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辺境の冒険者Aさん  作者: ミの人
84/401

84 冒険者Aさんと昔のやんちゃ話 ①

あらすじ:キヘエさんは{表裏比興の者}と呼ばれたり呼ばれてなかったり


視点:将軍家 旗本筆頭 ムトウ家当主 キヘエ・ムトウさん

『』:アルファさん


「にーさん、にーさん!

 アルファのにーさんが世界中周って

 色んなやんちゃしとるのは結構聞きますけど

 ワイとかはアレですよアレ。

 伝説になった{武道指南役の神前試合}!!」


「で、伝説の・・・?」


『・・・・・・・・・?』


「ほら、アレですやん!

 将軍家の指南役決めた時のアレ!!」


『・・・・・・・・・?

 え・・・そ、そんなんあったっけ?』


「・・・あーーーーー、ご主人様。

 あの事じゃないですか?

 ミケは聞いただけなので実際に見てませんけど。

 20年ぐらい前に無理矢理推薦で出されたっていう試合。

 確か・・・{何か、ムカつく相手だったから

 ちょっとガチで殺っちゃった、てへぺろっ☆}って

 おっしゃってた試合」


「いや、ちょっとって・・・」


「おじさま、かわいい!」


「・・・主君、ひょっとして

 父上がおっしゃってた神前試合の事でしょうか?

 ガチ過ぎて、居並ぶ全員がドン引きしたっていう」


「うん、それ」


『・・・・・・・んっ!?

 むむむ!? あーーーーーーーーっ!!!!

 あった! あったな!!

 ・・・よーー、そんなん覚えとったなジンくん。

 本人ですらすっかり忘れとったってのに~』


「・・・まあ、幼少のワイが見て

 数日、夜中にうなされるぐらい

 軽くトラウマになった事件やったもんで」


『わはは、そりゃすまんかったな~。

 いやいや~~、確か当時って・・・

 【五十六商会】関連でごたついとった時期でなー。

 義弟2人への引継ぎやら何やらで

 そんなに心にも余裕無かった頃なんやわ。

 おまけに、まだ行者も成り立てでな。

 さあ、これから~って時に水差されたんや。

 うんうん、しゃあないしゃあない!

 それを思えば、俺も随分丸くなったもんやなー』


「うふふ、そういえば、あなた。

 覚えてらっしゃいますよね?

 私達、あの神前試合で

 初めてアルファさんと知り合ったんですわよね~?」


「当然、覚えてる。

 友であり恩人でもある、アル殿との出会いだからな。

 忘れるわけがなかろう?」



 そうなのだ。

 

 味方からすらも裏切り者・卑怯者と謗られる私にとって


 アル殿は数少ない信じられる大切な友だ。


 だが、それ以上に、{ムトウ家}にとって恩人でもある。


 私が生まれたのは{ムトウ家}の主流に当たる家だったが


 私には優秀な兄が2人居り


 どちらかが家を継ぐ事が決まっていた。


 その為、私は物覚えがつく頃に


 当時の主君家への人質として出されている。


 ま、当時は地域を治める豪族の【大名】が


 まだまだ好き勝手やってた時代であったし


 {お家}を守る手段だったから仕方ない。


 寂しくはあったが、特に恨みは無かったしな。


 主君家の配下の人達も、意外と気の良い人ばかりで


 何だかんだで私に教えてくれるものだから


 すごい勉強になった。


 実際、私の知識や知略の大半はあそこで培った様なものだ。


 おまけに、今の妻であるマリはその主君家の三女。


 感謝しかないな、うん。


 最初は、私にはそっけない態度だったのだが


 メキメキと才能を開花していく私に、何か感じたらしく


 2年の間にすっかり惚れられていた、既に若干ヤンデレ気味。


 そして、さらに1年後、私は母方の実家である{ムトウ家}に


 養子に出されており、人質生活からは解放されている。


 ちなみにマリも{婚約者}として一緒に{ムトウ家}入り。


 後で聞いた話だが、この{ムトウ家}への養子の話自体も


 マリが裏で暗躍したものらしい。


 おまけに、その間にマリには何回か政略結婚の話があったが


 父親には鉄拳で、母親には説得で。


 重臣達には、説得で足りなければ暴力や権威も使って


 政略結婚の話は{無かった}事にしたらしい。


 我が妻の事ながらちょっと怖い。



「あらあら、うふふ・・・。

 あなた、何だか冷や汗をかかれてますが

 どうかされましたか~~?

 話の流れから、昔の事でも思い出されましたか~?」


「(ひえっ!?)い、いや、大丈夫だ。

 少し、昔の苦しかった時代を思い出してただけだぞ、うむ」


「それはそれは。

 うふふふふ・・・・」



 で、そんな感じの何だかんだで、マリはそのまま正妻となり。


 ・・・あ! 正妻と言っても側妻なんて居ないぞ。


 いや、本当! マリは妾ぐらいどうぞと言ってくれたが


 そんな恐ろしい事・・・目が笑ってなかったし!?


 ・・・でも今だったら、マリも妾ぐらい許してくれるかも?


 私もちょっと若い娘に手を出しても良いんじゃ無いだろうか。



「(ぼそっ)うふふふ、ゲンゴロウ?

 あなた様、今、不遜な事を考えませんでしたか?

 もちろん、そんな事ありませんわよね?」


「(びくっ)!? も、もちろんだとも!

 わたしはいいつまをもててしあわせものだなと

 か、かんがいにふけっておっただけだ!!

 い、いつもありがとう、まり!」


「あらあら、うふふふふ。

 これはこれは、嬉しいお言葉を頂きましたわ~。

 あの子達ももう親元から離れる年ですし

 私も昔の思い出や情熱がふと蘇ってきましたわ・・・。

 ね? あ・な・た?」



 (がくがくがくぶるぶるぶる)


 マリは長女のオクニを生んでから2年ぐらいした後


 突然{ムトウ家}の武功の為にと言い出し


 【行者組合】へ行者の登録をしたかと思ったら


 あっという間に【最上級行者】にまで上り詰めてしまった。


 止める者が居なかったのかと? 止めて止まる訳が無い。

 

 色々と天賦の才能が有ったとしか言えんだろな。


 おまけに、その間に将軍家にコネまで作ってきて


 私も何だかんだで【旗本】入りしたのだが・・・。


 当時はやっかみや妬みで、中傷が酷かったものだよな。


 まあ、私の能力云々はともかく、結局は妻の影響力。


 実際、一番情けなく思っていたのは私本人だったという。


 ・・・さすがに、口や態度に出したりはしなかったが。



「うんうん、へ~へ~?(にやにや)

 キヘエさんも純情な時代があったんですねえ?」


「さらっと心を読むんじゃない、妖怪狸」


「(ずいっ)あらあらあらあら、ミケちゃ~ん?

 夫の心を読んでいいのは私だけですよ?

 もちろん、わかりますわよね~?

 うふふふふ・・・・」


「「ひえっ!?」」



 あの神前試合の当日。

 

 私は将軍家直属の【旗本】の1人として


 あの場に居合わせていた。


 そして、試合が終了。


 1戦終わったから義理は果たしたと

 

 アル殿はさっさと帰り支度を進めるも


 彼に話しかけようとする者は皆無だった。


 そう、私以外には・・・・・・だ!!


 私は、あの時感動に打ち震えたよ。


 ああ・・・人や神が絶句するような所業を


 堂々と行い、さらに全く悪びれる事も無く。


 そして{許される}ものなんだ・・・と。


 つまり、世の中は{そういうもの}なんだ、と。


 それを理解した時から、私は躊躇しなくなったな。


 今までに培った知識や知略の出し惜しみもなくなった。


 悪手、謀略、あらゆる手段を使い、時には味方すら欺いた。


 外道と罵られようが、卑怯者と後ろ指を指されようが


 知った事ではない、おかまい無しだ。


 さすがに、やり過ぎの時はマリが止めてくれた。


 アル殿と知り合って、さらに幸運だったのは


 【五十六商会】と接点ができた事だ。


 そのおかげで{ムトウ家}は急速に成長拡大。


 既に主流家とは力関係が逆転し、主君家すら越え


 将軍家からは功績として隣の地域を領地として頂き


 今や{ムトウ家}は有力な【大名】の1つとなっている。


 そして、{私}はいつのまにか{今の私}になっていたな。


 マリは惚れ直したと言って喜んでくれている。


 子供達は・・・まあ、極端に分かれたな。


 というか、ユキだけは理解してくれている。


 親の贔屓目で見ても、あの子は本当に聡明だ。


 小柄な体格で顔も声も可愛らしい。


 一見、礼儀正しく性格もお淑やかだが頑固者。


 ・・・つまり、現在の家族の誰とも似ていない。


 だが、マリに言われて私も気付いたが


 昔のマリの姿に、昔の私の性格を合わせて


 そのまま成長させた姿が今のユキなのだ。


 なるほど、そう思って見ると、そうとしか見えない。


 うん、当時、心に余裕が無かったとは言え


 一瞬でもマリを疑わなくて良かった。


 いや、本当に良かった。



「ところで、おじさま?

 ウチ、その当時はまだ生まれてなかったし。

 皆、詳しくは教えてくれへんかったんやけど。

 その、全員がドン引きした試合って

 どんなんやったんですかー?」


「えっ!? ユミネさん、あなた聞きたいんですか?」


「いやあ、お嬢~。

 幼少のワイが、ちょっとトラウマになったぐらいやで?

 かなり過激な内容やし、辞めといた方がええんちゃうか?」


「(きらきらきら)ええんです~~!

 おじさまの事はちゃんと知っておきたいんです~~!!」


『まあまあ、本人がええゆーてるし、ええんちゃうか。

 ・・・えっとやな。

 まず、開始と同時に【発光の鏡】でペカー!・・・やろ?』


「えっと・・・?

 確か、表側に強い光を拡散して照射する手鏡、でしたっけ?」


『せやでー。

 光源になるし、割と安価で売ってるから

 人気のマジックアイテムやな。

 で、次に【トリモチ網】をピャーって投げて絡めるやろ?』


「ふむふむ、先程のお2人に使っとったアイテムやね?

 さすが、おじさま! 手際ええわー!!」


「・・・いや、お嬢・・・気付いて。

 すごいんはすごいんやけど

 もう、その段階で武道関係あらへんよね。」


『・・・で、網に絡めとられて倒れてもがいとる間にやな。

 鉄底入った靴でゴキャッとな?

 逃げられへん様に、膝とか足首の関節を踏み抜いとくんや』


「痛い痛い痛い!!!?

 聞いてる方が痛いでござるよ!! 父上っ!

 あの人、どういう人なんでござるかっ!?」


「・・・どういう人も何も、そういう人だぞ?」


『んで、後は間髪を入れんと。

 地べたでもがいとる相手に【小オイル】をポイッや!

 それで終了やったな~』


「それはもう・・・あっちゅー間に燃え尽きたで?

 試合開始から終了まで30秒もかかっとらん。

 でもなー、にーさんの一連の動きが淀み無さ過ぎてな?

 体感的にはもっと短かった気すらしたわ」


「「「・・・・・・・・・」」」


「・・・・・・(ふるふる)」


「あの・・・そこの娘さん、大丈夫なのかな?

 小刻みに震えてるみたいだけど」


「あ!? アカン、お嬢にはやっぱり刺激が・・・」


「(ぱあああああ)さすが、おじさまやーー!!!

 そんなん、凄すぎるやんかーー!!(きらきらきら)」



 ・・・ああ、この娘さん。


 この娘さんも、独特な価値観持ってるんだな。


 ・・・・・・残念美人の類か。


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↓ こっちも開始しました・・・開始しちゃいました。
猟団の団長Bさん
こっちはチートや変態成分高めの傭兵稼業です。



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