92 冒険者Aさんと三度目の訓練
あらすじ:規定数のスキルさえ覚えれば、誰でもクラスアップは可能です。
視点:冒険者ギルド 受付嬢 リマさん
『』:アルファさん
(チュンチュン、チュンチュン)
『・・・っちゅーわけで。
明日にクエスト行く予定立てたし。
ユキとサクちゃんの下準備と
サバミソ達のおさらいも兼ねて
事前に訓練しとこーかーと思って
朝っぱらから訓練所来た訳やけど・・・』
「はい、がんばります、うおっ」
「アルさん、おでも頑張るんだな」
「アルファさん、また、よろしくお願いします」
「お師様、よろしくお願い致します」
「あ、あの、足を引っ張らないよう
が、が、がんばりまひゅ・・・あう(しょぼん)」
『わはは。
まーまー、サクちゃん、とりあえず落ち着き~。
(ぽんぽんっ)ここは前に居った里とちゃうで?
ここでは、誰も急かさんし、怒る奴もおれへん。
(なでなで)自分のペースでやったらええんや。
それは、サバミソもロバやんも同じやでー?』
「はわわわ!?(かああああ!)
あっ、あいいっ!!(ぐるぐるぐるぐる)」
昨日、手続きの最中だったので
詳細までは聞けなかったけれど
確か、アルファさんが見かねて保護して
そのまま養子にしたのよね?
・・・犯罪じゃないわよね?
【フソウ】の人って、私には見分けつきにくいけど
年齢は10才~12才ぐらい・・・なのかな?
背丈も低くて体格も小柄な、黒髪ボブカット。
目がくりっとしてて、表情がコロコロ変わる子ね。
ふふっ、真っ赤になって照れちゃって・・・。
・・・・・・・・・はっ!?
いけないいけない、つい見入っちゃったわ。
うん、確かにこれは可愛い、というか癒される。
アルファさんが、ついつい構いたくなるのも
分かる気がするわね。
「そうですよー?(すすすすっ)
ご主人様は、今よりも足しになるように~って
教えてるだけですので
別に、できなければダメって訳じゃないです。
あっ、ご主人様っ!(ぺしぺし)
撫でるならミケもお願いします。(ぐいぐいぐい)
・・・・・・えーっとなんでしたっけ?
ああ、そうそう。
知らないよりは知ってた方が良いって事ですね」
「あ、はい! うおっ」
「お、おでもわかったんだな」
『(なでなでなでなで)そーゆー事やなー。
特に、モブ子ちゃんは前衛クラスやし
基礎ぐらいは覚えといて損はないと思うで?』
「はい! 実際にすごい助かってます!
私、ちゃんと教えてもらったことが無かったので
感謝してもしきれないぐらいですね!」
うんうん。
モッブコットンさん、ペアを組んでた同郷の子が
大怪我が原因で引退してしまったし。
私と境遇が似てるから、色々と斡旋はしてみたんだけど
{能力は可も無く不可も無く、平凡?}っていう理由で
他のパーティには固定で入れてもらえなかったのよね。
今は、アルファさん達の所だけじゃなく
マイクさん達の所にも準固定で入れてるようだし。
本当、推薦してみて良かったわ・・・。
『あ、でも、ユキは例外やで~。
覚えたいジャンルとは違うんやろけど
弟子として、少なくとも最低限
{俺程度}が教えられる技術は覚えてもらわんとなー。
ちなみに{覚えといた方がええで~}やなくて
{絶対に身につけてもらう}やからな?』
「もちろんです、お師様!
それに、{程度}だなんてご謙遜を・・・。
お師様が【フソウ】に【行者】として残された
数々の伝説に加え、将軍家指南役の逸話。
(がばっ)さらには! 【冒険者】としての
数えきれない程のご活躍を!(ずいずいずい)
私、しっかりと聞き及んでおります!(ふんすっ)」
『(びくっ!)お、おう!? そ、そうか?
それやったら、まあええんやけど』
「・・・そういえば、この子って
ご主人様マニアだったんでしたわね。
しかも、この様子だと
頭に{ど}が付きそうな程ですねー」
そして、この子が・・・。
アルファさんの弟子になったと言う子なのね。
19才の男性のはずなのだけれど
どう見ても、14才ぐらいの美少女よね。
それにしても・・・小柄な体格と言う事もあるけど
なで肩で細長い首に、シュッとした背筋。
そして、洗練されてると言ったらいいのかしら?
体全体だけでなく、手先までの一つ一つに、歩き方。
淀みの無い、流れる様な動きのせいもあって
正直、普通の女性よりも、女性らしく見えるわよね。
・・・ギルドの職員として恥ずかしくない様にって
即席で、礼儀作法を少し学んだだけの私とは別物。
幼少からずっと厳しく教育され続けないと
絶対にこうはならないわよね・・・。
冒険者上がりの、地味で無愛想な田舎者とは
まるで違う存在って感じだわ。
・・・何でそんな子がアルファさんの弟子に?
しかも、自分から志願して【フソウ】から来たって
・・・よっぽどの物好きさん?
もしくは、そう言う趣味の子なのかしら。
「ほほう、これはこれは・・・(たらーー)
おっと! 危ない危ない、また垂れてしもうた」
「これは・・・!! 素晴らしい!!(じゅるり)
さっそく、こんな美味しい場面にありつけるなんて
・・・この町に来た甲斐がありましたね!!」
「ぐぎぎぎぎぎぎぎ(ぎりぎりぎり)」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ(ぎりぎりぎり)」
『・・・・・・で?
キミらは何で居るん?
ってゆーか、多いな!!
全部で何人おんねん!?』
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
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▽ ▽ ▽
▽
『まあ、マイクくんらが
{調査クエスト}で遠征しとるから
不参加なんは知っとるし。
リッちゃんとギルマスのブラボーのじーさんが
見学するのも聞いとるな。
それと、マリちゃんがギルドのサブマスとして
この町に呼ばれたってのは聞いとるし
この場に一緒に居るんは、まだ分かる』
丁度、4日前、マイクさん達には
王都から回ってきた依頼をお願いしていて
調査に出てもらっていたから
今回の訓練の事は知らないんですよね。
戻ってきたら文句言われそうですけど
私もこの訓練の事は、昨日まで知りませんでしたし
まあ、仕方ありませんよね。
それにしても、マリさんには驚きました。
まさか、あのギルド長が、ギルドの今後の為と
現状の業務改善の為に行動してただなんて・・・。
しかも、【フソウ】の【行者組合】から
相談役として出向して来てもらってるだけでなく
一時的に、サブギルドマスターとして
業務に携わってもらえるとか・・・。
ギルド長に関しては、強制的に・・・いえいえ
{懇切丁寧にお願い}してこの場へ来てもらいました。
半泣きになってましたけど、気のせいですね、気のせい。
「そこで、取材という名目で鼻血と涎垂らして
ガン見してるお二方は、いつもの事ですし?
止める理由も手段も無いので仕方ありませんね。
別に訓練の邪魔になる訳でもありませんし?」
『せやなー。
さすがに、フジョ様との付き合いも長いし
あの視線にもいいかげん慣れたしな。
まあ、いつも通りの放置でええとして・・・。
キヘエと、そこの長女&次男コンビはなんで居るんや?』
「まあまあ、アル殿。
そんな冷たい事は言わないで欲しいでござるよ。
拙者とお主の仲ではござらんか。
拙者はマリのおまけとでも思ってくだされ。
・・・まあ、ぶっちゃけ。
そこの2人が暴走しないように・・・というのが
一番の理由なのでござるが」
「(ぶつぶつ)フシュルル、ユキチャンガユキチャンガ」
「(ぶつぶつ)アニウエアニウエアニウエアニウエ」
「・・・・・・うわぁ」
「あらあら、クニちゃんもシゲちゃんも困った子ね~~」
『・・・とりあえず、次暴走したり、邪魔したりしたら
ホンマに燃やすからな?』




