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67話:作戦決定

「シラユキ、キミの意見を聞かせてくれ」

「この洞窟の外となれば、いよいよ私にとっては管轄外。何も言うことは無いな。諸君に任せるさ」


 話し合いを仕切り直す意味も含めて、無言で座し続けているシラユキへ問い掛けた。

 灰銀鎧のゴーレムは真紅眼光をこちらへ向け、高低の重なる声で返してくる。

 予想通りの全任せ発言ではあったけれど。


「ただ足が要るなら、空間転移で運ぶぐらいは協力しよう」

「意外だな。協力してくれるのかい?」

「私の知っている限り、最も賑やか……いや、騒がしい継承者一党だからな。私も諸君の喧騒に中てられたのかもしれない。時には役割以外の余事にかまけてみるのも良いと思っただけさ」


 表情変化のない兜に、揺れ幅の読めない二重音声。全体の要素からアルデ以上に内情の知れないシラユキだが、語る言葉に虚飾は感じられなかった。

 僕達へ寄った提案の旨は、他の面子にも驚きの顔を描かせている。シラユキの発した意見が予想外であるあまり、さっきまでの紛糾した空気が完全に払われてもいた。


「うん、これで目処が立ってきたか。ゾン子はどう思う?」

「ヴ……ヴ……」

「キミは相変わらずと」


 流れ的にゾン子へも異変があるのではないか。そんなことを少しだけ考えて話を振ってみた。

 が、こちらはまったくの想定通り。意味のある言葉ではなく、ただの呻き声だけが返ってくる。

 出会った時から変わらない安定ぶりは、残念さよりいっそ安心感の方が勝るほどだ。


「それじゃ皆の意見も出尽くしたようだから、方針を決定しよう。水場の確保はやはり無視すべきではないと考える。ここで道が拓けたことを幸運として、押さえておきたい。よって新規洞窟の探索と湖の確保を実行する。目的毎に活動するメンバーを絞り、それ以外は通常の役割で働く形をとる。ダンジョン構築は停滞させず、新洞窟側と並行して進めよう。そこでルシュメイア」

「なんじゃ」

「洞窟探索は自律型の魔生植物による複数部隊を作り、それぞれ異なるルートで行ってもらいたい。未知の領域へ放つことは育て主として容認し難いかもしれないけど、キミが手ずから育成した植物君達だからこそ可能な仕事になると思ってる。どうだろう」

「ふっ、口が巧いの。そう言われたうえで拒絶しては、妾自身の無能を晒すに等しいではないか。致し方ない。職務に合致したものを編成しておこう。主殿の令へ従わぬ訳にもいかぬからな」

「頼んだよ。クラニィも選抜に協力してくれ」

「はい、分かりました」


 シラユキのお陰で場が落ち着きを取り戻し、ルシュメイアも頭を冷やすことができたようだ。

 特に反論するでなく、冷静に師事を受け入れてくれた。

 部隊編成の補佐にクラニィを付けておけば、堅実な調整が叶う筈。まず問題ないだろう。


「洞窟湖の制圧には大型粘体獣の擬態を見破ることができるレイド、直接戦闘要員としてゾン子を派遣する。湖までの移動はシラユキの転移を使用だ。補給品もシラユキの異空間へ置き、状況が悪化した場合、即座に撤退できる形式を整えたい。なにか意見は?」

「レイド、リョーカイしました!」

「ヴ……ヴ……」

「早速使い倒されるとはな。手を貸すと言った手前、断るもない。継承者の求めに応じよう」


 レイドとゾン子も文句なく受諾してくれた。

 シラユキも思った以上にすんなり受け入れてくれたので助かる。

 異空間を介した転移手段を使うことで、移動のみならず緊急避難も簡単に行うことが可能となった。複数物を置いておくこともできる異空間は、臨時拠点としても有用だ。こちらが攻撃を加え、敵の反撃がくるまえに離脱し、状態を整えてから再び攻撃するという一撃離脱戦法が使えれば、戦況はかなり有利になる。

 深追いを禁じて着実に詰めていけば、目標制圧の難易度は大幅に引き下げられる。シラユキが協力してくれるからこその好手。湖の確保を認める決め手となった。


「プルプル?」

「プルルンの消化能力は、粘体獣に効果が薄いからね。今回は出撃せずだ。こっち側の仕事を引き続き頼むよ」

「プルル~」


 プルルンは机の上で薄く潰れ、そのまま椅子の上へ流れ落ちてしまった。

 攻略組に入れなかったため、残念さを全身で表明している。

 彼には悪いけれど、相性問題はやはり軽視できない。プルルンの分までレイドとゾン子に頑張ってもらおう。


「カリナとアルデは制圧班の活動に必要な物資を選定し、準備をしてくれ。敵の規模によっては長期戦も想定される。そのことも考慮してくれると助かる」

「カシコマリマシタ」

「役立ちそうな魔導器を見繕っておく」


 カリナ達も返答はスムーズにきた。

 元々から湖制圧賛成派なので危惧もない。裏方としての助力に期待する。


「目的は洞窟湖と周辺に生息する魔物の討伐。敵勢力を排し、湖を完全に支配下とすること。粘体獣以外の敵勢が確認された場合、僕へ報告を上げ、指示を仰ぐように。最初に魔生植物による調査部隊を送り出し、報告を待つ。これを受けた後、洞窟湖の制圧班は出動するように。以後、現地活動メンバー以外は平時の仕事を続行だ」

「プルー」

「ヴ……ヴ……」

「ではそのように」

「ふむ、任されよう」

「乗り掛かった舟だ」

「皆さん、よろしくお願いします」

「頑張ッカテクダサイ」

「ボクにおっまかせー!」

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