96 冒険者Aさんと盾のあれ・これ・どれ?
あらすじ:攻撃スキルの単発ぶっぱは、逆に危険だそうです。
視点:Eランク冒険者 ソーサラーLv1 ノブユキ・ムトウさん
『』:アルファさん
「っ!!!!!??」
ああ・・・シゲのこの反応・・・これは駄目ですね。
あまり、お師様のお手を煩わすのもご迷惑ですし。
ここは私が・・・。
「うん・・・シゲ?
その様子だと{防具}だと思ってたのだろうけどね。
盾は分類で言えば{武器}なんですよ?」
「「え”え”え”っ”!?」」
『そっちのねーちゃんも一緒に驚くんかい。
ま、しゃーないんやけどな。
特に【フソウ】って、他の大陸と違って
{武器屋}とか{防具屋}って無いからなー』
「この町みたいな、小さい町もそうですよね。
全部纏めて{鍛冶屋}で受注生産ですから。
ギルド御用達の【ビアー】でも
{武具ショップ}で一纏めになってますし。
多分、知らない人の方が多いんじゃないでしょうか?」
「あの・・・、私も知りませんでした」
「僕も防具だと思ってました、うおっ」
「あ、あの、おでも・・・」
「あ、あのその、わ、わたしも・・・」
『わはは。
何や、モブ子ちゃん達もかー。
こん中で知っとったのはユキだけやったんやな。
まー、纏めて教える機会と思ったら丁度ええか。
・・・おっ! そうや、ユキ。
知ってる範囲でええから、説明してみてくれるか?』
・・・!!
こ、これは・・・大チャンス到来ですか!?
上手く説明できれば、お師様に誉めて・・・いえ!!
抱きとめて、頭を撫でて頂けるかも!!?
「(じーーー)あらあら、うふふ~」
「それでは僭越ながら、私の知っている範囲で
簡単な説明をさせて頂きますね。
・・・そもそもですね、{防具}とは何でしょう?
モブコさん、分かりますか?」
「えっ!? 私ですか!?(あたふた)
ぼ、{防具}とは! ・・・えっと?
・・・体に身につけて、体を守る物?」
「はい、その通りです。
さすが、専門の戦士クラスの方ですね、お見事です」
「え? あ、はい、えへへ(照れ照れ)」
「「・・・・・・(ぎりぃっ)」」
「えっと・・・ですね、少し極端な話になりますが
私は{武器}と{防具}の一番の違いは
結局の所、どういう目的で身につけているかどうか?
・・・だと思っています」
「どういう目的かどうか・・・ですか?」
『ほーー?』
「へぇ・・・まあ、確かに、少し極端ですね」
「先程モブコさんがおっしゃった通り。
{防具}とは、攻撃を受ける事を前提として
そのダメージを減らす目的で、身につける物ですよね?
・・・それでは皆さん。
例えば、想像してみて下さい。
最初から、相手に叩きつける、攻撃する事を目的に
・・・鎧を手に持ったとすれば
それは立派な{武器}ではないですか?
少なくとも、もう{防具}とは呼べませんよね?」
「・・・・・・あ、なるほど。
そう考えたら、例えば、鎧じゃなくても
その辺に落ちてる、木の枝でも石でも
攻撃をする目的で手に持っていたのならば
{武器}になりますよね? うおっ」
うん・・・なるほどですね。
私も【リューグー人】とは初めて会いましたけど
お師様がおっしゃる様に、サバミソ君は確かに察しが良い。
少し、私の例え話を聞いただけで、あっさりと理解して
さらに、応用まで考えてしまえるのですね?
はあ・・・姉様とシゲもこのぐらい察しが良ければ
私ももう少し楽でしたのですけど・・・。
「・・・あっ・・・確かに。
その例えなら、拙者でも分かるでござる、兄上」
「で、でも、でもでも、ユキちゃん!
元々、盾は相手を殴る為に作られたわけじゃないでしょ?
鎧とかと同じで攻撃から身を守る物なんだったら
拙者は、やっぱり{防具}だと思うでござるよ!!」
「いえ? 違いますよ、姉様。
盾は、当たったダメージを軽減する目的の道具では無く
そもそも、攻撃を受けない為に手に持って扱う道具です」
「・・・えっ?」
「例えば・・・そうですね。
姉様、敵が刀で切りかかってきたらどうされます?
姉様は刀で攻撃を受けるか、流すか打ち払いますよね?」
「まあ、そうでござるね」
「それとどう違うのですか?
道具の形が違うだけで、やっている事は同じですよね?」
「・・・た、確かにそうでござるが(むーーーー)」
「「「あー」」」
全く・・・姉様も頭では分かってしまったとしても
感情が先に立って、理解したくないのでしょうね。
・・・もう、面倒臭い姉様ですね。
『わはは。
頑固者のねーちゃん以外は
みんな何となく納得できた感じやな。
うん、ユキは例え話も上手いし、説明も簡潔で丁寧やん。
たいしたもんやな! (ぽんぽんっ)
よっしゃよっしゃ!
おっちゃんが誉めたるわ~(なでなでなで)』
「「!!!!!!」」
「・・・誉めてもらえるの、いいなぁ」
「確かに、拙者も兄上の説明で理解できたでござる。
さすがは、拙者の敬愛して止まない兄上でござるよ!!」
(ぷるぷるぷる)・・・ふふふふふふふふふふふ。
お師様は、その素晴らしい技術や講釈の数々を
ご自分で書などに残される事はありませんが。
教えを受けた方が残している事はあるのですよ!!
あふっ・・・【フソウ】内に残っている関連書は
大半に目を通して記憶し理解しましたし。(びくん)
大陸外の物は、母様や父様の伝手を借り・・・んっ!
【五十六商会】に依頼して取り寄せたりもしました。
うぬぼれでは無く、お側に仕えているミケ様の次に
お師様の思考も嗜好も理解している・・・はぁはぁ。
自負はあります!!・・・んっ(びくくっ)
「・・・うわぁ・・・このご主人様マニア、やべぇです」
『んじゃ、まー、ついでにちょっと補足しとこーか。
(スチャッ)ほれ、この【メイス】見てくれるか?
ここ、ここの部分や!(つんつん)
これな? ガードの、鍔の部分からぐるっと覆ってて
柄を握った時、手を守る様な形になっとるやろ?』
「はい、拳をすっぽり覆える形のガードですよね」
『これって【ヒルト】って言う、一体型のガードなんや。
まー、握る手を護る為の物では有るんやけど
ここの出っ張り(つんつん)で引っ掛けて受け止めたり
受け流したりする事が出来る様になっとる訳やな。
そんで、それだけやなくて、その他にもなー?
この部分で、直接殴ったりもできる様に作られとる。
・・・で、何か気ぃ付かへん?』
「受け止めたり、受け流したり、殴ったり・・・」
「えっと、盾と使い方が似てますね、うおっ」
『おっ! サバミソ、正解や!
キミもホンマ察しがええよな~。
よっしゃ! サバミソも誉めたろー!
よーしよしよしよしよしよし~!(なでなでなで)』
「「ぐぬぬぬぬぬ」」
「(ぼそっ)・・・いいなぁ、わたしも誉められたい」
『それとな、おまけの補足やねんけど
盾ってのは{メイン武器とセット}なんやわ。
{鎧とセット}じゃ無くてな』
「えっ? そうなんですか? うおっ」
「メイン武器と・・・ああ、確かにそうですね。
用途考えたらその方が納得です。
・・・・・・あれ? そう言えば・・・」
『ん? モブ子ちゃんどーかしたんか?』
「アルファさん。
私、前に王都に居た時なんですが。
向こうの{防具屋}では{鎧とセット}で
展示販売してたのを見たんですけど。
あれって、何故なんでしょうか?」
『あーーー、それなー。
まあ、他のでかい町でもそうなんやけどな。
{武器屋}と{防具屋}で店が分かれてる場合。
確かに{防具屋}でも置いてる店はあるんや』
「!?(がばっ)
ほ、ほら! やっぱり防具なんじゃ!?」
『ちなみに、そうゆー店ってな。
店主の人も、商売で取り扱ってるだけで
大半は戦いに関して素人さんなんやわー。
作ってる所から仕入れてきて、販売してる訳やな。
確かに、装飾とか色とかをお揃いにして誂えた
鎧と盾って、セットで展示すると見栄えはええねん。
でも実際は、見栄え重視の儀礼用なんやねんな、アレって』
「ぎ、儀礼用?」
「王都とかだと騎士や貴族の人も利用するでしょうし。
そういう公式の場に出る、金持ちの人向けですねー。
商売で売ってるだけの商人には
実戦向きかどうかなんて、知った事ではありませんし」
「な、なるほど。
確かに・・・今考えると
装飾ばっかり豪華で、実戦向きじゃ無かったと思います
ま、まあ、私達は駆け出しの貧乏パーティでしたので
いいなー格好いいなー、って眺めるだけでしたけど。
あははは・・・(てれてれ)」
「うぐっ・・・な、何で。
何故、{鎧と盾のセット}が
実戦向きじゃないと言えるんでござるか!?」
「えっ!? あの。
鎧と盾がお揃いでも、何のメリットも無いですよね?
でも、左右の手に形や重量のバランスが悪いのを装備したら
戦い難くて仕方ないですよね?
それにもし、最初からセットで作られた物じゃ無くても。
{武器屋}で、剣や盾が一緒に販売されてるのなら
その場で手に持って、しっくりくるの選べますよね?」
「確かに、戦い方で形や重量バランスって変わりますし
【サムライ】にとっての、刀と鞘の関係に似てますね。
・・・それと・・・姉様?
もう、いい加減にして下さいね?
今でも十分失礼ですけど
それ以上は、本当に無礼に当たりますよ?」
「ぬぐっ・・・だって・・・」
『わはは。
まーまー、ええやないか、ユキ。
その手の議論で熱くなる事も有るもんやってー。
・・・そうそう、そんでな?
何か、左手を使う話から盾の話に移ってもーたけど。
ぼちぼち、左手の話に戻るでー?』
「・・・・・・(もじもじ、ちらっちらっ)」
はうっ・・・さ、さすが、お師様。(ぷるぷるぷる)
あれだけ無礼を働いた姉様を笑ってお許しになるだなんて!
さすがです!
・・・ふふふ、モブコさん。
実はお師様に誉めて頂くのを、少し期待してたのですね?
私にはお見通しですよ・・・私もそうですし。
ですが、実に残念です。
そのぐらいでは、お師様にはお褒め頂け無かった様で・・・。
それに、もう話題も変わりそうですしね?
やはり、あのお師様の絶技を味わえるのは限られた・・・。
『あ、それはそうとして。
その前に、ええ話題を振ってくれたモブ子ちゃんを
存分に誉めたらなあかんな!!
モブ子ちゃん~! 次からもどんどん話題振ってな?
ついでに、きっかけ作ってくれてありがとうな~
ホンマ、ええ子やな!(ぽんぽんっ)
よっしゃ、よっしゃ、よっしゃ!(なでなでなで)
おおっ!?(もふんもふん)
モブ子ちゃんの髪の毛はポワポワのモフモフで
撫で心地ええな!!』
「はふぅ!? あわわわ(てれてれてれ)」
「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」」




