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6話 冒険者ギルド

 村を出て街道を歩くこと10日ほど。

 隣町のリンクスにたどり着いた。


 リンクスは広い街ではないものの、それでも、故郷のエルグと比べると大きい。

 大体、エルグの10倍くらいだろうか?


「おぉ」


 話は聞いていたが、実際にリンクスに足を踏み入れるのは初めてだ。

 まだ足を踏み入れただけなのだけど、ワクワクしてしまう。

 ちょっとした旅行気分だ。


「このリンクスの冒険者ギルドで登録をすれば、俺も晴れて冒険者の仲間入り、っていうわけか」


 ようやく、夢を叶えるための第一歩を踏み出すことができる。

 そう思うと、ワクワクしてきた。


「よしっ、やってやるぞー!」


 テンションに任せて、ついつい手を突き上げて叫んでしまう。

 街の人が何事かとこちらを見る。


「……」


 我に返ると恥ずかしくなり、俺はそそくさとその場を後にするのだった。




――――――――――




 冒険者ギルドというのは、冒険者を管理するための組織だ。

 各々が好き勝手に依頼を請けるようなことがあれば、混乱が起きてしまう。

 そのため、冒険者ギルドが依頼を管理して、斡旋するようになった。


 他にも、有料ではあるが冒険に役立つアイテムや情報を提供してくれたり。

 仲間を紹介してくれたり、トラブルの仲介をしてくれたり。

 様々な方法で活動をサポートしてくれている、冒険者にとって欠かせない組織だ。


 建物の中へ入り、受付へ。

 そして、俺たちと同い年くらいの受付嬢に声をかける。


「すみません」

「はい、冒険者ギルドへようこそ。依頼ですか?」


 笑顔が似合う元気な子だ。


「いえ、冒険者登録をしたいんですけど」

「わかりました、冒険者登録ですね? 登録を希望するなら、冒険者についての説明はいらないですか?」

「それは大丈夫です」

「わかりました。じゃあ、冒険者になった後のシステムについて、簡単に説明しますね」


 受付嬢は明るい笑顔と共に、色々なことを説明してくれる。

 その内容をまとめると……


 冒険者のランクは、FからSの7つに分けられていて、Sが最上位となる。

 Fは、駆け出し冒険者で、新米。

 Eは、そこそこの経験を積んだ、一般的な冒険者。

 Dは、それなりに名前が売れてきた中堅。

 Cは、ベテランと呼ばれるレベルの高位冒険者。

 Bは、二つ名を持つベテラン中のベテラン。

 Aは、国に数人しかいないと言われている、最上位の冒険者。

 Sは、英雄と呼ばれる存在であり、現在、世界で7人しかいない。


 ランク毎に請けられる依頼が決まっており、自分より上のランクの依頼を請けることはできない。

 ただし、適正ランクの仲間がいるのならば、その限りではない。


 ランクを上げるためには、試験を受けて合格しなければいけない。

 試験は毎月一回、開催されている。

 条件を満たしていれば、何度でも受験することが可能。


 依頼の難易度に応じて、ポイントが発行される。

 ポイントはギルドが支給するアイテムや情報と交換することが可能。


 しかし、一年に一定以上のポイントを稼いでいない者は、なにかしら特別な事情がない限り、冒険者の資格を剥奪される。

 これは、仕事をしない冒険者を排除するためのシステムだ。


「……などなど、基本的なところはこんなところでしょうか? 他にも色々とルールはありますが、そこは自分で学んで覚えてくださいね」

「わかりました」

「それじゃあ、こちらの用紙に必要事項を記入してください」


 受付嬢から用紙を手渡された。

 名前や年齢、出身地、女神さまから授かったスキルなどの記入欄がある。


 それらを記入して……ふと、途中で迷う。

 俺の今のスキルは『天候操作』だけど、女神さまから授かったスキルは『天気予報』だ。

 この場合、どちらを書くべきなのだろうか?


 迷った末に、女神さまから授かった時のものがいいだろうと、スキル欄は『天気予報』と書いた。


「終わりました」

「はい、ありがとうございます。えっと……ユウ・ロウェルさんですね。18歳で、出身地はエルグ村。それでスキルは……て、『天気予報』?」


 受付嬢の顔が引きつる。


「あのぉ……このスキルはいったい?」

「名前の通りで、天気を予報できるんです」

「……それだけ?」

「それだけですね」

「……」


 沈黙が流れる。


 ものすごく微妙な顔をしているけれど……

 やはり、これだけじゃあ良い印象は与えられないみたいだ。

 訂正しておこう。


「実は、スキルが進化したんです」

「進化?」

「『天気予報』から『天候操作』になりました。だから、冒険者としてやっていくことは、十分に可能だと思います」

「天候……操作、ですか? うーん?」


 いまいちピンと来ていない様子で、受付嬢は小首を傾げた。


 あれ? おかしいな?

 てっきり、「それはすごいですね!?」なんていう反応が返ってくると思ったんだけど……


 すごいよな、天候操作?

 だって、天気を操作できるんだぞ?

 自分の思うようにできるなんて、これ以上ないほどの武器になる。


「……いや、待てよ?」


 ふと、思う。


 普通の人は、俺のスキルの有用性を理解できないのではないか?

 だって、天気だ。

 天気を操作できると言われても、ピンと来る人は少ないと思う。

 スキルを授かった当初は、俺も外れスキルと思っていたくらいだし……


 俺は天気の勉強をしたため、天気を操ることがどれだけ強力なことなのか、理解できる。

 しかし、普通の人はそんなことは知らない。

 天気に詳しい人なんて少ないだろうし、このスキルの有用性を理解するのは難しいだろう。


「困りましたね……有用なスキルがなければ、冒険者になることはできないんですよ」

「どうしてですか?」


 俺の疑問に、受付嬢は丁寧に説明してくれる。


「全部が全部というわけではありませんが、冒険者の仕事は危険が多いですからね。そのため、戦闘に向いたスキルが必須なんです。でないと、大怪我をしたり、最悪、死んでしまい人生をリタイアということになりかねません」

「なるほど」

「なので、ある程度の戦闘に耐えられることがわかるスキルを持っていないと、登録は認められないんですよ。無理に冒険者になっても、ユウさんが危険な目に遭うだけですし……それに、依頼が失敗するということは、冒険者とギルドに対する世間の評価が落ちてしまいます。まあ、一つの失敗で積み上げてきた信用がバラバラになるということはありませんが……しかし、失敗はしないに越したことはありませんからね」


 反論の余地のない話だ。

 納得するしかない。


 しかし、諦めることはできない。

 どうにかして、俺のスキルの有用性を認めてほしい。


 でも、そのためには、なにかしら依頼を達成する必要がある。

 だけど、冒険者登録をしなければ依頼を請けられないわけで……

 うーん、ジレンマの連鎖だ。


「なんとかなりませんか? 俺、絶対に冒険者になりたいんです」

「うーん、そう言われましても……」

「子供の頃からの夢なんです。それに……王都で待たせている人がいるんです」


 英雄になるため。

 そして、アルフィンと一緒に冒険をするため。

 俺は、絶対に冒険者にならないといけないのだ。


「……一つだけ、方法があります」


 そんな俺の熱意に折れたのか、受付嬢は最後の手段を提示してくれる。


「冒険者ランクGならば、スキル関係なく、登録をすることができます」

「ランクG……? それは、どういうものなんですか?」

「冒険者見習い、という感じでしょうか。Cランク以上の冒険者に弟子入りすることで、Gランクとして冒険者登録をすることができます。依頼を請ける際は一人ではダメで、必ず師が同行すること。報酬は半額。また、ギルドだけではなくて、師の判断で冒険者を辞めさせることも可能です」

「なるほど、そんな制度が……」

「スキルと関係ない分野で優れた才能を発揮する方も、稀にいますから。そういう方をすくい上げるために設けられた制度なんですよ。ただ、あくまでも見習い扱いのため、今言ったように色々な制限がかけられますが……どうしますか?」

「それでお願いします」


 即答した。

 他に道がないのならば、過酷であろうと茨の道であろうと、前に突き進むだけだ。


「わかりました。では、師となるCランク以上の冒険者を探して連れてきてください」

「紹介はしてくれないんですか?」

「さすがにそこまでは……師を見つけることも含めて、冒険者になるための試練と思ってください」

「なるほど……そうですね、わかりました」

「がんばってくださいね。私は、ユウさんを応援していますから」

「ありがとうございます」


 礼を言い、ギルドを後にした。


 外に出て、少し歩いたところで立ち止まり、考える。


「師匠になってくれるような、Cランク以上の冒険者……そんな人、うまく見つけられるかな?」

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