83 冒険者Aさんと嘆願者
あらすじ:面倒臭いので、もう燃やす?
視点:フソウでは実力上位の行者 サムライLv9 ジン・クロガネさん
『』:アルファさん
えっと・・・つまり、どうゆうことや?
【フソウ】から知人のお客はんが来るから
ご隠居様が町を案内しはるって、聞いとったんや。
んで、いつものご隠居様とお嬢に加えて
お客はんの妻子の護衛と案内っちゅーことで
ワイも朝からご一緒して、町周っとったんやけど。
目的地に着いたらこれや。
なんや知らんけど、ええ着物着はったおっさんと
地味そうなあんちゃんが、地べた座ったまんま
アルファのにーさんの足にすがりついとる。
なんなん? この状況。
そうゆー修羅場なん?
・・・・・・え!?
あのお人、お客はんの旦那はん?
横のは・・・ああ{忍}の人でっか。
「・・・あー、うむ。
アルファ君、状況がわからないので
一旦この場は私が仕切らせてもらおうと思うが
問題ないかな?」
『おー、ゲンさんにユミネちゃんにジンくんやん。
それに・・・マリちゃん久しぶりやね~。
相変わらず元気そうで何よりやわ。
んで、お隣の子は初めましてやなー。
あ、ゲンさん。
俺らもよーわかっとらんので、頼みますわ~。
情報整理といきましょや』
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「この・・・馬鹿者共がっ!!
本当に、今回、たまたま命が助かったのが
どれだけの幸運か分かっておるのかっ!!!」
「「・・!!?(ゲザーーーー)」」
「あらあら~、困った子達ね~。
本当にごめんなさいね。
アルファさんにミケちゃん~」
「・・・・・・」
えーーーっと?
情報整理というか家族会議の結果、わかったんが。
キヘエはんとマリ先輩の娘はんのユキちゃんが
アルファのにーさんに弟子入りしたいって事を
そこの姉弟2人が知って暴走。
両親と肝心のユキちゃんが不在の間に
にーさんを襲撃・・・とかアホでっか?
キヘエはんの言う通りやな。
よう殺されんかったもんやわ。
あ、ひょっとして、にーさんこの事知っとったとか?
え? 弟子入りの事は知らんかった?
当然、襲撃してくるとか分かるわけない?
そりゃ、ごもっともですわ。
「・・・・・・はあ・・・。
さすがにこの状況では、弟子にして頂けるかを
お願いする事すら、諦めるしかなさそう・・・」
「「!!?」」
「当然ですよね?
2人が大変ご迷惑をかけた上
命まで助けて頂いたんです。
この上、弟子にして欲しいなどと
そんな、恥知らずな真似はできませんよ。
・・・すごく、残念で残念で仕方ないですけど
諦めたくありませんけど、諦めるしかありません」
「「!!!!!!」」
「い、いや、ほらユキ!
父さんからも何とかお願いしてみるし、な!?
母さんだって、多分口添えしてくれるし! な!?
諦める事は無いから! な!?」
「そ、そうでござるよ!
拙者とシゲちゃんが勝手にやった事でござるよ!!
ユキちゃんの事はきっと認めてくれるでござるから!?」
「いえ!
私が原因で、2人が行動に及んだ事は事実なんです。
・・・それに、その{勝手}に及ぶ前に
父様や母様どころか、当事者の私にすら
一言も相談されなかったと言う事は
やはり私の不徳が招いた事。
これ以上のご迷惑をおかけする事はできません」
「!? む、むぐっ!!」
「そ、その!
罰せられるのは拙者と姉上だけでしょうし。
親父と母上はお知り合いなんでしょ?
口添えしてもらえれば、きっと!!!」
「父様や母様から聞いた所によると
普段から弟子を取られる方では無いのです。
狭き門なのは最初から分かっていました。
・・・何の問題も無ければ
そこから、父様や母様のご協力を頂き
弟子は無理でも、最低限、生徒としてでも
側で学ばせて頂けるように
お願いするつもりだったんです。
・・・それですら、もう無理でしょう?」
「!! う、うぐっ!?」
「あらあら、まあまあ~。
もう、みんなそんなに悲観的にならなくても~。
大丈夫よ~・・・ね?
アルファさんにミケちゃん。
許してもらえるわよね~?
このぐらいで、目くじら立てないわよね~?
燃やすのは許してあげてね。
あ、あと、うちのユキちゃんの事。
お願いしても大丈夫よね~?」
「むぐぐ・・・こっちに貸しがあるからって
さらっと頼み事まで追加してきやがりましたよ、この人」
「(がばっ! ゲザーーーーー!!)
アル殿ー! ミケ殿も~~~!!!
拙者からも切にお願いするでござる!!
どうか、うちの馬鹿2人を燃やさずに
許してもらえないだろうか!?
どうか!! どうか、この通り!!!
・・・あと、できれば
ユキの事もお願いしたいでござる~~~!!」
『わはは、さすがはマリちゃん。
天然さんのフリして、ちゃっかりしとるわ~。
・・・あと、キヘエ。
そのフリはもうエエっちゅーねん。
お前【土下座】とか、むしろ得意技やないか。
どーせ、ホンマの謝罪でやっとる訳や無いんやろ?
知っとる者からしたら、逆にしらけるし
普通に言ってくれた方が信頼できるわ~』
「・・・あ、やっぱり?(むくっ)」
「・・・・・・このおっさん」
まあ、にーさんはキヘエはんの友人らしいし。
そりゃ、当然そう思いますやろな。
なんせ、キヘエさんって
【フソウ】では【旗本筆頭】の肩書きよりも
{当代一の謀略家}の方で恐れられとるお人やし。
将軍家の事とか、そんなに詳しくないワイでも
色んな逸話聞いとるもんな・・・。
子飼いの{忍}使うて{偽報}や
{かく乱}する程度はまだ可愛いもんで
{病気に見せかけた暗殺}とかも平気でやるらしい。
使えない味方は{慢心突撃させて討死}で解決させたり
敵が複数居たら{二重・三重の埋伏}で相討狙い。
{謝罪からのだまし討ち}とか空気の様に行うとか。
色んな意味で怖すぎるやろ。
『ま、その子、弟子にするかどうかは後回しでええか?
とりあえず、本人からちゃんと話聞いてからやな。
んで、そこの2人も、今回は許したるから安心してええで』
「ほっほっほ。
良かったのう、キヘエよ。
そこの2人も、もう短慮な事はするでないぞ?」
「さすが~、ありがとうね、アルファさん~。
良かったわね~? ユキちゃん。
クニちゃんもシゲちゃんも
燃やされなくて良かったわね~」
「・・・ふう、主君の子達は許されたようですね。
いやはや、燃やされなくて何よりですな、主君」
「全くだ。
ユキの願いも何とかなりそうだし
何より、あの馬鹿者2人が燃やされなくて
ほっとした・・・いや本当に」
「・・・なあ、姉上。
拙者達って結構危険な状態だったんでござるな」
「みたいでござるね、シゲちゃん。
拙者達、燃やされる寸前だった様でござるね」
『なんやなんや~。
皆して俺が燃やすとか燃やさんとか。
そんなホイホイ燃やしたりせんって。
なあ? ミケ』
「あ、はい」
いや、せやけど。
それも、しゃーないんちゃうかと・・・。
アルファのにーさんって
結構あっちこっちでその手の話聞くけど
ワイとかはやっぱりアレが印象に残りすぎとる。
やっぱりアレやなアレ。
伝説になった{将軍家の武道指南役の神前試合}
・・・アレって、もう20年近く前やったっけ?
前の武道指南役やったお人が引退する事になったんで
推薦者によって選出された、武術家・武道家達が集められ
何柱かの神様達の前で試合を行って
新しい{指南役}を決める行事が行われたんやな。
当時、ワイも道場で剣は習っとったけど
まだまだ、10にも満たへんガキやったからな。
当然、試合に出るんは無理やけど
道場の師範のお供で見物させてもらえたんや。
・・・で、あの試合。
行者として活動しとった、にーさんも居ったんよね。
あの神前試合、ガキやったワイはともかく。
並み居る達人達どころか、神様達ですら全員がドン引いた。
そんな出来事があったんやな。




