、子狼も同じように震え出す。すると、後ろから誰かが抱きついてきた。その温もりはいつも感じているお父様の温もり、しかし今日はいつもよりも冷たい気がした。
「君があの子を周りから守るんだ、ライナは俺たちが守る。まずはあいつを安心させてやってくれ。」
そう言うとお父様は私に背を向けて歩き出した。
嫌だ、行かないで!
「待って、お父様! 置いていかないで!」
そう言うとお父様はいつもの笑顔で、
「大丈夫だ、皇帝と少し話しがあるだけだ」
その笑顔はいつもよりも暗い気がした。1人が無能とみなされてしまうと、その家の格も下がる。だが。
「うん、そうだよね!私の従魔だもんね!」
私も無理に明るく声を上げる。そうだ、せっかく私の従魔に会えたんだ。
そう言うとお父様も笑顔で頷きまだ遠ざかっていった。私も意を決して子狼を見た。その時にとんでもない量の魔素が飛び出してきた。
それを受けて尻もちをついてしまい、体を打ってしまった。
さっきまでの私をバカにする言葉はどこにもない。みんなの視線は1つの魔道具、いや、魔道具の中にいる一体の魔物に注がれていた。そして魔道具がさしているステータスが変化していく。そこには
レジェンダリーウルフ
危険度150
属性:火属性 水属性 土属性 風属性 木属性 雷属性 無属性 光属性 闇属性 呪属性 聖属性 付属性 【全属性所持者】
この世界で一番賢く、強い魔物。生きていること自体が伝説であり、この地球に一体しかいない幻。気性が荒く、好戦的ではあるが森の奥深くに住んでおり、存在自体はあまり知られていない。
この説明を見ただけでわかる。これはSランクであることが。誰もがその姿に魅了されて、同時に畏怖した。さっきまでバカにしていた存在がSランクだったと気づくと震え出す。説明欄から見ても好戦的で襲いかかってきても、ここにいるみんなで応戦しても勝つことはできないだろう
『スキル 多重結界』
そう魔狼が美しい声で言うと私とレジェンダリーウルフの周りを何重もの結界が覆った。
〜ローマン視点〜
私の娘が震えている。私も頭痛がする。目の前にいる魔物はDランクだ。そうなると周りからはコンピエンス貴族にあたる。だがあの魔物に罪はない。ライナはこれから辛い目に合うだろう。だが今日だけはキラキラの笑顔を見せて欲しい。
だが、私がライナから少し距離が空いた時に起こった。突然あの子狼が光り出した。何事かとそっちを見てみるとあの子狼が大きくなっていた。それだけじゃない、ステータスには明らかにおかしい文字が浮かんでいた。
レジェンダリーウルフ その言葉を聞くだけで心の底から震えてしまう。周りにいる子供も大人も喋るのをやめ、その姿に目を奪われている。
さっきと同じように煌びやかな毛並み。その見開かれた目には全てを見透かすような、そんな思いがした。
そして自分が動くのが遅いと後悔しても遅かった。
レジェンダリーウルフとライナの周りに何重もの結界が作られていた。
ヤバい!心の底からそう思った。俺は笑顔を消し血相を変えて結界の方に走り出す。マーリアやクロー、マンカも近づいてきた。
「ライナ、大丈夫か?!返事をしてくれ!」
俺がそう叫んでもこの結界は変わらない。俺の魔法ではどうすることもできない。
「クロー、どうにかできないか!」
「今、やってみます!【結界解除】」
クローが泣きながら何度叫んでも変わらない。それだけ高度な技術がこの結界を守っている。
数秒するとクローの魔法が途切れ倒れた。
「クロー、くそ、魔力枯渇か」
「私が壊す!【いでよ!我が従魔!ファイアゴーレム!】」
マシカがたまらずにファイアゴーレムを出す。
いけない!こんなところでそれを出したら!
「マシカ、やめなさい!【遮断器】」
マシカの従魔が出る前になんとかマーリアが止めることができた。だがその効果でマシカも倒れてしまった。残った俺たちは何もすることが出来ない。王国騎士が他の貴族を避難させている。
そうしていると、結界が溶け始めていた。
「ッ!ライナ、大丈夫か!」
完全に溶けて中にいる人物を見ると、目を疑う。
そこにいたのは1匹の狼に乗った愛娘であった。
〜クロー〜
ライナの笑顔が好きだ。5歳ながらも頭が良く、神童とまで呼ばれていたのに、神様はライナを見放した。
Dランクの魔物。それがライナの魔力の結成隊。
神童と今まで呼んでいた人たちも父上の友達も悪意を持って笑う。それが非常に頭に触る。隣にいるマンカも非常に不快な顔をしている。
僕たちがライナを守るしかないんだ。ライナの場合は学者でも生きていける。だからライナ、そんな顔しないで!
しかし、事態は急変した。突然魔物が光りだし、ライナと共に結界の中に居なくなってしまった。僕たちは遠いところから確認していたので何が起こったかわからなかったが母上が走り出した時に僕も走った。
何が起こったのかわからなかったが父上の焦りようから見て大変なことになっているのだろう。
父に促されてスキルを発動する。僕は同世代よりも魔力を持っているが、全く解除されない。自然と瞳が熱くなり、視界がぼやける。すると、急に視界が真っ白になり頭が働かなくなる。そのまま体が歪み嘔吐感を感じながら意識が途切れた。
〜マシカ〜
いや、他の人の反応を見る限り大変なことになっているようだ。私の愛妹に怪我があったら耐えられない。優秀な兄のクローでも結界を解くことが出来ないなら今度は私が壊すしかない!
しかし、従魔を召喚することを妨害されてしまい、魔力が体から抜ける。クローと同じように魔力枯渇で意識が朦朧とし、意識が途切れた。
〜マーリア〜
愛娘たちが涙を流しながら意識を失う。それをみただけで心が暴れるのに、ライナがSランクの魔物と2人っきり、危なすぎる。子供達は何がなんだかわからなかっただろうが今私が錬金術で作った眼鏡でしっかりと見ることが出来た。非常にまずい。
私の作った魔道具のほとんどは屋敷に置いてきてしまった。それでもクローが解除できないなら意味がないだろう。
私の作る魔道具はそんなにいいもんじゃない。
使い捨てだし、作り終えるまでに何日もかかる。
夫も今何もできないことに涙を流している。
私も多分涙を流しているだろう。
お願い、ライナ、無事でいて!
神がそれに答えるように結界が溶け出すのだった。