71 冒険者Aさんとシオヒガリ
あらすじ:世の中には戦争が多すぎます
視点:ご主人様とお出かけ大好き 大妖狸ミケニャンさん
『』:アルファさん
「というわけで、今日は【北の海岸】へやってきましたよ!
討伐系のクエストは久し振りですね! ご主人様!」
『せやな。
最近は何だかんだあって、町中散策ばっかりやったし。
クエストも採取ぐらいしか行ってなかったしなー』
「えっと、私、クエストの内容を聞いてないんですけど。
今日は{討伐クエスト}なんですか?
・・・というか、私が一緒しても良かったんでしょうか?」
『わはは、急な参加で悪かったな~モブ子ちゃん!
丁度、この依頼が出とって、リッちゃんに聞いたら
丁度、モブ子ちゃんが空いとったんでな!
ま、ちゃんと報酬は山分けするから安心してな~?』
「え? あ、はい。
いえ、報酬は別に作業量に見合った分で結構ですので。
・・・ところで、何の{討伐クエスト}なんでしょうか?」
『あ~、それはやな~! 【シオヒ】狩りや!!』
「し・・・潮干狩り・・・ですか?」
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▽
(ザバーン、ザッパーーーン)
「こ・・・これが【シオヒ】!?」
そうなのです、これが、これこそが【シオヒ】なのです。
【北の海岸】に生息する水棲モンスター。
見た目は1m程の巨大な蛤ですよね~。
朝の満潮時に波に乗って、浜辺や浅瀬へ打ち上がって
夜の満潮時に波に乗って海へ帰る習性があるので
こうやって、浜辺に上がってくる昼間が
丁度、狙い目なんですよね~。
(ザパーーン、ザッパーン)
「お、大きな貝ですよね? 見た目は。
・・・あの? 何で口を空けてるんでしょうか?」
「ふっふっふ、アレはですね~モブ子ちゃん。
ああやって、あえて中身の具を見せる事によってですね。
それを狙ったカニや鳥を招きよせてるんですよ。
でも、実は疑似餌なんですよ、アレ」
「疑似餌?」
『せやで~、モブ子ちゃん。
あの部分の下に、一回り小さい本体が隠れとってな。
疑似餌には即効性の強力な麻痺成分があるんや。
・・・・・・おっ! あそこのやつ見てみ?
丁度、海鳥が1羽入ってったわ』
(ツンツン・・・バササササ・・・・バタッ)
「・・・・・・」
(ニョニョニョニョ、モリッモリッモリッ)
『って感じやな~。
麻痺っとる間に口を伸ばして丸呑みってわけや。
ま、そこら辺の生態は普通の貝と似とるな~』
「ほわあ・・・大きい分、丸呑みの迫力が凄いですね。
えっと【シオヒ】でしたっけ。
あのモンスターを討伐するんですか?」
「えっとですね、討伐には違いないんですけど
今回は、駆除よりも素材の納品がメインになりますね~」
「と言う事は、素材の納品で追加報酬が出るタイプですか?」
『せやで~。
隠れとる本体部分は全くいらんのやけどな。
貝殻は粉末にしたら、薬の材料にもなるし
畑の肥料や家畜の飼料としても使える優れものなんや。
んで、疑似餌の部分も色んな使い道があってな。
煮出して蒸留したものは、麻酔薬や痺れ薬の材料に。
薬草水に漬け込んだら健康食品の出来あがりってな~。
地味にこの町の交易品として人気あんねんで?』
「・・・あっ! 【シオヒ印】の商品って見たことあります!
他所の国だとすごい人気あるって、ごちゃまぜ商店街で
露店商のおじさんが言ってましたよ!
【シオヒ】って何かと思ってましたけど
コレが原材料だったんですね!?」
【ナフォード王国】は大陸の北東にある辺境の地ですしね。
人口も少なく自然も豊富ですので、珍しい生物だけではなく
珍しいモンスターの種類も意外と多いんですよね~。
Bランク以上の危険なモンスターは滅多に居ませんし。
そのおかげで、この国独自の加工製品には
良質で効能が高い物が結構ありますからね~。
他所で倍以上の値で売れるとなれば
そりゃ、行商人もわざわざ遠方から仕入れに来ますよ。
特に、この【シオヒ】由来の製品に関しては
この大陸でも、需要や人気が高いんですけど
他の大陸だと比較にならない程、人気あるんですよね。
中でも【シオヒ印】の刻印が付けられた商品は
ちゃんと【タンゴの町】で公認した製品なので
普通に10倍以上の値段で売れるんですよね~~~。
ご主人様の【五十六商会】でも常に注文が入ってて
仕入れ待ちが発生してる程、超おいしい商品なのです。
『せやで、モブ子ちゃん。
ただなー、この【シオヒ】なんやけどな。
やり方知らんと、ちょっと狩りにくいんやわ。
意外と返り討ちに会う事も多いみたいやしな。
だから、モンスターのランクもDランクに分類されとる。
この町所属の冒険者やと、受けるのも達成できるのも
あんまりおらんっぽいしな。
そりゃ、常に材料は不足気味なわけやで。』
「というわけで、この町を担ってく若手冒険者として
モブ子さんも頑張って覚えてくださいよ~」
「わ、わかりましたっ!」