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異なる世界で  作者: OMF
2/15

Traveller

異世界にやってきた、旅人の話

主要人物

界徒

異世界に来た人。現代では高校中退からの旅人

旅の心得はあるが、場当たり的行動が多い

サリウス

異世界の人。所謂お偉いさんだが、放浪癖

元旅人の狩人。辛辣だが基本的には良い人

 色んな世界を見てきた。

 何って、それはもう、色んなものを。

 人を見た。食べ物を見た。自然を見た。空を見た、海を見た。星を見た。

 全てが違い、全てが美しいわけではないし、全てが醜いわけでもない。

 だから良いのだ。美しいだけではだめだし、醜いだけではもっとダメだ。

 どちらも存在しないと、その存在に気付けやしない。だからこそ良いんだよ。

 ほら、働きアリの法則ってあるだろ? あれも取り除いちゃだめってやつ。

 必ず一部分はそういうところがあってこそ、成り立つってものよ。

 次はどんな所へ行こうか、なんて思ってたんだが……いやはや、

 世の中分からないってもんですわ。


「おい、おきろ。」


 テントの中で大の字に寝転がる、長身の男がいる。

 白黒の横ラインの縞模様の服は、囚人服と言ってもいい格好だ。

 無論彼は脱獄囚という前科はなく、これはただの寝間着。

 深い意味はなく、現地で気に入ったものを着ただけのもの。

 気持ちよさそうに寝ている彼へと、中性的な声が外から起こしにかかる。


「後三十分……」


 まだまだ起きる気にはなれない。

 寝言のように、適当にあしらう。


「起きなければお前死ぬぞ? 早く出ろ。」


「ん……? あーなんすかもう。」


 気だるげな声と共に、テントから顔だけを出す青年。

 虚ろ目で見やる相手はポンチョに似た橙色の外套を羽織っており、

 背中から僅かに姿を見せるどこにでもありそうな弓を背負った相手。

 背景に広がる鬱蒼とした森の中にしては、えらく派手な色合いだ。

 余談だが、オレンジ色の服も囚人服に使われる色でもあるため、

 意味を知ってるといくらかシュールな光景だったりする。


「随分と落ち着いてるな。神経でも図太いのか?」


 フード越しに頭をかきながら、

 気だるげに適当な方向をみやるポンチョの人。

 状況は余りよろしくないのに対し冷静な彼に少し呆れるも、


「あのー、すんません。何語ですか?」


 全く通じていなかった。

 彼、界徒カイトは若くして世界中を旅するために、

 相当な数の国の言葉は話せるようにしていた。

 日本語の方が下手だという自覚があるぐらいに。

 (日本語が難しすぎる言語と言われてるので、ある意味必然だが)。

 なので、それなりに言葉に関しては同年代よりは優れてると自負するも、

 今相対する相手は今までにない言葉で、つい日本語で対応してしまう。

 加えて、段々この状況の違和感について気づき始めていた。


 界徒はオーストラリアを旅しており、その自由な文化を存分に楽しんでいた記憶は新しい。

 何時も通り、野宿できる広々とした場所で寝泊まりしていた筈だが、此処はどうみても森。

 フレームのあるテントを張るにしても、地面の段差がありすぎて不向きだ。

 テントや道具は一緒にあるので物取りや誘拐と言った、事件性は余り感じられない。

 例えると、そのままテントごと自分をジオラマの様に置かれただけのような状態だ。

 旅の経験上危機的状況は決して少なくないし、命がけの場面も少なからずはある。

 こういう時に必要なのは冷静さ。状況を理解してない風に見えるが、

 状況への理解は常人よりもずっと早かった。


「英語でも、ドイツ語でも、ポルトガル語でもないし、

 ネイティブ独特の訛りでもない……まさかサンスクリット語じゃないよな。」


「……オマエ、ニュフォン人か?」


 テント越しと寝ぼけていたのもあってか、

 先ほどまで日本語という認識がなかったが、

 こうして面と向かって話してみれば相手の言葉は知っているものだ。

 問題は、界徒からするとその日本語は非常にたどたどしており、

 発音も余りうまくできていない。


「ニュフォン? 日本のことか?」


「ソレだ。悪い。俺ニュフォン語、下手。英語なら、トクイ。」


 ゆっくりと一字一句、拙いながら界徒にも理解できる日本語を話す。

 クールとも言える冷徹な表情に、虎の如く視線だけで射抜けそうな黄色い瞳もあり、

 人によってはその姿とは裏腹にギャップ萌えを感じるのかもしれない。


「英語なら普通にいけるんで、大丈夫ですよ。」


「……上手いな、お前ニュフォン人と思ったがアカメリの人間か。」


 言われた通り流暢な英語で語りだすと、

 相手は僅かながら目を張り、関心を抱く。

 自分の日本語とは比べるまでもない程のものだ。


「アカメリじゃなくてアメリカだと思う、それ。

 俺は旅に必要だからこうなっただけで、出身と育ちは日本だよ。」


「なるほどな…とりあえず、早く逃げるぞ。

 最低限、持っていくべき荷物だけ持ってだ。」


「準備はするけど、どうやばいんだ?」


 避難勧告をされるのは、間違いなく穏やかな状況ではない。

 何が起きてるのか分からない中、持っていくべきものが何かの把握は必要だ。

 会話の間の時間を無駄にしないように、すぐにテントに戻って着替えつつ準備する。


「具体的な説明する時間はないので簡潔に伝えるが、

 凶暴な生物が近くで眠っている。起きる前に下山するぞ。」


「え、それなら寝てる間に倒しません?」


 寝てると言うならば、

 その間に倒してしまえばいいだけの話。

 態々、注意喚起するまでのこともないだろう。


「奴は自分に対する殺気に敏感だ。昔相手にしたことがあるが、

 山の麓からの狙撃ですら気づくほどの危機を察知できるらしい。」


「逃げます。」


 なるべく全部持っていこうと思ったが、

 常識外れの察知能力を聞いてしまった以上、

 すぐに諦めがついた。


 テントを筆頭にいくつかは諦めて置いていき、

 持ってきたのは着替えた青がベースの登山服以外には、

 どれだけ詰めればそうなるか不思議な程に、膨らんだリュックサックだけ。

 寝袋とか、今後の旅で死活問題になりそうなものまで置いてきてしまったが、

 まず何より優先するべきは命であることを、界徒は十分に理解している。

 非常事態の時、取捨選択をし損ねたことで命を落とすケースは少なくないのだ。

 それに、あくまで一時的においていくだけのものなので、

 置いていったものは燃え尽きるでも水に流されるわけでもない。

 その凶悪な生物に踏みつぶされたり…なんて危険があるにはあるが、

 少なくともまだ原形を保っていてくれる可能性はある方だ。


 膝の丈ぐらいはあるであろう草に覆われた獣道を、

 転んだりしないように慎重にしつつも、足早に動く。

 危機的状況ではあるが、見たこともない草花や生物。

 不謹慎ながら、新しい発見を前に笑みを浮かばずにはいられない。


「自己紹介がまだだったな。俺はサリウス=アーチ。

 ホロックという…まあ、治安維持みたいなことをしてる奴だ。」


「フオロックねぇ…俺は界徒。んでサリウスさん。此処何処っすか?」


 走ることができない程度に段差の多い道をゆっくりと、

 界徒にも真似ができるような動きで丁寧に降りていく。

 走ることができないのもあってか、その間に軽くだが自己紹介を交わしつつ、

 聞きなれない言語や周囲がオーストラリアと違うことについても尋ねる。


「言う前に一つ。驚いたりで大声は出すなよ? 奴が起きる。」


「あ、はい。」


「此処はお前のいた世界ではない。

 今はそれだけ覚えておけばいい。」


「了解。」


「……えらく呑み込みが早いな。」


 簡潔にとは言え別世界と言えば、驚嘆か唖然とする方が普通だ。

 特に、安全が保障されてるわけでもない、無知の状態ではなおさら。

 にもかかわらず、返ってきたのはあっさりと納得したかのような返事一つ。

 サリウスにとっては初めてのケースで、少しばかり興味が湧く。


「なんていうか…『経験』って奴ですなぁ。

 旅をしてからというもの、異常事態には慣れたもんで。」


 ここが別世界だとしても、彼にとっては現代でも同じことだ。

 元いた世界でも海を渡った先にあるのは、言葉が違う人達が生きている場所。

 何処にでもあることだ。海を渡ったか、別の要因でここへ来たか程度の違い。

 彼にとって、この程度は些細なことでしかなかった。


「異常の次元を超えてる気がするんだがな。

 お前、異なる世界へ来ることに経験でもあるのか?」


 言葉の通じる自分が最初の人物、

 と言う幸運があったにしても達観しすぎだ。

 『慣れた』と言う意味を、そのまま受け取る。


「いや全く。けど、こうして来た以上事実ってわけだしな。

 人が生き残るにあたって大事なことは、適応力って思うんですよ俺は。

 荒波だって逆らわずに流されれば、案外いい結果を生むかもしれないでしょ?」


 分からないでもない話だ。

 環境に適応できれば、人は十分に生きていける。

 しかし、それはどこか楽観視しているようにも見受けられた。

 いちいち喚いたり嘆いたりして立ち止まってしまうような奴を考えると、

 彼の適応した行動力については、サリウスとしてもありがたいことだが。


『グオオオオオオオオオオ!』


 山中に広がる、獣のような雄たけびが轟く。

 鼓膜を揺さぶるどころではないほどの声量に、

 互いに耳を塞ぎながら小走りになりつつもで走り続ける。

 鳥は羽ばたき、小動物は逃げ惑う姿は最早災害のそれだ。

 少なくとも、此処までの威力を出す生物に界徒に心当たりはない。

 自分が見てないだけで、いるかもと言う注釈を脳内で付け加えながら。


「少し速度を上げるが、行けるか?」


 起こさないようになるべく静かに動く方針だったが、

 起きてしまった以上そんなことをしても意味のないことだ。

 遠くの後方から、木をなぎ倒したり生物の悲鳴のBGMが流れる。

 あれの近くで寝ていたと思うと、想像するだけで血の気が引く。


「いやー、朝食実はまだなんでしんどくて…」


 起こされてそのまま逃げてる間、

 軽く食べる余裕すらなかった以上、ある意味仕方のないことだ。

 一応、食料は持ってきたリュックサックに入っているので、

 食べられないわけではないのだが、すぐに取り出すことはできない。

 獣道を土地勘も何もない中何があるか分からないこの状況で、

 前を見ずに歩けるほど、彼は危機感を理解してないわけではないのだ。


「なら、これでも食うか?」


 内側の胸ポケットから、布で覆われた棒状の物を取り出しながらそれを渡す。

 布を取ってみればスティックタイプの携帯食品に近い、食べ物らしきもの。

 食うかと尋ねた以上食い物であるのは分かるのだが、


「えっと、これ材料は? って言うか、何?」


 材料が何なのか、全く見当がつかないことだ。

 スティックタイプなのでよくある栄養食の類かと思うも、

 匂いは彼が嗅いだことのない、恐らくこの世界の由来のものか。

 茶色いきりたんぽの様にも見えるが外面は団子のような艶があり、

 何を材料にしているのか、予想を悉く潰しにかかる謎の食べものだ。

 言われても食うし、言われなくても食う。界徒は世界中を旅して学んでいる。

 その文化の食事はなるべく受け入れ、虫を筆頭に世間的にはゲテモノも食した。

 パロットと言う孵化直前のアヒルのゆで卵も、最初はその絵面で引きつってたが、

 東南アジアでは広く食べられる料理であり、旅をしてる間に好物になったほどだ。 


「自作の保存食だ。味は無に等しいが、

 栄養価は保証する。何かアレルギーの類はあるか?」


「特にないんで大丈夫…と言いたいところなんだけど、

 こっちの世界の食べ物への免疫もないんで、その場合は別ですが。」


 いただきますと小声でつぶやき、移動しながらその保存食を口にする。

 団子に近い弾力があるものの、噛み砕くのは容易な食感なのだが…


「うむ、味のないガムを噛んでいる感じだ。」


 無味。何を食ってるのか分からなくなる。

 噛めば噛むほどそれが高まって、味ではなく虚無感を生み出す。


「ガム? うまいのか?」


「俺の世界に例えますと、世間的にはまずいです。」


 美味い不味い以前の問題だ。

 無味では、別の意味で判定できるものではない。

 しかし、味のないガムを美味いと言える人は多くなかった。

 個人的には無味なので、あえて世間的な見解をもって答える。


「だろうな。」


 サリウスも、自分で作って理解はしている。

 お世辞以外で美味いと言われた試しはなく、評判もいいとは言えない。

 一応、この無味を食うぐらいなら自分で作って確保すると言う、

 部下の食への意識を高める良い刺激にはなってるので、

 一概に悪いものでもないのだが、好むのは自分ぐらいだ。


「でも、嫌いじゃないです。」


 噛めば噛むほど、よくわからなくなってくる。

 その、不思議さが界徒にとってはとても気分が良かった。

 この異世界ならではの、よくわからない味。

 こんな出会いがあるからこそ旅はやめられない。


「そうか───!」


 またもや意外な返事を貰った。

 そのことで思うところはあったのだが、

 突然界徒の背中とリュックサックの隙間に強引に手を突っ込む。


「舌、噛むなよ!」


「え───」


 いきなり何を、なんて言おうとしたがすぐに分かった。

 サリウスが行ったのは、自分を抱えて逃げるための行動。

 自分を抱えて一気に前へ跳躍と同時に、空から落ちてくる巨大な影。

 大地を、木々を揺らしながら現わしたのは顔が犬以外は、

 伝承上に存在するグリフォンに類する、見てのとおりの怪物。

 先ほど逃げおおせていた小動物どころか、自分達ですら目ではない巨躯。

 想像していたスケールを、さらに上回るスケールを持った存在。


「チィ、気づくのが早すぎるだろう!!」


 既に心で理解していたが、サリウスの言葉で再認識する。

 あれが件の怪物。自分を殺していたかもしれない相手。


「キマイラみたいなやばい奴だなおい!?」


 絵に描いたような怪物、

 彼の旅路でも中々お目にかかることはない。


「きま…? 奴の名はグラシャノラス。

 俺とて、正面戦闘で戦いたくない怪物だ。」


 サリウスに抱えられながら、界徒はグラシャノラスから逃れる。

 その速度は既に人間の領域の外だ。実在する猿とでも言うべきか、

 或いは漫画とかの忍者とでも言うべきか。ほんの少しの時間で、

 先ほどまでちんたら走ってた距離などとっくに越える勢いだ。


 しかし、グラシャノラスも負けじと追跡を続ける。

 生物を追うこと以外考えてないのか。木々という障害物を前にしても、

 重戦車のようなごり押しで、木々をなぎ倒して追いかけてきているにも関わらず、

 互いの距離が開くことを知らない。


「あの、倒す手段は?」


 このまま逃げれば、体力のない方が負ける。

 いつまでも逃げ続ける人とは思えない。この短時間で彼はそう感じた。

 それに、昔相手にしたと言っていた。つまり倒すか退ける手段があるはず。


「俺が戦えばいい。」


 物凄く雑な理由。

 呆れる程、単純明快すぎてガクりと項垂れる。

 相手にしたことがある人物らしい頼もしさ溢れる言葉だが、


「もしかしなくても原因…俺?」


 態々逃げ続ける理由は、間違いなく一つだ。

 自分と言う、守るべき対象が存在していること。

 守られる側は、いつだって守る側の枷になってしまう。


「ああ、そうだ。お前がいなければ既に終わってる。

 だと言うのに近くにお前がいるから、こっちは救助優先だ。」


 酷く辛辣な一言だが、

 事実である以上言い返すことができない。

 サリウスのお陰で生きてると言うべき状況では、余計に。


「俺を置いて、普通に攻撃してみては?」


 あんなバケモノ相手に勝った経験があるなら、

 自分を守りながらでも戦えるのではないのかと思うも、


「言っとくが、グラシャノラスの殺傷力は単純ながら極めて高い上に素早い。

 ついでに言うと、俺は弓使いだ。どうあっても距離を取ることが必要だ。

 完全にお前を守ることも、逃がすこともできない状態にせざるを得ない。

 あれは突進だけで、城壁をぶち抜く暴力だ。四肢がちぎれて生き残れるか?」


「流石に四肢全部が一度にちぎれて無事という保証は…ないなぁ。」


 即座に否定される。

 守りながら戦うと言うこの状況に置いて、最悪に等しい武器の使い手。

 しかも、自分を抱えている以上弓を引くことすらできないのでは、

 こうして逃げると言う選択肢を取らざるを得ない。

 自分がお荷物だと、改めて痛感させられる。


「余りしたくはないが、お前をこのまま麓まで逃がして迎え撃つ。

 麓の住人に被害は出るだろうが、割り切ってもらうしかないな。前もそうやった。」


「あの、何人ぐらい被害が?」


「初見も相まって、数分で十七人の死者が出た。今度は五人ぐらいの計算だ。」


「あんまり人を数字で計算するの、勘弁してください。」


 界徒は基本的に人を嫌わない。

 旅をして千差万別の人種を見てきた。

 旅では多くの人と楽しみ、多くの人に救われている。

 なので、数字だけの雑多な扱いをされるのは気分が良くない。


「それに犠牲にするのもちょっと…」


「だったら自分の命を捨てるか?」


 辿り着くのは、結局のところそこだ。

 麓の住人に被害を出さないようにするなら、

 此処で自分と言うお荷物を置いて応戦するほかない。


「それも困ります。」


 だからと言って、

 他人の為に命を賭けられるか、

 と言われて縦に振れる程彼はお人好しでもない。

 最悪、他人を見捨てることだって考えることもある。

 特にこの世界に来たばかりで顔さえも知らない相手に、

 自分の命を賭ける、高尚さは持ちあわせていなかった。


「そう、それが正しい。

 保身で生きろ。旅とはそういうものだ。」


 親友、或いは恋人ならまだしも対面すらしてない相手だ。

 独り旅である以上、保身を優先するのはおかしくない。

 責められることではないし、サリウスもそれは肯定する。


「…でも、これから世話になるかもしれない人達と、

 険悪になりそうなのも、正直嫌なんで───降ろしてくれますか?」


 おいおい本気かこいつ。

 さっきまで言っていたこと全否定だ。

 そう言いたげな呆れ顔で、サリウスが見やる。


「死にたいのか?」


 既に言った通りだ。

 このまま降ろせば倒せるかもしれないが、

 城壁を簡単にぶち壊す攻撃を受け切れる自信が、

 異世界から来たばかりの人間のどこにあると言うのか。


「というより俺が重くて腕、きついでしょう?

 三か月前に体重測ったとき、確か百十五はあった気がしますし。」


 旅をする以上相応に鍛えられてる分、筋肉は重りだ。

 加えて、その背中のリュックサック。体重程ではなくとも、

 元より重い体を更に重くしているのは一番分かっている。


「まあ、正直きついな。」


「このまま何かの事故で俺を落っことす可能性もあるかもですし、

 無防備に置かれるより、丁寧に置かれた方がまだ生存しそうでしょ?」


「どうやって攻撃を防ぐつもりだ?

 お前が…そうだな。仮に三秒時間を稼げば、

 俺がなんとかできるが、攻撃を防げる自信はあるのか?」


「一割程度には。あいつの攻撃、

 見切る方法とかないですかね? 癖とかそういうの。」


「あるわけがない。ないから奴は危険なんだ。」


「…自分を信じるしかないなぁ。」


 運任せと言う事実を前に涙すらこみあげてくるも、覚悟は決めた。

 山を下っていると比較的開けた場所へと降り立つ。

 先ほど以上にスピードを出して、僅かながらに距離を稼ぐ。


「此処を駆け抜けたら降ろすぞ。

 降ろした後俺は飛ぶ、お前は三秒生き残れ。

 殺気は全力で出して誘導しろ。俺が狙われたら色々まずい。」


「了解!」


 瞬きの間に開けた場所を駆け抜けつつ作戦会議。

 木々を背に、界徒を降ろしてサリウスは垂直に飛ぶ。

 あっという間に周囲の木々どころか山の頂上程まで舞い、背に携えた弓を構える。

 矢は持っていないが、その必要はない。

 サリウスは魔導矢、または魔導弓と呼ばれる、

 弓に魔力を込めることで魔力で矢を精製する技術を使う。

 弓と言う所謂銃があれば矢と言う弾の用意は必要ない。


(後二秒!)


 弓を引きながら、グラシャノラスへ狙いを定めつつ弓へと魔力を流し込む。

 弓に強化を施すことで、施した内容を放った矢に影響させることができる。

 言うなれば銃の種類を変えている、と言ったところだ。


 人が聞き取れるか怪しい速度の詠唱と共に強化を施すが、やはり相手は危険な生物。

 まだ明確な狙いを定めてなければ、奴を倒すに至る強化が施せてない中、

 開けた場所にその巨躯を見せて、リュックサックを降ろしてる界徒を襲う。


(殺意を出せばいいんだな。殺さないと死ぬ殺さない死ぬ殺さないと死ぬ…)


 いまいち殺意を出すと言うのが分かってなく、

 自己暗示でもいいから、とにかく自分なりの殺意の出し方をする。

 標的は上空のサリウスへと移ることはなさそうと判断し、

 最早投げ捨てるようにリュックサックを降ろし、界徒も後方にだが跳躍。


(は!? おい、莫迦何をしている!?)


 強化の為口にはできないが、

 今の行動にサリウスは驚嘆せざるを得ない。

 せめて木々を壁に攪乱してくれれば幸いだったのを、

 あろうことか界徒は隠れずに、人間が逃げるには困難な空中へと飛んだ。

 確かに、高さは結構高い。木々をぎりぎり飛び越えるだけの跳躍は、

 少なくとも人としては異常なレベルの跳躍だが、そんなものは向こうも同じ。

 寧ろ、身を翻すとかができず逃げようがない状態へと持ち込んでいる。


(後一秒。)


 二秒の間で此処まで高速で喋るのは滅多にないな。

 なんてことを思いながら、続けざまに強化を施す。

 十分すぎる強化をしているが、相手はまだ明確な資料があるわけではない。

 確実に殺せる領域の強化を施さなければ、非常に危険だ。

 だから、二秒程度ではまだ撃てない。撃っても殺しきれるかは怪しい。


 その間に、グラシャノラスは跳躍。

 翼も相まって、界徒の頭上から槍のような鋭い牙で襲う。

 弾丸でも飛んできたのか、今の動きを見た彼の感想はそれだ。

 さっきまで地上にいたのに、瞬く間に頭上から刈り取る死神の鎌。


 勝ったが、死んだ。

 後一秒持てば助かっただろうが、

 もうどうしようもない。彼の死は確定した。


(だから一人で戦うのがいいと言うのに。)


 サリウスは、人と群れるのが好きではなかった。

 昔の、ろくでもない記憶を思い出させるから。

 昔に被害が出た時もそれだ。ホロックと言う化け物の領域にいるが、

 いくら強いからと言って、全てを守れたりすると言うわけではない。

 寧ろ、目の前の人を守ることを主とする戦いはサリウスは不得手だ。

 距離を取れれば余裕でできる。弓の射程を無視した狙撃によって、

 敵を蹂躙することは容易にできてしまう程の魔導弓の技術を持つ。

 距離が取れない場合でも強引に距離は取れるが、今回は相手が悪い。

 ホロックでも、相手と時と場合で苦戦を強いられる存在なのだから。

 と言われてしまえば、ホロックをよく知る相手でも仕方ないと言われる。

 悪いなと、一言簡潔ながらにも謝罪を投げる。

 簡潔すぎるが、今彼へと掛ける言葉はそれぐらいだ───




「!?」


 ───だったのだが。

 謝罪と同時に、強烈な打撃音。

 少なくとも、奴の噛み砕く音ではない。

 音の場所は位置から界徒のものだろうが、

 位置関係の都合で、グラシャノラスが邪魔をして確認できない。 

 何が起きてるかは分からないが、


「死に晒せ畜生───ッ!!」


 やりすぎとも言える更なる強化を施し、

 その一矢を十倍にして、大量に連射し始める。

 矢は目で追う事すらできないような速度で放たれ、

 多数に放たれる光輝く矢は、昼に降る流れ星にはならない。

 矢は容易く怪物の肉を貫通し、貫通しながらも界徒には被弾することない。

 界徒には何が起きているのかが、さっぱりわからなかった。

 ただグラシャノラスに次々と穴が開いては、血液をまき散らしてるだけ。


 互いに、互いの事が理解できないままに、その戦いは終わりを迎える。

 着地に失敗した界徒は地面を転がり、その傍で亡骸が落ちて大地を揺らす。

 二人と違い、サリウスは華麗に着地を決めて、素早く弓を躯へと向けた。

 グラシャノラスは殺気に敏感。生きていればすぐにでも襲う習性がある。

 この行動に反応し、すぐにでも襲うと思ったが、反応はない。

 油断させると言う知恵を得たのかもと思ってか、


「一発撃っておくか。」


 潜む意識を強引に動かす矢を放つも、反応は変わらず。

 自分ができる完全な死亡確認を終えて、界徒の方を見やる。


「いっ───てぇ~~~!!

 なんっなんだよ! 顔面硬過ぎんだろうが!

 皮膚が鉄でできてるのかってぐらい硬ぇーしよぉ!?」


 五体満足だ。噛まれた形跡もない。

 しかし、界徒は涙目で、左腕を抑えていた。

 叫びっぷりから察するに、余り問題はないだろう。

 指は食われてない。腕もしっかり残っている。

 …なのだが、腕が明らかにおかしい状態だ。


「お前、何をした?」


 今の彼の腕は、人間の腕ではない。

 先程見たときは鍛えられた人の腕だったはずが、

 今の腕は人の肌には似合わない水色の肌に、

 動物のような鋭利な爪、びっしりと腕を覆う鱗。

 明らかに人の身体に不釣り合いな、人間離れした腕だ。


「えっと、殴りました。これで。」


 と返しながら、異形の左腕を見せる。

 当人も、異形の腕に対する理解はあるらしい。


「もしかして、引いてます?」


 正直これを見て引くな、

 と言うのは中々に無茶な話だ。

 痛みも多少引いたことで落ち着き、

 地面に寝転がった状態で対応する。


「別に、異形の種族なんぞ珍しくはない。」


 そう答えるとともに、サリウスがフードを降ろす。

 濃緑のショートヘアーは、中性的な顔立ちによく映える。

 もっとも、見せたいのはそれではなく、


「お、エルフ耳。」


 フードに隠れた、先のとがった耳。

 ゲームや伝承上のエルフが持つ耳を彷彿とさせてくれる。

 界徒とは明確に違うであろう部位に、少し目を輝かせていた。

 元いた世界では目にすることは、中々ないであろう存在なのだから、

 当然と言えば当然なのだが。


「と言うことだ。お前のその腕も『普通』だ。

 それでいいだろ。腕の一本異形で騒ぐなんて、

 そっちの人間は、随分と人の器が小さいらしいな。」


 竹を割ったような物言いに、界徒は苦笑を浮かべる。

 自分も当人も普通と称することは中々できない。

 普通の定義は究極のところ己の価値観でしかなく、

 誰一人として、それは当てはめることができないのだから。

 しかし、サリウスは逆だ。全員が普通と言う認識を持つ。

 なくはない発想だろうが、界徒にとっては面白い発想だ。


「ま、確かにそうですな。」 


 励ましでいいのかはわからないが、言葉を貰いながら砂埃を払う。

 誇れないものかと言われたら、それは別だ。寧ろ界徒にとっての原点だ。

 この力があったからこそ、こうして世界を旅しようと思えたのだから。

 今の自分はこれがなくては始まらない。なければよかったとは思わない。

 今更、悪いものなどとは思うつもりはなかった。


「それはそれとして。お前のその腕はなんだ?」


 先程の話はあくまで価値観として気にしないことだが、

 ただの人間がいきなり異形の腕になったりするなんてのは、

 この世界においても、そう簡単にお目にかかることはない。


「ドラゴンって、わかります?」


「ああ。分かる。こちらの世界にもいる…あれか。」


「俺、どうやらその末裔みたいなんですよ。」


「ほう?」


 余り驚く様子はない。

 珍しいと言えども、あんな化け物を相手にする人物。

 今更、この程度の事実で驚いたりなんかはしないのだろう。

 両親からこのことを聞かされた時の自分の驚きぶりとは、正反対だ。


「なんで人の姿になれたのかとか、

 そういった過程は全く分からないけど、

 御先祖様はとにかく竜だったのに人になって生活してた。

 俺もその一人だったけど、俺は一部分だけ戻せるみたいなんですよ。

 こんな感じに腕とか、足とか翼もでますよ。服破けるんでやりませんけど。」


 左腕を戻してみれば、先の人らしい腕には戻るが、

 彼の言葉通り、左側の袖はほとんど消滅していた。

 右の長袖とは対照的な、ノースリーブになってしまっている。

 服を着たまま翼なんて出したら、服の損壊は容易に想像がつく。

 言われてみれば、辺りに服の残骸らしき布が散開してたことにも気づいた。


「随分難儀だな。」


「ええ、本当に…ところでこれ、どうするんすか。」


 リュックサックを回収しつつ、グラシャノラスの亡骸を見やる。

 このまま放置していいものなのかどうかもわからないし、

 食えるのならば、少し興味があったりもする。


「うちの部下に回収して色々使わせてもらうさ。

 素材は強靭、肉は食える部分は美味いしな。」


「おお~!」


 これが食えるのかと言う不安と、

 未知なる生物の味。実に楽しみで目を輝かせる。

 未知の生物に目を輝かせる界徒に少し呆れつつ溜息をつく。


「こっちは部下に任せるとして、

 あのテントを回収しに行くぞ。無事だといいがな。」


 界徒へ説明しつつ、サリウスは空へと矢を放つ。

 何をしてるのかは分からなかったが、矢は赤く輝いて空へと飛んだので、

 恐らくは発煙筒のような、何かしら知らせるためのものだと一人で納得する。

 部下に任せるのに、いちいち麓へ降りるよりも効率的だ。


 幸いなことに、テントは特に酷い損傷は見受けられず、

 直ぐに回収した後に、二人は無事に下山することができた。

 本来ならばサリウスが抱えればすぐに降りられたのだが、

 『この世界を知りたい』と言う界徒の強い要望によって、

 観光のような感覚で途中からは徒歩で下山し、

 麓に着く頃には夕暮れ時になっていた。




 ───アルナスル。


「ついたぞ。ここが俺の住む町、アルナスルだ。」


 サリウスと共に到着した場所は、実にのどかだ。

 人口は、先程の山から見た割にはれなりに多く、

 盛んな様子ではあるが、発展している様子は見られず、

 町とは言うが、西洋における田舎の集落のような、

 どこか旧時代を彷彿とさせる光景だ。


「ドイツのブラウンフェルスを思い出すな。」


 御伽噺に出てきそうな木組みの家が並ぶのは、

 ドイツの田舎でも何度か見かけた光景であり、

 思いのほか別世界と言うような認識は余りない。

 とは言え、違うものはいくらでもありその筆頭は───


「あ、頭。遅かったですね。」


 言葉だ。

 二人が町中を歩いていると、

 全く聞きなれない言葉で声を掛けられる。

 サリウスが反応したことで、界徒もようやく気付く。


(うわ、でか。)


 相手は長身の男で、二メートル以上はあるであろう巨躯。

 界徒も百九十と十分大きく、見上げる機会はそう多くはない。

 浅黒い肌にサイズの合う服がないのか、少し小さめの服に何とか袖を通した状態だ。

 ラフな格好をしているものの、浅黒い肌に刻まれた生々しい数々の傷痕は、

 体躯も合わせて威圧感は相当なものになっていた。


「出迎えはシャムシールだけか?」


「グラシャノラスの解体と宴の準備で皆忙しいのです。

 あれの強固な爪、傷つけずにとるのは至難ですから…」


「だろうな。」


「知り合い?」


 二人はこっちが把握してない言葉での会話。

 何を言ってるのかさっぱり分からず、サリウスに尋ねる。

 会話はしているし、それなりに親しい間柄だとは察してたが。


「部下のシャムシールだ。でかいが気遣いができるやつだ。」


「頭、そちらの人は?」


「ゲール(異次元のあな)から来たディレント人だ。グラシャノラス討伐の貢献者でもある。

 それなりの報酬は用意しておくように。宴への参加についても、問題ないか?」


「グラシャノラスを、彼がですか?」


(あれ、何かやっちゃった?)


 シャムシールは、界徒を怪訝そうに見る。

 何処か睨むような視線に、少したじろいでしまう。

 彼もこの世界の住人。グラシャノラスについては知っている。

 異界の人間が、いきなりそんな大物を相手にできるとは思えないし、

 サリウス一人でも十分に解決できる案件でもあり、今一つ信用に欠けていた。

 二人の会話は異世界での言語なので、何を言ってるか分からないのも不安に拍車をかける。


「必要ないと言えばなかったが、こいつは命を張って貢献した。

 無謀ではない勇者には敬意を払うべきだと思うが、お前はどうだ?」


「……無論そのつもりです。ディレント人、疑って悪かったな。」


「えっと、彼は何がしたいんで? でぃれんと?」


 疑念を持ったことへの謝罪として、

 右手を差し出すも、当然だが言葉が通じてない。

 何を言ってるのか殆ど理解できてない現状で、

 差し出された右手の意味なんて分かるはずがなく。

 現状、唯一言葉の通じる相手へと尋ねる。


「後で説明するから今はその手を強く握れ。悪い意味じゃない。」


「ほいほい。」


 よくは分からないが、一先ず同じく右手を差し出して強く握る。

 少し乾燥気味でがっしりとした中年らしさ溢れると同時に、

 傷やタコなど、何かしらの経験を積んできた貫禄のある右手と言う印象だ。

 相手からも強く握り返され、シャムシールが微笑を浮かべ界徒も笑う。


「俺はこいつと風呂にでも行く。後は任せたぞ。」


「はい、分かりました。」


 握手を終えると、シャムシールはその場を後にする。

 人ごみの中に消えていくのを見届けると、先程の説明が始まる。


「なるほど…いやでも、事実じゃね?」


 確かに命がけで戦ったが、

 実際のところ活躍できたかと言われると別だ。

 運よく側面に叩き込んだ竜の拳もダメージはなくて、

 精々一秒怯んだ程度で、殆ど通用してないに等しい。

 しかも殴った時に鉄板を素手で殴ったときのような感覚で、

 ダメージを受けていたのは、どちらかと言えば界徒のほうだ。

 言ってることが間違ってるとは、あまり思えなかった。


「お前が活躍したか、どうかの問題じゃあない。

 お前が敬意を払うべき人か、どうかの判断だ。」


「貰えるものは大抵は貰うんで、基本は遠慮しませんけどね。

 ところで、ディレントってなんなんで? 何度か言ってましたが。」


「ラスト語───ああ、この世界の言葉で『異世界人』の意だ。

 ゲールという、お前をこっちに来させた異次元の穴で来る奴は、

 ニフォンだろうとアメリカだろうと、ディレント人と一括りに呼ばれる。」


「おー…」


 山を降りる間にいくらか話はしたが、

 固有名詞はサリウスが避けていたのか、今初めて聞いた。

 世界を旅して、必ずするべきことの一つ。言葉を知ること。

 これが界徒はたまらなく好きで、旅をする醍醐味の一つとなる。

 覚えるのは大変だが、覚えた後は言葉が通じ合うその瞬間が好きだ。

 だから、言葉を覚えられる瞬間が楽しく、笑みを浮かべていた。


「ところで、どこへ行くので?」


「風呂だ風呂。土塗れで宴に参加できたものでもないだろう。」


「そっすなー。」


 異世界の水道事情。

 色々気になりつつも、同時に不安だ。

 ゲテモノ料理も割と平気な彼でも流石に不安になる。

 水と言う、人にとって欠かせないものと同時に、文字通りの生命線。

 長らく戻ってないにしても日本の水道の衛生管理が良すぎたのもあって、

 他国の水にいい印象はなく、今から行く風呂も少々不安だった。

 して、その結果はと言うと───


「あの、何で滝なんですかね。」


 バスタオルを巻いた界徒の一言は、

 水の質よりも、形状の問題だ。

 まさかの、滝。


「なんだ、滝風呂知らんのか?」


 人工的に滝の様にお湯が流れる、所謂滝風呂。

 日本の温泉地でも見かける、とりわけ珍しいものでもないが、

 異世界で最初に出会うとは思わなかった。


「いやまあ…大阪とか結構あったけども、ね。

 この世界では滝風呂がメジャーとかだったりします?」


「この辺りは全部滝風呂だが、遠出すればそうでもない。

 狩りを終え、獲物の怨念を祓うが為に浴びる…俺の故郷の風習だ。

 故に此処には滝風呂だけだ。他がいいなら、時間はかかるが用意するぞ。」


「いえ、寧ろそういう文化とか風習とかありのままを受け入れるのが俺なんで。

 それはそれとしてなんですが、サリウスさん───あばた女性だったんですか。」


 中性的な声と、男性とも受け取れると言うべき端正な顔立ち。

 一人称が俺で言葉遣いも男らしいもので、その上服も体型が出ない恰好。

 女性だと言う事に気づけたのは、行衣に類した服へと着替えた今が初めてだ。

 ポンチョが着太りさせていたことで判断しづらかった体型も、

 今見てみれば実にスレンダーで、女性らしい身体のライン。

 これで女性ではないと気づかない方が無理だ。


「ん? それがどうかしたか?」


「すみません、男だと思って接してました。」


 素直に謝罪。

 相手はとんでもなく強い存在もあってか、

 直ぐに素直に謝らないといけない気がして、

 見事に綺麗な土下座をかます。


(えっと…これ、意味はなんだったか。

 確かこれ、ドゲザエモンって言うやつだったよな。)


 日本文化はさほど知識がなく、

 土下座の意味も余り分かってない。

 何がしたいのかよくわかっておらず、返答に困る。


(ドゲザエモンって何だっけ…分からん。

 レオやアリスの方がニフォンに詳しかったな。

 言葉だけでは対応しきれない行動、今度調べておくか。)


 明確な意味は把握できていないが、

 謝罪をしていることは言動から把握できるので、


「生憎と俺は女らしさを求めていない。

 謝る必要はないしさっさと洗って出て宴だ。」


 そういって石鹸を背中に置いて、最寄りの滝風呂へ向かう。

 許されて肩の力が抜けながら界徒は顔を上げる。


「え、服着たまま?」


「いや、これは風習の滝行用で着てるだけで、

 後で脱いで二度風呂だが…なんだ、俺の裸に興味があるのか?」


「えー、健全たる男ですからね。」


 ストレートに尋ねてくる相手に、苦笑で返す。

 ないと言えば嘘だし、人並みには持っている。

 しかし、いかんせん旅人である以上身を固められないし、

 この不衛生かつ命を落とすこともあるだろう生活を理解して、

 更にあの力を理解してくれる人なんて、果たしているのか。

 ある意味、その理解者を求めて旅をしてるのも僅かながらにある。


「やめとけやめとけ。火傷が肩から腰まであるんだ。

 欲情どころか、見た奴は卒倒ものの猟奇的光景だぞ?」


「あ、それは別の意味で遠慮しときます。」


 初めて微笑を浮かべたサリウスに、手をぶんぶんと振って否定する。

 別に火傷の人が怖いとか忌避とかするわけではない。

 消えない傷と言う人にとってはかなりデリケートな部分に

 安易に踏み入るのはよくないと思っているからだ。

 彼女の表情から全く気にも留めなさそうではあるものの、

 ずかずかと知りたい、とも言える程のものでもない。


 情報量の多さから水の質とか完全に忘れた状態で、

 素直に身を清めて渡された服を着て外へと出る。

 滝に打たれ過ぎて背中が軽くビリビリしていたが、

 こういう経験ができるのも、旅の醍醐味と受け取りそれはそれで充実していた。

 着替えた格好は、クリーム色を基調とした民族風のインナーとハーフパンツと、

 軽快で動きやすいし、何より昼までの恰好よりも涼しくて開放的な格好だ。

 サリウスは前述の火傷を隠すためなのか黒い長袖のインナーにしてるが、


「エロい。」


 女性がその恰好をやれば身体の線は浮彫りで、実に艶めかしい。

 最初から性別が分かっていれば案外気にしないのだが、

 分かっていなかったせいで、変に意識してしまう。


「口に出ているぞ。欲求不満なら知人の遊郭を紹介するが、いるか?」


「こっちにも風俗あんの!? でも流石にやめとくわ!」


 いくら女日照りの日々を過ごしてると言えども、極端と言うほどでもなく。

 何より、店の人でない女性の勧めでそういうところには行きたくはない。

 今はまともなものを食えてないので飯の気分、と言うのもなくはないが。

 何処か民族的な風習を持ったサリウスが頭たる宴ともあってか、

 アイヌ民族とかの儀式のような形式がいるのかと思うも…


「よぉディレント人! これ飲めるかぁ?」


「えっと…飲めって言われてるの?」


「ああ。カイト、それは酒だから程々にしておかないと死ぬぞ。」


 祭壇らしき場所に、真新しい巨大な顔の骨が置かれている程度で、

 実際はよくある宴会か、それ以上のどんちゃん騒ぎだ。

 酒を呷り、歌って踊って食っての、やりたい放題な宴会。

 実に界徒好みのもので、言葉さえ分かれば普通に馴染んでいる。


「あ、サリウスさーん! これめっちゃうまいけどなんすかー!」


 よく焼けた紫色の肉を渡されて、そのまま普通に食べる界徒。

 葡萄の色のような毒々しい色をしたそれだが、食べてみれば印象とは全く違う。

 ステーキのような歯ごたえに噛むほど旨味が増し、飲み込むのを躊躇いたくなる。

 何より、今まで食ったことがないような不思議な味だ。


「あ。」


 食ってるものを目にすると、

 サリウスの表情が気まずそうな顔に変わる。


「え、なんすか。毒入り? ひょっとしてやばい?」


「いや、毒入りじゃあないんだが…それは、グラシャノラスの胸肉だ。」


 思いのほか普通のものだ。

 あんな怪物がこんな美味いのか、

 なんて思うが、言ってしまえばそれだけ。


「何か問題ありましたっけ?」


 狩った相手に苦手意識を持つとか、

 あれを食ってると言うことで食欲が減ることはないし、

 この程度の問題で、サリウスが気まずそうにするとも思えない。


「グラシャノラスの主食は『人』だからな。

 抵抗あるだろうから、尋ねるべきだと思ったが、遅かったか。」


 そういうことね、と納得する。

 主食が人間であるのであれば、

 結果的に共食いしていることへと繋がる。

 確かに、それは聞いておくべきことではあるが。


「意外と大丈夫ですよ。ハゲワシやワニって言う、

 人間を食うこともある動物の肉を食った事ありますから。

 もっとも、食ったそいつらが人間を食ってたかはわかりませんが。」


 人を喰う生物なんてのは、別に元いた世界でもある話だ。

 もっと身近なもので言えば海で自殺した人間を魚が食う事だってある。

 遠回しに人を食べているなんてことは、決して珍しいことではない。

 直接のカニバリズムならまだしも、この程度の遠回しは気にしなかった。


「ざっくりしたやつだな。」


「お互い様でしょ?」


 細かいことを気にしないのはお互い同じことだ。

 余程の事がないと受け入れられないであろう腕を普通と称する。

 そんなことが言い切れる奴を、ざっくりしてないと誰が言えようか。


「違いない。」


 ごもっともな意見であり、

 サリウスは軽く笑いながら酒を呷った。




 宴会の参加者の大体が寝落ちして、

 大分静まり返った夜のアルナスルの中。

 残った人たちが静かに酒と残り物に手を出す中、

 界徒は歯を磨きながら、空を見上げている。

 人工的な光が少ないからか色んな星が見えているが、

 見覚えのある星は見当たらず、異世界だと再三理解していく。


「飄々とした態度とは裏腹に、真面目だな。」


 感傷に浸っていると、

 何かを噛みながらサリウスが姿を見せる。


「あいにくと虫歯が大嫌いでね。」


 律儀に歯を磨いて寝るタイプには見えない印象があるが、

 美味いものが食えなくなっては、旅の醍醐味が台無しになってしまう。

 故に歯磨きはできる状態なら、なるべく忘れないように心掛けている。


「サリウスさんも、歯磨いた方が身のためですよ。」


「練り物で今やってる。」


「あ、ガムタイプですか。」


 ガムも結構な歯磨きになるとは聞く。

 ミント系のガムはより良い効果もあるので、

 ブラシではなく其方を使うか、併用する人も多いが、

 こちらでもそういうのが存在しているらしい。


「む、これがお前の言っていた『ガム』なのか?」


 朝に渡した保存食の感想が『味のしないガム』と彼は答えた。

 そういうものがあるのかと思っていたが、今噛んでるそれがガムの類だと知る。


「似たようなものが、あっちにもあったんで。」


「なるほどな…確かに、保存食と味は似ているな。」


「いや、似てるも何も味がないんですって。」


 無味なんだから似るとかどうこう以前の問題だ。

 どっちも味を数値上で言えばゼロに等しいもの。

 無味で違うって、一体どこに似てるとかの概念があるのか。


「ところで、何の御用で? 雑談ですかい?」


「ああ、これを渡そうと思ってな。」


 近くのテーブルへと、二つほど物を置く。

 一つはドサリと言う重い音と共に置かれた布袋。

 小銭のようなじゃらじゃらした音から何かは察する。

 もう一つは、瞳に見える赤い宝玉のようなものと、

 小骨で構成された首飾りらしきものの二点だ。


「グラシャノラスの討伐の報酬だ。

 明確な貢献ではないから控えめだがな。

 通貨のギルと、こっちは個人的な贈呈品になる。」


 ギルがどんなものか気になったのもあって、

 紐解いて袋の中を見るも、元いた世界とさほど違いはなさそうに見える。

 蛇らしき生物が映ってるがオーストラリアにも似たものは存在するので、

 やはり珍しさは感じられず、どちらかと言えば気になったのは、量。


「…滅茶苦茶多くね?」


 こちらの貨幣価値を把握してないが、

 百枚どころではない大量の銀貨。


「これ一枚幾らぐらいですか?」


「お前たちの世界との相場が判断つきにくいから、

 完全な憶測になるが…羽のついた筆は、分かるか?」


「羽ペン?」


「羽ペンにもいろいろ種類があるんだが、

 余程安物を除けば、その銀貨で一本は買えるな。」


「羽ペンって確か、大体五百円ぐらいだっけ。」


「それを四袋分、合計二千枚の百万ギル。」


「───は!?」


 尋常じゃない額に、言葉を失う。

 一枚五百円と想定しても、百万円の報酬。

 多少低く見積もって一枚四百円としても、八十万円に相当する。

 羽ペンの値段から物価の相場に余り差はないとは思うも、

 あんな程度の活躍しかしてないのに、随分な金額を貰うとは予想していなかった。


「ってちょっと待った。相場。貨幣価値ってどれぐらいだ?」


 ひょっとしたら貨幣価値が低いのかもしれない。

 ぬか喜びは嫌な予感がするので一先ず尋ねてみるが、


「銀貨二枚で良い飯は十分食えるだろうな。」


 二枚、つまり千円分もあれば十分な代金。

 現代でも店によるのでその辺は曖昧だが、

 ほぼ相場が変わらないと言うことは、実質百万円と同等。

 再度この事実に気づき、震えた声で返す。


「こんなに貰っていいので…?」


「お前、俺があっさり倒したから勘違いしてると思うが、

 あれは最上級の危険生物だ。奴一匹で小国が滅びることもある。

 相応の額は、貢献の度合いに関わらず出すことにしているんだ。

 寧ろあれを相手にしながら、この程度の報酬なのかと嘆く人すらいるぞ。

 俺達は無謀な者に敬意は払わないが、勇敢な者には敬意を払う方針だ。」


 運よくとは言え大変ありがたいものだ。

 何をするにしても、お金と言うのは必要になる。

 何をするにしても、それまでの食いつなぐ資金があるのは大助かりだが、


「と言っても、すぐに溶けそうっすね。」


 どちらかと言うとその表情は嬉しさよりも、不安。

 少ない時間で、サリウスも彼の人となりは理解している方だ。

 彼らしからぬ表情に、疑問を持つ。


「なんでだ?」


「俺、らすと語? でしたっけか。

 分かるの『挨拶』と『ありがとう』だけですよ。

 こんな状態で旅しても、十中八九騙されて終わりますって。」


 今回の宴で散々耳にしたことで、

 だから何となく感覚ではあるが、その二つは覚えた。

 だがそれだけだ。生きていくには足りなさすぎる。


「なるほど、まずは勉学に励むための軍資金にすると。」


「そういうことですよい。と言うわけで、

 教えてください。多少値が張ってもいいんで。」


 言葉と言う、極めて重要な存在。

 安く済ませればかえって大きな損を被る可能性が高い。

 多少値が張ってでも、信頼のおける人物の方が大事だ。

 幸いなことに、此処には現状において最も信頼のおける人物がいる。

 頼むならば彼女しかいないと思い、頭を下げる。


「断る。」


 即答の拒否。

 断られるとは思わず、唖然とした表情で顔を上げる。


「えっと、もしかして頭下げるってまずかった?」


「違う違う。俺は他人に教えるのは下手だ。

 もっとましな奴に教わる方がお前にとってもいいだろ。」


 返ってきた言葉に、安堵の息をつく。

 どうせなら上手い方が効率も良くなる。

 彼女が勧めるのであれば、それでもいいだろう。


「イズとカリコ様は論外だからアリアさんかリラか。

 お前の性格からリラの方がよさそうだな、明日連絡しておく。

 明後日に出るから、必要なものは明日買い揃えておけよ。」


「あのー、アリアさんって方は、

 そんなに俺に向いてないんですか?」


「快適すぎる環境で人を骨抜きにしてくるからな。

 昔研修に向かわせた奴が、二度と帰ってこなかったぞ。

 あそこは治安は良いし、そいつも元気そうだから別にいいが。

 と言うわけだ。お前が旅をしたいのであれば、早く出たい方を選ぶ。」


「…それは、助かりますわ。」


 普段が楽しいと言えども快適と言うにはほど遠い旅。

 快適と言う誘惑は旅に必要と同時に、難敵な存在になる。

 一度快適の沼に沈めば、旅と言う陸地には戻れなくなりかねない。


「言葉が通じないなら、街までの護衛もいるよな。

 数日後にリラの方に会う予定はあるし、ついでで俺がつくか。」


「お、それは大助かりですわ。」


「値段は覚悟するんだな。」


「割引は…いや、いいです。聞かなかったことにしてください。」


 仮にも頭と呼ばれる人が護衛につく。

 かなりの値段と思ってまけてもらおうかと思ったが、

 これは他人に命を預けることに他ならないことだ。

 命を預ける相手への報酬を安く済ませるのは、

 命がけで護衛する相手に対して、失礼極まりない。


「フッ、安く済ませなくて正解だな。

 安くしてたらお前、蹴り飛ばしてたぞ。」


 考えを改めた界徒に笑みを浮かべる。

 彼女の言葉は冗談ではなく本気でするつもりだった。

 報酬とはすなわち、自分達への評価と言うこと。

 当然、報酬を落とせば、安く見られてると言うことに他ならない。

 それに、自分の命を安く見ているのと同義でもある。


「来たばかりのディレント人専用の割引があるから安心しろ。」


「お、マジっすか。でもいいんですか?」


「こっちの設けた割引だから気にするな。

 第一、ディレント人の殆どがは金がないんだ。

 割引でもしないと、即座に借金にまみれになるぞ。

 もっとも、利用して借金漬けにするイズとかもいるが。」


「俺が寧ろ例外ってわけですなぁ。」


 運よく報酬を得られたが、

 本当にこれは極稀に起きるケース。

 いい状況からのスタートで、心底安心する。


「ところでこっちの、首飾り? は何なので?」


 ボーンネックレスの類なのは間違いないが、

 やはり目立つのはロケットの様に中に入った。ルビーのような紅い宝玉。

 宝石類の類とは無縁の人生で、少し目を輝かせていたものの、


「グラシャノラスの骨と眼球でできた首飾りだ。

 弱い獣が寄り付きにくくなる、魔よけの類と思え。」


「お、それはいい───ってちょっと待ってください。眼球って腐りません?」


 それが何かを理解すると、少し青ざめた顔に変わる。

 人間でいえば死体になった後、眼球も水分が蒸発して形が崩れていく。

 技術力を把握してない以上、こういう考えになるのは至極当然だ。


「何故か腐らないんだ、その眼球。

 眼球だけは生前のまま機能してるとか、

 今も生きているとかそういう説もあるんだが、

 何分あいつらは個体数が多くないし多くても困る。

 調べようにも母体が少なすぎて、結局研究は進んでいない。」


「なるほど、そりゃ魔物も避けるわけだ。」


 あれほどな獰猛さを持つ獣の首飾りをつけていて、

 その上その首飾りの瞳は生きていると言う一説もあれば、

 大概の奴は近づくなんてことは、考えないだろう。

 獣はそれを本能的に察知しているのか。


「でもいいんすか? 高いでしょこれ。」


 貴重な品を使った逸品。

 素人目に見ても高額な代物なのは間違いなく、

 出会ったばかりの人間に贈っていいものなのかと不安になる。

 貰える物なら大抵貰うが、やはりあの程度の貢献で貰うには、

 余りに不釣り合いな行動にしか感じられず、少し躊躇う。


「お前が護衛への報酬を安くしなかったのと同じで、

 お前に対する評価を、安く考えてはいないってことだ。気にするな。

 先程も言ったが勇気ある者には敬意を払う。物と言う形だが、その証と思え。」


「…では、ありがたく受け取ります。」


 そこまで言われたら、

 受け取らないことの方が失礼だ。

 これ以上の問答は不要として、素直に受け取る。


「話は終わりだ。俺は寝る。」


「俺はもうちょっと外眺めておきます。」


「なら、これお前の部屋に運んでおくぞ。」


「了解です。」


 首飾りと出された銀貨をまとめて袋詰めし、サリウスは宿へと戻る。

 暫くはその後姿を見送って静寂が訪れると、再び空を見上げながら歯を磨く。

 これからの異世界の旅…正直な感想を言うと、


(不安だな~~~…)


 はっきり言って、不安しかない。

 人生で一度だってあるか怪しい、異世界の旅。

 最初は悪くないどころか、最高としか思っていなかった。

 言葉の不便さえ目をつむれば嘗てない冒険が待ってると思ったが、

 時間がたった今は、そんな感想は出てこなくて不安が募る。


 幸先は良いのかもしれないが、いかんせんよすぎだ。

 宴会に珍味に報酬。実に贅沢な一日で、今までも指折りの思い出になるだろう。

 同時にこんなにいい初日では、後が物足りなくなりそうで少し怖くもあった。

 今日に負けず劣らずの場所が、この先にもあるように。流れない星へと界徒は願う。

 そんな彼の願いが叶うかどうかは、また別の話。

どうも、OMFと言います

拙作の拝読ありがとうございます


一月ぐらいを目安にしてたら普通に遅れてました

多忙ではないんですが、精神的疲労ですかね

ちょっと生活環境酷すぎるもので…

嘘としか思われないほどに混沌ですし


前回はなるべく固有名詞は出さないようにしてたので、

今回は少しだけ、広げていく感じに出しました

少しずつ世界観を広げられたらいいな、なんて思ったりもしてます

(のっけからこのスローペースで果たして大丈夫かとも思うが)


よかったら今後もよろしくお願いします


※ここから追記※

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